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send NHK「ネット同時配信」実現になりふり構わず 新たな受信料あっさり撤回 “方針転換”に伏線

2017年10月23日 月曜日

NHKが2019年度の「常時同時配信」開始時に受信料徴収の見送りを表明した総務省の有識者会議。野田聖子総務相(手前右から2人目)も出席した=9月20日、東京・霞が関   NHKが、テレビ放送とインターネットの「常時同時配信」になりふり構わず突き進もうとしている。ネットでの視聴者向けに新しい受信料を創設する考えを示していたが、あっさり撤回し、目標としている2019年度からの実現を優先した格好だ。一方で、昨年まではしばしば俎上(そじょう)に載っていた一般の受信料の値下げ議論はすっかり鳴りを潜め、新規事業をめぐる駆け引きの中で、「国民・視聴者への還元」という視点は見えなくなっている。 “方針転換”に伏線 NHKは昨年12月、常時同時配信が実現した場合、既に受信料を払っているテレビ設置済み世帯には新たに受信料を求めない一方、ネットのみの視聴者には「負担をお願いする」意向を示していた。 NHK会長の諮問機関も今年夏、こうした方針に「妥当性がある」と“お墨付き”を与える答申をまとめた。NHKは当然、この流れに沿って新受信料の創設方針を打ち出すものとみられていたのだが…。 「視聴者・国民の理解を得ることなどに時間がかかると予想され、一定の期間は費用負担を求めないといった当面の措置を検討する必要あり」 9月20日に総務省で開かれた有識者会議「放送をめぐる諸課題に関する検討会」。その冒頭で、NHKの坂本忠宣専務理事は、出席者に配布したA4判計28ページの資料について説明。常時同時配信に伴う新たな受信料について、サービス開始時には徴収しない考えを表明した。契約が確認できないネットのみの視聴世帯には画面にメッセージを表示して制限をかけるとした。

7月に「(ネット配信は)将来的に本来業務」とする見解を示していた坂本専務理事はその上で「常時同時配信は放送の補完と位置付ける」と明言した。

NHKの“方針転換”には伏線があった。NHK肥大化を懸念する民放が反発しただけでなく、日本新聞協会も受信料新設に「合理性がある」などとした答申に対し、「NHKが目指す新たな『公共メディア』の姿が見えてこない」との批判的な見解を表明した。テレビ放送を維持する目的で徴収した受信料をネット配信の費用に充てることの妥当性も疑問視していた。 高市早苗総務相(当時)からも「常時同時配信を放送の補完的な位置付けとすること」を求められた。 今回の軌道修正には、20年東京五輪・パラリンピックの前年である19年度に常時同時配信を予定通りスタートすることを優先し、何が何でも政府の支持を取りつけようとするNHKの姿が浮かび上がる。もっとも、こうしたなりふり構わぬNHKの姿勢は見透かされており、検討会では疑問の声も上がった。 「テレビにはない、どのような価値を常時同時配信で作っていこうと考えるのか。しっかり議論した上で組み立てていく必要がある」。野村総合研究所の北俊一上席コンサルタントはこう発言。世界の潮流から離れて独自の進化をたどった日本の従来型携帯電話を「ガラパゴス」と名付けるなど鋭い指摘で知られる北氏は、NHKの拙速さをたしなめた。

スケジュールありき

テレビ朝日の藤ノ木正哉専務は「テレビを持たない層への訴求策としてきた(常時同時配信の)方針が、既存の受信世帯へのサービス向上策に変わった。五輪前に実施したいというスケジュールを最優先したものと思わざるを得ない」と批判した。 日本民間放送連盟(民放連)の井上弘会長も、検討会の翌21日の記者会見で「スケジュールありきの議論はおかしい」とくぎを刺した。 その一方、いつのまにか話題にならなくなったことがある。高市氏が「国民・視聴者に還元すべきだ」とNHKに求めていた受信料の値下げだ。   ■放送法改正へ政治駆け引き激化必至 昨年11月には、NHKの籾井勝人会長(当時)が月額50円の値下げを打ち出したものの、経営委員会の賛同を得られなかった。 NHKの受信料収入は6769億円(2016年度)。既に800億円近い内部留保をため込む中、“たった50円”の値下げにも慎重な経営委に、抜本的なNHK改革ができるのかという意見は根強い。

しかし高市氏は既に8月の内閣改造で退任。後任の野田聖子総務相はこれまでのところ、受信料値下げについての積極的な発言はない。

NHKが常時同時配信の実現に向けて多額の費用を使うことになれば、値下げがさらに遠のく恐れがある。 常時同時配信が実施できるかどうかは、総務省が「放送法」を改正するかにかかっている。昨年秋までは省内にもNHKの意向を認める空気が強く、今年1月招集の通常国会に改正案を出そうとする動きもあったほどだ。だが高市氏がゴーサインを出さなかったため、実現しなかった。 19年度からの常時同時配信の実施には来年の法改正が必要とされる。22日の衆院選を受けた新たな与野党勢力のもとで議論が始まる。NHKや民放関係者を巻き込んだ激しい駆け引きが必至とみられるが、受信料値下げの機運が再び高まるかは不透明だ。(高橋寛次)

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