福祉業界特集-福祉業界の現状「待った」なしの〝2025年問題〞
2016年8月30日 火曜日
超高齢社会を迎えた日本
世界に類を見ないほど、日本では高齢化が進んでいると言われているが、実際はどうなのか。
現在、広く知られている概念としては、総人口に対して65 歳以上の高齢者人口が占める割合を「高齢化率」というが、その高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、21%を超えた社会が「超高齢社会」だとされている。
日本は1970( 昭和45)年に「高齢化社会」となり、94(平成6)年に「高齢社会」になった。そして2007(平成19)年には21. 5%となり、遂に「超高齢社会」に突入している状況だ。
「団塊世代」が75歳以上へ
厚生労働省が発表した「2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」によると、「団塊世代」と呼ばれる、1947(昭和22) 年~ 1949( 昭和24)年生まれの人口層が後期高齢者(75 歳以上)に達する2025(平成37)年度に、「介護人材」が37.7 万人(需要253 万人に対して、供給215 万人)不足すると推計されている。全人口に占める高齢者(65 歳以上)の数は約3,500 万人、比率にして約30%にまで上るとの別の報告もある。
市場が拡大する巨大産業
先の発表によれば、2013(平成25)年度の「介護職員」数は170 万7,743 人。これが、需要見込みの252万9,743 人を充足しようとすれば、82 万人を超える規模での人材確保が必要であり、その数は一年度間でおよそ6 万8,500 人以上にもおよぶ。その意味では、介護・福祉業界は今後確実に大きくなる産業であり、入職する間口は広がっていると言うことができるだろう。
業界志望者に対する支援
これまで見てきたように、介護を含めた福祉問題に起因する専門職人材の確保はもはや国家的なプロジェクトの様相を呈しており、そのため国では、さまざまな視点から質の高い有為な人材の入職を促すべく、諸施策を展開している。
例えば、①人材のすそ野の拡大を進める「参入促進」②能力や役割分担に応じたキャリアパスを構築するのみならず、既存人材のさらなる定着促進を図る「労働環境・処遇の改善」③専門性の明確化・高度化で、継続的な質の向上を促しつつ、機能分化を展開する「資質の向上」など、そのメニューは実に多彩だ。
具体的には、介護福祉士を育成する専門学校や指定養成施設で学ぶ場合、学費などを貸し付ける「介護福祉士等修学資金貸付制度」が各都道府県レベルで整備されており、こちらは所定の年数、各自治体が指定する社会福祉施設等で実務に従事した場合には償還自体が免除される仕組みができている(各都道府県によって制度内容は異なる場合あり)。もちろん、大学を卒業した後の専門学校再進学、いわゆる「キャリア進学」による人材も例外ではない。
また、施設や企業等で介護に従事する実務年数を積み上げることで国家資格等の資格取得を支援するシステムを持つところもある。まったくの未経験者であっても心配することなく飛び込むことのできる充実した研修制度やサポート体制が敷かれているのも特長だ。
そして、これから
いずれにしろ、今後も日本の高齢化率は上昇傾向が確実視されており、世界中に注目されている。そうした環境のもと、日々やりがいを感じながら取り組むことができ、かつ人に寄り添うことができるのが介護職・福祉職の大きな魅力の一つであることは間違いないだろう。高い意識を持った若き人材が待望されている。