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send 「キャリア進学」の魅力 <第33号編> 大学・短期大学卒業後に専門学校に再進学するという選択肢

2020年5月26日 火曜日

大卒者等1万4,458人が専門学校に再進学!!

平成31年3月に大学を卒業した57万2,640人のうち、「正規の職員等」(43万904人)と、「正規の職員等でない者」(1万5,895人)を合わせた「就職者」は44万6,799人に達している。

率にして78.0%という高い数字が示すように、かつ次位の「進学者」ですら10.5%に過ぎないことでも分かるように、大学を卒業した後の進路内訳は、例年ほとんどが「就職」となっているのが現状だ。

こうした傾向は、短期大学の場合はより顕著になっている。5万2,665人の新規卒業者に対して、「正規の職員等」(4万434人)と、「正規の職員等でない者」(2,664人)を合わせた「就職者」は4万3,098人。実に81.8%もの卒業者が「就職」を果たしており、就職率を比較すると、大学よりも3.8㌽も上回る高い実績を残していることが分かる。
一方、興味深いデータとして注目したいのは、大学や短期大学、高等専門学校といった「高等教育機関」を令和元年3月に卒業した人のうち、平成31年4月1日〜令和元年5月1日までの期間に「専門学校」に「再進学」を果たした者が1万4,458人(令和元年5月1日現在)もいるという事実だ。

この数字には、過年度の卒業生が含まれているため、単年度の傾向としてとらえることはできないものの、先の「10.5%」を構成する「大学院研究科」「大学の学部・専攻科・別科」「短期大学の本科・専攻科・別科」への進学者6万364人と比較しても、決して無視できるほど小さな数字ではない。

「再進学」を果たす若者の多くは、自身の「スキルアップ」や「キャリアアップ」、また「自己実現」を目標としているため、このような学びのスタイルは、特に「キャリア進学」と呼ばれ、新しい「キャリアデザイン」の取り組みとして注目を集めている。

「職業教育」を行う専門学校は、設立主体によって、国や都道府県知事の認可を受けて設置される学校だ。大学や短期大学が一般教養を含む幅広い教育を行うのに対し、専門学校が目指すのは「工業」「農業」「医療」「衛生」「教育・社会福祉」「商業実務」「服飾・家政」「文化・教養」という8つの認可分野における即戦力人材の養成。修業年限は2年制の学科が多くなっている。

 

9割超が志望業界就職の圧倒的に高い"夢実現率"

「キャリア進学」層は、平成22年度の2万4,863人を頂点に、近年は2万人前後で推移しており、専門学校入学者に占める割合は例年5〜9%前後と、専門学校新入生のうち約1割未満が大学・短期大学、高等専門学校の卒業生で占められている現状がある。

専門学校はもちろん、類似した教育を行う「専門教育機関」では、就業上必要とされる専門知識や技術を身につけるためのカリキュラムが編成されており、実技・実習の時間が豊富に設けられているのが大きな特長となっている。

専門学校や専門教育機関で学ぶ上で特に注目したいのは、就職につながりやすいとされる各種資格の取得指導の充実度だろう。国家資格・公的資格・民間資格の別を問わず、これらの学校では、将来の仕事に直結する有力資格・難関資格の取得を念頭に、行き届いた教育を展開している。

これは、各種検定試験に対しても同様で、職種によっては資格保有が必須条件だったり、技術や知識といった専門性を備えている証明となる所定の検定試験合格が求められたりする場合があるなど、要件充足者は就職活動を進める上で一つのアドバンテージと考えても良いだろう。

大学・短期大学がある程度広範な領域を理論的に学んでいくのに対し、これらの教育機関は、将来目指す職業や目標に向けて効率良くアプローチできる実践教育が充実している。そのため、「就きたい仕事」が明確である若者にとって、これらの教育機関への「キャリア進学」はキャリア形成の意味で有効な選択肢の一つとなっている。
また、"職業教育に強い""資格取得に有利""就職が万全"とされてきた専門学校は、一般的な大学・短大に比べて企業等との連携が緊密で、それゆえ企業や産業界が期待する即戦力として実践力のある人材を、伝統的に送り出してきた実積がある。

文部科学省の『平成30年度学校基本調査報告書』によると、実際に就職した専門学校新卒者の93.6%が"(学んだ内容の)関係分野"に就職を果たしていることが分かっている。このように、卒業者の多くが関係分野に就職するという雇用環境と実際の就職先とのマッチングの度合いの高さや、目指す業界や職種に直結した専門性が専門学校の大きな魅力となっている。また、大学新卒者の就職率が景気によって変動を受けやすく、直近の10年間で60〜78%と幅があるのに対し、専門学校新卒者全体の就職率は安定的に80%前後を維持していることは、押さえておきたい。

産業界が待望する有為な「キャリア人材」を育成

データはやや古くなるものの、以前文科省が実施した調査によると、企業が専門学校卒業者を採用する理由のトップは、「専門の職業教育を受けているから」(57.8%)だった。人材をじっくりと育成する余裕がかつてほどなくなったとされる産業界は、就職希望者が「何ができるのか」という実力を重視しているため、現場ですぐにでも通用する実践力を身につけた人材を欲しがる傾向がある。

産業社会から期待され、現に専門学校が高い就職率を維持している源泉はその専門性にあると言えそうだ。それでは専門学校の専門性はどのように担保されているのだろうか。第一に挙げられるのは、教員の質の高さだろう。業界の第一線で活躍する現役スタッフや経験者の指導で、技術はもちろん、専門家としての心構えが醸成される。
また、専門学校はクラス担任制を導入している場合が多く、生徒一人ひとりと密な関わりを持つことで、細部まで行き届いた就職支援の展開を実現している。さらに、専門学校自体が中心となる指導体制に対する企業からの信頼が厚く、関連する業界・企業から毎年多くの求人票が届く。実務家教員を通した推薦依頼もあり、目指す分野・職種での就職を想定した盤石の体制がとられている。

専門学校・専門教育機関のカリキュラムのもう一つの特長は、時代の要請に柔軟に対応している点だろう。例えば、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けて活況を呈している建設業界やホテル・観光業界を意識した学科・コースの新増設など、社会的ニーズの吸収に極めて意欲的だ。

そのほか、設置学科の具体例を挙げれば、「起業実践」「ベンチャービジネス研究」「キャリアサポート」「グローバル教養」「ワーキングスタディ」「ホスピタリティサービス」「ヘルス・プロモーション」「スマホアプリビジネス」「IT・クラウド」「ネットショップ構築・運営」「エコ・コミュニケーション」「ドルフィントレーナー」など、まさに社会的な動向や経済情勢をダイレクトに反映した今日的な学びがタイムリーに用意されているのも、「キャリア進学」を目指す有力な動機の一つになり得るに違いない。

一方、近年大きな期待を集めているのが、平成25年度、既存の専門学校の中に新たに導入された新制度「職業実践専門課程」だ。職業実践専門課程は、企業等と密接に連携して実社会の最新知識・技術・技能を修得できる職業教育に取り組む学科を、文部科学大臣が認定するというもの。

産業界のニーズをキメ細かく反映した、より実践的なカリキュラムが編成されているとあって、その注目度は高い。最新の認定分は平成31年3月6日、文部科学省により発表されており、認定を受けているのは、専門学校2,805校のうち、994校・2,986学科に過ぎない。その意味では、職業実践専門課程の認定学科を持つ専門学校は"専門学校の中の専門学校"というようなイメージを描くとより分かりやすいだろう

大学・短大で培った教養をベースに難関資格の取得を目指すも良し、あるいは、さらなる専門性の高いスキルを身につけるのも効果的だ。各校の詳細は学校案内書やウェブサイト等で確認できる。

 

"なりたい""やりたい"をあきらめない「キャリア進学」

「自己実現」や「キャリアデザイン」をキーワードに、大学・短大卒業後の「キャリア進学」を目指す志望校を決めたら、オープンキャンパスや体験入学等を活用し、自分の目的に合っているかどうかをぜひ見極めるようにしたい。

そして、その際の留意点が、「キャリア進学」に伴う学費だ。特に「入学金」と「年間授業料」を合わせた「初年度納入金」は、学校や分野によって大きく異なるのに加え、実習費や教材費といった諸経費が別途必要になることも少なくないため、入学案内書や募集要項などで必ず事前に、納入時期・方法を含めて確認しておく必要がある。

東京都専修学校各種学校協会の「平成30年度学生・生徒納付金調査」によると、専門学校昼間部進学の場合、平均的な初年度納入金は約125万円前後となっている。こうした学費やそのほか必要となる生活費を工面するための方法として挙げられるのが奨学金制度の利活用だろう。代表的なものの一つが日本学生支援機構の奨学金だが、最近は個別学校が独自の奨学金として、返還する必要がない給付型のものを拡充させているほか、地方自治体・民間育英団体・企業などの奨学金制度や学校独自の特待生制度が充実の度合いを高めている。可能であれば"学費ゼロ"で学びたいところだが、それ以外なら、国の教育ローンなど、多彩な制度の中から無理なく活用でき、かつ低廉なものを検討するのがベターだ。

しかし、大学・短大時代にすでに奨学金を活用していたという人も少なくないに違いない。"もうこれ以上奨学金を頼りにしたくはない"という場合に考えたいのが、「学びながら働く」学生を支援する諸制度の利用だ。例えば、企業における実習をカリキュラムの一部として組み込み、実践力を身につけると共に労働報酬も得られるように配慮された「日本版デュアルシステム」や、昼間に提携企業で勤務しつつ、夜間は学校で勉学に励む「学生社員制度」など、学び方や支援システムの選択肢によっては、実社会で専門性の高い経験を積みながら、労働の対価を学費に充当することも決して不可能ではないだろう。興味や関心がある場合には、志望校に問い合わせをして確認することが大切だ。

不本意な就職で一時的な安定を求めることの是非や価値観は、もちろん人によって違うはずだ。しかし、「憧れの職業に就きたい!」「将来の自分のためにどうしても目指したい資格がある!」というキャリアアップ志向のみなさんであれば、専門性の追求をあきらめず、意欲的にチャレンジする価値があるのが「キャリア進学」という"もう一つの進路"だと言える。そう、大学卒業後の進路の選択肢は一つではない。道は目の前に大きく拡がっている。

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