就活支援ジャーナル

send "Withコロナ"で脚光浴びる新しいビジネスモデル 「サブスクリプション」

2022年5月27日 金曜日

「物の豊かさから心の豊かさへ」「所有から利用へ」と移行していると言われる消費者の価値観に合致する新しいビジネスモデルが「サブスクリプション(定額制)」サービスだ。

新型コロナウイルス感染症の影響で経営環境が著しく変化する中、変わる消費志向を背景に底堅い成長を見せる「サブスクリプション」サービスの特徴や最新の動向について概説する。

◆動画や音楽の市場で急成長人気の定額制配信サービス

「サブスクリプション」サービスとは一般的に、月額料金・年額料金などの定額を継続して支払うことで契約期間中に商品やサービスの利用が可能になる仕組みを指す。特に、動画や音楽といったデジタルコンテンツとの親和性が高いとされ、総務省が8月4日に公表した『「情報通信に関する現状報告」(令和2年版情報通信白書)』を見ると、消費者向けのコンテンツ配信サービス市場において、月額料金によって自由に視聴ができる「サブスクリプション(定額制)」サービスは、この数年で大きくシェアを伸ばしていることが分かる。なお、現時点での代表例として、動画配信では「Amazonプライム・ビデオ」「Netflix」「Hulu」「DAZN」「dTV」など、音楽配信では「Spotify」「AppleMusic」「YouTubeMusic」「AmazonMusicUnlimited」「LINEMUSIC」などを挙げることができるだろう。今後もこうしたサブスクリプションサービスの拡大が、市場の成長を牽引すると見込まれている。

◆幅広い業界で参入相次ぐ広がるビジネスの可能性

近年では、動画や音楽といったデジタルコンテンツ以外にも、自動車や洋服、家具・家電など、これまで購入・所有が一般的だった商品にまで、サブスクリプションサービスを導入する動きが広がってきている。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(本社東京・港区)が昨年11月14〜15日にかけて行った『サブスクリプション・サービスの利用状況に関するアンケート結果』を見てみよう。調査対象は、サブスクリプションサービスを利用したことがあると回答した20歳以上のインターネット利用者520人。同調査において、利用したことがあるサブスクリプションサービスの種類(複数回答)の項目を見てみると、「動画定額配信サービス」が79.2%でトップ。以下、「音楽定額配信サービス」44.8%、「電子書籍・雑誌・コミック定額配信サービス」28.3%、「ソフトウェア定額利用サービス」15.4%、「ゲーム定額配信サービス」11.2%と続いた。

さらに、回答率は低いながら、「ファッション定額利用サービス(洋服、アクセサリー、バッグ、時計等)」が3.1%、「飲食定額利用サービス(カフェ、居酒屋、テイクアウト等)」2.7%、「生活系サービス定額利用サービス(コインランドリー、美容院等)」2.5%、「家具・インテリア定額利用サービス」「子ども向け定額利用サービス(子ども服、おもちゃ、絵本等)」1.9%、「自動車定額利用サービス」1.7%、「ライブ定額利用サービス(音楽ライブに行き放題となるサービス)」および「家電定額利用サービス」「飛行機定額利用サービス」が各1.3%、「住宅定額利用サービス(定額で多拠点の住宅に住み放題となるサービス)」0.8%という結果になった。実に、多様な業界が「サブスクリプション」への参入を図っているのは明らかだ。

◆消費者・企業の視点で見る「サブスク」型事業の利点

これほどの人気を集める理由は何だろうか。消費者と企業の二つの視点から、そのメリットとデメリットを考えてみたい。

まず、消費者がサブスクリプションサービスを利用するメリットについて、先ほどの三菱UFJリサーチ&コンサルティング社の調査の、サブスクリプションサービスの利用理由(複数回答)の項目を見てみると、「多くの商品・サービスを利用できる」が57.3%でトップ。以下、「安価に利用できる」56.5%、「使いたいときにだけ利用できる」41.7%、「定額の支払いであり払い過ぎの心配がない」31.9%、「商品やサービスを気軽に試すことができる」28.8%、「購入・支払いの手間が省ける」28.3%、「手頃な価格で高額なサービス等を利用できる」26.2%、「取り替えられる、モノを捨てたり、所有が不要」12.5%と続いた。やはり、享受できるサービスに対して割安と感じられる価格設定や、いつでも利用を停止できる利便性の高さなどが、支持される理由だと言えそうだ。

同様に、企業にとっても多くのメリットがある。まず、月額制のサービスであれば、顧客が解約しない限り毎月の入金が期待できるため、商品を個別に販売する場合に比べて安定的・継続的な収益が見込める点だ。これには、景気や季節要因による変動を受けにくく、中長期的な収益の予測を立てやすいといった利点もある。また、利用データを収集・分析することでマーケティング等に役立てられる点や、信頼関係の強い顧客を獲得しやすい点も見逃せない。サービスを媒介にした企業と顧客の新しい絆と考えても良さそうだ。

◆所有から末永い利用へ消費と戦略の新しい関係

もちろんデメリットもある。消費者にとってのデメリットは、解約の手間がかかる点や、商品を買い取ることができない点、不必要な買い物となってしまっていても気づきにくい点などが挙げられる。また、海外では、一見リスクがないような無料体験に申し込んだことで、説明が十分になされていない料金が請求されるといったトラブルも報告されている。

企業にとってのデメリットは、何と言っても価格設定が難しい点だ。消費者の需要が想定を大幅に上回ったり下回ったりして採算が合わなくなるケースがあるとの指摘がある。十分な規模の利用者を集めて事業を軌道に乗せるまでには、相応の試行錯誤が求められるようだ。また、利用者をつなぎとめるため、常に一定以上の品揃えや新しい商品の提供が必要とされる点、実店舗で商品が売れにくくなる可能性がある点などには注意が求められる。

これらの点から分かるのは、サブスクリプションサービスは決して万能ではないということだ。ただし、今後成長するポテンシャルの高いビジネスモデルであることは間違いない。消費者と企業の双方が、サブスクリプションサービスの利点と欠点を理解して、上手に活用していくことが求められるだろう。

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