コミック誌に情熱を注ぐ 若手編集者に密着取材
2015年10月29日 木曜日
峯島 最初に当社が求める人材についてみなさんにお話したいと思います。
出版社である当社のなかにもいろいろな部署がありますが、中核となるのは編集部門です。
編集者にとって大切な資質は、ゼロから1を作り出す能力です。例えば、みなさんが取材をした編集者も担当コミック誌に掲載する作品について作家と協同しながら常に新しいストーリーを考えています。
いかに読者にワクワクしてもらえる作品が提供できるか、それは売り上げにも直結する大切な仕事です。
新人でも面白い企画が出せるかどうかが勝負です。競争の激しい今の出版業界では若いセンスが必要とされる場面も多くあります。また、当社には若手社員の考えを尊重する文化があり、活躍の場は早くから与えられています。その代わり、ある作品の企画を提案し新連載を始めたら読者の評価と販売実績に対する責任も生じます。しかしそれこそが編集者の仕事の醍醐味でもあります。
三戸部 所属部署はどのように決まるのですか。
峯島 採用の段階と入社後の研修中に志望についてヒアリングをし、その希望と社内各部署の状況を鑑みて配属を決めます。必ずしも希望通りとは限りません。
参考までに当社の研修について説明します。新入社員の場合、入社後3カ月間は全体研修となります。社内だけでなく、印刷所や書店など業務上関わりの深い会社での研修も行います。さらに本配属前には社内の8部署をそれぞれ1週間経験してもらいます。
その後、本配属となりますが新入社員の多くが編集部門に配属されます。残りの数名が販売や広告といった営業部門です。当社には多様な編集部があり、出版している雑誌・書籍により職場のカラーも異なります。
例えば、コミック誌であればトレンドを押さえつつ作家の才能を引き出す力、週刊誌の場合は人に会ってネタを集める取材能力と文章力が重要です。またファッション誌などではページをおしゃれにつくる美的センスも必要です。
当社の場合、幼児向けから高齢の方までを対象としたさまざまな出版物を制作していますので自分の個性を活かせる部署は必ず見つかります。
早川 他社にはない御社の強みはどのようなところでしょうか。
峯島 それはキャラクタービジネスに強いところです。当社にとっての神様的な存在は何と言っても“ドラえもん”です。書籍、映像、ゲーム、グッズとさまざまな商材で販売実績をあげています。最近なら“妖怪ウォッチ”ですね。
また、「小学一年生」から始まっている当社出版物の歴史的背景から子供向けのコンテンツが充実しています。子供のころから当社の本に親しんでもらい、世代を継続してさまざまな雑誌を購読してもらえる環境があることです。
若佐 人事部として今後の展望をお聞かせください。
峯島 人事は社員のフォローアップをする部署なので、社員が働きやすい環境を整えることがテーマとなります。
そして採用では当社で活躍してもらえる人材をいかに採用していくかがミッションです。今年の就活スケジュール変更で採用活動にさまざまな影響がでていますが、この流れに対応しつつベストな採用方法を考えているところです。
雑誌離れ本離れと言われる昨今ですが、出版社の仕事の醍醐味、面白さをひとりでも多くの学生さんに伝えていきたいと思います。
早川 この会社(業界)を選んだ理由を聞かせてください。
町田 学生時代から、何か形あるものをつくる仕事をしたいと考え出版と広告関係の業界を志望していました。私の父が編集プロダクションの仕事をしていて、本にふれる機会が多かったことも影響しています。入社の理由は当社の採用試験を受けた時、社員の方にとてもフランクな印象を持ったことと若い人に手を差し伸べてくれる社風に魅力を感じたからです。
若佐 いまの仕事の面白さと大変さを教えてください。
町田 面白さは自分が考えた企画や文章が作品に形として残るところです。また、才能があると自分が判断した新人作家と作品を完成させて掲載までこぎつけ、その結果読者の反応が良かった時にこの仕事の醍醐味を感じます。
漫画の「作家と編集者の2人だけで物語が作れる」点にも魅力を感じています。もちろん周辺に出版までの作業をしてくださる方の存在はあってこそですが、最小限のスタッフでものづくりに取り組める仕事です。私は入社3年目ですが、上司はいろいろな事にチャレンジさせてくれます。
大変なところは、作家と打合せをしていて、代案が全く出てこない時ですね。「そういうストーリーじゃないんだよ」と言いながら煮詰まってしまうことがよくあります。作品によっては自分の不得意なジャンルもあり日々戦いという感じです。
三戸部 職場の雰囲気はどうですか。
町田 周りの社員は少年の心を持った人ばかりで和気あいあいと仕事をしています。好きな作品は違っていても漫画の話となるとつい盛り上がってしまいます。
若佐 これから出版業界を目指す就活生と愛読者にメッセージをお願いします。
町田 就活生の方には業界、会社はあくまで自分が希望するところにチャレンジすべきだと伝えたいと思います。最近は親の意見に左右される学生も多いのですが、就職は自分が決めることです。
愛読者の方にはいつも感謝しています。少年サンデーは新編集長の方針で今後本誌生え抜きの新人作家をより全面に出していきます。どんどん面白くなりますので、これからのサンデーにぜひ期待してください。
三戸部 編集部の雰囲気を聞かせてください。
関 Sho-Comi編集部は女性が多いせいか、コミュニケーションを上手に取りながら仕事を進めています。少女漫画はカッコイイ男子をどう登場させるか、どんな恋愛ストーリーをつくるかが重要ですので「この男子あまりカッコよくないね」とか「これはときめかないよね」など、ざっくばらんに話し合っています。
早川 作品ができるまでどのくらい打合せをしますか?
関 1話をつくる流れとしては、打合せ・プロット・ネーム・下書き・原稿完成の順となります。
ほとんどの場合打合せの段階で、ストーリーとその狙いは何かといった話の内容を決めてしまいます。例えば、場面は夏のビーチ、3人の男子が登場する、主人公はそれぞれから告白される、さあどうしましょう。といった具合に大まかに決めておいてあとは作家のネームとなり、2回位の修正を経て進行させていきます。
若佐 仕事でやりがいを感じる時と大変なところを教えてください。
関 自分がつくったものが形として残るところにやりがいを感じます。作家と苦労して完成させた作品が書店に並んだとたんに売れた時はとても感動しました。大変なところは、どうしたら読者に喜んでもらえるかアイデアを常に練っていないといけないことです。作品をつくるのは作家と編集者の2人の協同作業です。楽しくもありますが苦労も相当あります。
また、原稿チェックや校正作業も含めミスなく出版するための作業はとても気を遣います。仕事で遅くなることも多いのですが、私も少年サンデーの町田さんと同じく現在入社3年目でだいぶ仕事に慣れてきたためか、早く仕事が終わりそうな時は早めに帰るなど、メリハリをつけるようにしています。
早川 出版業界を目指す学生と愛読者にメッセージをお願いします。
関 業界志望の就活生の方には「本が好き」に加えて自分がつくりたい本のイメージを具体的に持つことが大切だと伝えたいです。
愛読者の方にはいつも読んでいただいてありがとうございますと感謝の気持ちでいっぱいです。これからの作品では恋愛の話も新しいタイプのものがどんどん入ってきますので楽しみにしていてください。