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send 転職市場、崩れた“年齢の壁” 50歳以上を積極採用、能力重視進む

2018年6月8日 金曜日

 

パソナで行われている中高年人材の面談の様子=東京・大手町

人手不足を背景に活況な転職市場で、中高年層の存在感が高まっている。就職・転職サービス大手のリクルートキャリアによると、2017年度の50歳以上の転職決定数は09年度の1.8倍以上、16年度比でも2割超の大きな伸びだという。若手よりも人件費がかかる、新たな環境への適応性が心配など、長いキャリアが敬遠されたかつての状況は一変。年齢にとらわれずに能力を持った人材を積極的に獲得する企業が増え、転職の“年齢の壁”が崩れ始めた。   優先・戦略的雇用に 大手ゼネコンでビル建設の施工管理責任者をしていた55歳の男性。年齢的に現場を離れなければいけないが、定年まであと5年でさらに上のポストも望めないと悩んでいた。思い切って転職サービスに相談したところ、社員100人規模の地方建設会社に執行役員として迎えられた。年収は若干下がったものの希望通り現場で活躍できる仕事で、70歳までの雇用も約束してくれたという。 この男性を仲介したリクルートキャリアで転職サイトの編集長を務める藤井薫氏は「自動運転技術への対応を急ぐ自動車業界だけでなく、物流や衣料、ネット通販業界も急速に事業モデルの変革を求められ、年齢に関係なく能力のある人材の獲得に動いている」と指摘する。 同社の転職仲介全体の決定実績は、16年度が09年度比約2.3倍、17年度も同約2.6倍と好調が続く。その中で、以前なら受け入れ先が限られていた50歳以上の決定が右肩上がりで伸びており、「50代でもこんなに転職が成立するんだ、と驚くほどの好調ぶり」(藤井氏)という。 足元の転職市場では、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)対応に加え、20年の東京五輪・パラリンピックを控え、現場管理者など建築分野の有資格者の需要も強い。17年度の50歳以上の転職決定数を業界別でみると、建設・不動産業界が27%、電機・電子・機械業界が25%を占める。 一方、事務系職種でも新規株式公開(IPO)やM&A(企業の合併・買収)の増加に伴い、スタートアップ企業の成長期の経営や財務、営業ノウハウを持つ人材需要が拡大。リクルートキャリアの平野竜太郎シニアコンサルタントは「戦略的投資にあたって年齢は関係ない。事業プロセスを理解し、アドバイスできる人材は貴重だ。大手で眠っていた人材が地場企業に転職し、活躍しているケースは多い」と分析する。  

新卒と同じ売り手

最近の転職環境については、公益財団法人「産業雇用安定センター」の藤井礼一事務局長も「ミドル、シニアの定年後も働き続けたいという意欲の一方で、受け入れ企業も増えている。新卒と同じ売り手市場の感じ」と話す。 同センターは、日本経団連の会員企業など約7000社が賛助会員で、企業が自社の早期退職者や定年後の再雇用希望者を登録。賛助会員企業からの出向者が中心のスタッフが直接面談し、実務経験やネットワークを生かして受け入れ企業を決める。 大手電機メーカーの工場閉鎖に伴い、50代の社員10人が登録した案件では、複数の社員が一緒に他業種企業に転職し、この電機メーカーの受け入れ先として定着した例もある。     ■働き方改革推進、生産性向上も期待 2017年度は8606件の仲介が成立(成立率69.5%)し、このうち50歳以上が54.1%を占めた。50歳以上の割合は10年度の33.3%から大きく上昇、14年度に40%を超え、17年度に初めて50%台に乗った。 企業にとって、シニアの雇用は「若手の人材が確保できないから」という消極的雇用ではなく、優先的、戦略的な雇用に転じつつあり、他の人材サービス大手も事業を強化している。

パソナグループが展開する「パソナ顧問ネットワーク」はその取り組みの一つ。大手企業などで管理職を務めた人材が退職後、同社に登録。同社の業務委託の形で、スタートアップ企業に「顧問」として助言するサービスだ。週1~2回、資金調達やIPOのノウハウ、リスクマネジメントなどについてアドバイスし、パソナの契約を離れ、常勤顧問になるケースもあるという。

サービスの導入企業は、昨年5月末の1000社が1年で1500社まで増加。「顧問」の登録人材も3500人から同5000人になり、「毎月70~100人が新たに登録している」(梅原あい子シニアマネージャー)と裾野が広がる。 パソナグループは、ミドル・シニアの転職支援に特化した「パソナマスターズ」も4月に設立した。 大手企業が株主や賛助会員になり、希望退職者らの転職仲介をしていた日本雇用創出機構と、定年退職者のためのマスターズ人材サービスを統合。本来の転職仲介だけでなく、40代後半から50代社員を対象にした企業の社内研修でのプログラム提供などを通じ、ミドル世代のセカンドキャリアへの意識付けを支援する。 「50歳以上は採用しない」といった年齢の壁が崩れ、競争力確保のため、能力本位で人材を獲得する流れが定着すれば、転職市場はさらに活性化する。人口減少と高齢化が進む中での働き方改革の推進や、生産性向上に貢献すると期待される。(大塚昌吾)

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