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NHK「ネット同時配信」実現になりふり構わず 新たな受信料あっさり撤回 “方針転換”に伏線
2017年10月23日 月曜日

7月に「(ネット配信は)将来的に本来業務」とする見解を示していた坂本専務理事はその上で「常時同時配信は放送の補完と位置付ける」と明言した。
NHKの“方針転換”には伏線があった。NHK肥大化を懸念する民放が反発しただけでなく、日本新聞協会も受信料新設に「合理性がある」などとした答申に対し、「NHKが目指す新たな『公共メディア』の姿が見えてこない」との批判的な見解を表明した。テレビ放送を維持する目的で徴収した受信料をネット配信の費用に充てることの妥当性も疑問視していた。 高市早苗総務相(当時)からも「常時同時配信を放送の補完的な位置付けとすること」を求められた。 今回の軌道修正には、20年東京五輪・パラリンピックの前年である19年度に常時同時配信を予定通りスタートすることを優先し、何が何でも政府の支持を取りつけようとするNHKの姿が浮かび上がる。もっとも、こうしたなりふり構わぬNHKの姿勢は見透かされており、検討会では疑問の声も上がった。 「テレビにはない、どのような価値を常時同時配信で作っていこうと考えるのか。しっかり議論した上で組み立てていく必要がある」。野村総合研究所の北俊一上席コンサルタントはこう発言。世界の潮流から離れて独自の進化をたどった日本の従来型携帯電話を「ガラパゴス」と名付けるなど鋭い指摘で知られる北氏は、NHKの拙速さをたしなめた。スケジュールありき
テレビ朝日の藤ノ木正哉専務は「テレビを持たない層への訴求策としてきた(常時同時配信の)方針が、既存の受信世帯へのサービス向上策に変わった。五輪前に実施したいというスケジュールを最優先したものと思わざるを得ない」と批判した。 日本民間放送連盟(民放連)の井上弘会長も、検討会の翌21日の記者会見で「スケジュールありきの議論はおかしい」とくぎを刺した。 その一方、いつのまにか話題にならなくなったことがある。高市氏が「国民・視聴者に還元すべきだ」とNHKに求めていた受信料の値下げだ。 ■放送法改正へ政治駆け引き激化必至 昨年11月には、NHKの籾井勝人会長(当時)が月額50円の値下げを打ち出したものの、経営委員会の賛同を得られなかった。 NHKの受信料収入は6769億円(2016年度)。既に800億円近い内部留保をため込む中、“たった50円”の値下げにも慎重な経営委に、抜本的なNHK改革ができるのかという意見は根強い。しかし高市氏は既に8月の内閣改造で退任。後任の野田聖子総務相はこれまでのところ、受信料値下げについての積極的な発言はない。
NHKが常時同時配信の実現に向けて多額の費用を使うことになれば、値下げがさらに遠のく恐れがある。 常時同時配信が実施できるかどうかは、総務省が「放送法」を改正するかにかかっている。昨年秋までは省内にもNHKの意向を認める空気が強く、今年1月招集の通常国会に改正案を出そうとする動きもあったほどだ。だが高市氏がゴーサインを出さなかったため、実現しなかった。 19年度からの常時同時配信の実施には来年の法改正が必要とされる。22日の衆院選を受けた新たな与野党勢力のもとで議論が始まる。NHKや民放関係者を巻き込んだ激しい駆け引きが必至とみられるが、受信料値下げの機運が再び高まるかは不透明だ。(高橋寛次)