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send 鉄鋼、中国リスク拡大で二重苦 製品安・原料高、求められる「荒療治」

2019年9月6日 金曜日

鉄鋼各社は製品市況の悪化と鉄鉱石価格の高騰に苦しんでいる(千葉県君津市の日本製鉄君津製鉄所)

日本製鉄などの鉄鋼大手が業績不振にあえいでいる。製品である鋼材の価格が落ち込んでいるにもかかわらず、原料の鉄鉱石価格が値上がりしてコストがかさむ「ダブルパンチ」で、利ざやが確保できなくなっているためだ。その元凶とされるのが「新たな中国リスク」だ。ここ数年、外部要因に振り回されてきた業界にとって、大きな頭痛の種となりつつある。   車鋼板価格上げも 「これだけでは足りない」 ある鉄鋼大手の幹部はため息交じりにそうつぶやく。 8月下旬、鉄鋼大手各社とトヨタ自動車は、2019年度上半期(4~9月)の自動車用鋼板価格を18年度下半期(18年10月~19年3月)から引き上げることで大筋合意した。価格引き上げは16年度下半期以来、2年半ぶり。上げ幅は1トン当たり数千円規模とみられる。 鉄鋼各社にとって、収益改善につながる値上げの実現は喜ぶべき話題だ。もっとも、数千円の値上げでは追いつかないほど業績が悪化する現状では到底、手放しでは喜べない。 日本製鉄が8月1日に発表した19年4~6月期連結決算は、最終的なもうけを示す連結最終利益が前年同期比61.0%減の333億円と大幅に減少。宮本勝弘副社長は決算会見で「鋼材価格が下落し、鉄鉱石価格が上昇している。しかも新たな中国リスクが顕在化している」と不振の要因を分析した。 鉄鋼大手では、JFEホールディングスも20年3月期の本業のもうけを示す事業利益の見通しを、従来の1800億円(前期比22.4%減)から1400億円(同39.7%減)に下方修正。神戸製鋼所は4~6月期の最終損益が赤字に転落した。 業績悪化に苦しんでいるのは海外勢も同じだ。粗鋼生産量で世界首位の欧州アルセロール・ミタルは、4~6月期の最終損益が赤字に転落。5月には英国2位のブリティッシュ・スチールが破綻している。 業績不振を受けて、日本製鉄は急遽(きゅうきょ)、21年3月期まで3年間の設備投資を1割程度圧縮すると決めた。JFEHDの寺畑雅史副社長も8月9日の決算会見で国内の生産調整に踏み切る方針を明かし、「今の収益状況が続けば設備投資の圧縮も考えなければならない」と危機感を示した。 鋼材価格は低下の一途をたどっている。米国の輸入制限で行き場を失ったロシアやトルコの製品が、欧州や東南アジアへ流入。その上米中貿易摩擦で世界経済の減速感が強まり、顧客である自動車などの生産が縮小した結果、需要に陰りが出ており、価格の下げ圧力は強まる一方だ。 日本製鉄によると、代表的な鉄鋼製品で建設など幅広く使われる熱延コイルの価格は、昨年度下半期から今年度下半期にかけて、1トン当たり7000円落ち込む見通しという。 鋼材需要が減れば、鉄鉱石の需要も減り、値下がりするのが普通だ。メーカーにとっては製品価格が下がったとしても、利ざやさえ稼げれば問題ない。ところが指標となる中国向け豪州産鉄鉱石のスポット価格は、1月2日の1トン=約72ドルから7月初旬には約126ドルまで高騰。現在も高水準を維持している。 この異常な値上がりは、1月にブラジルで発生した鉄鉱石大手、ヴァーレの鉱山ダム決壊事故が原因だ。だが中国の景気刺激策で鋼材需要が増え、生産を絞っていた現地メーカーが増産に転じた影響も見逃せない。中国の1~6月の粗鋼生産量は、前年同期比9.9%増の4億9216万トンと過去最高を記録。中国は世界生産の約半分を占めるだけに、鉄鉱石価格への影響力は極めて大きい。   大手社員「またか」 鉄鋼業界は数年前、中国勢の大増産と投げ売り同然の安値輸出による鋼材価格の暴落に苦しんだ。その後、中国の過剰生産能力は「ゾンビ企業」の淘汰(とうた)で解消されたかにみえたが、国内大手の社員は「またかという感じだ」と苦々しげに語る。 鉄鉱石価格は、中国の景気刺激策が続く限り高止まりするとみられる。日本製鉄の宮本副社長は「道路や地下鉄の予算は既に来年度の分も見えており、(ダブルパンチは)続くのではないか」と警戒する。 それ以上に怖いのは、刺激策が打ち切られた場合だ。中国の鋼材需要が急激にしぼみ、自国で消費しきれなくなれば、いつ現地メーカーが安値輸出を再開せぬとも限らず、そうなれば鋼材価格はいっそう下がりかねない。 だが、顧客も苦しむ現状ではこれ以上の値上げは期待しづらいのも事実。今後も苦境が続くようなら、鉄鋼各社が生産調整や投資減額以上の「荒療治」を求められる可能性も出てきそうだ。(井田通人)

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