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send 資生堂、米再挑戦で巻き返し 900億円でベンチャー買収、業界上位目指す

2019年11月1日 金曜日

7月に香港で開かれた会議で講演する資生堂の魚谷雅彦社長(ブルームバーグ)

資生堂が米化粧品メーカー、ドランク・エレファントホールディングス(HD)の買収に踏み切る。買収額は8億4500万ドル(約900億円)に上り、年内に手続きを終える予定だ。ドランクHDは2012年創業ながら急成長を遂げており、米国進出の拡大を目指す資生堂にとって願ってもない買い物といえる。もっとも、米国は大型買収で苦汁をなめた“鬼門”の土地でもある。失敗すれば二の舞となるだけに、油断は禁物だ。   専門店やECに販路 ドランクHDは、ヒューストン在住の女性起業家、ティファニー・マスターソン氏が立ち上げたブランドだ。アルコールや香料など、ドランクHDが「サスピシャス6」と呼ぶ肌に悪影響のある原料を商品に含まず、天然由来の素材を使うことが多い。 米国では人体への負荷が少ない「クリーン・ビューティー」が台頭しており、人気は欧州に飛び火しつつある。そうしたトレンドを担うメーカーの一つがドランクHDで、18年の売上高は約80億円だったが、今年は約130億円に増える見通しだ。 約900億円という買収額は、相手が誕生して間もないベンチャーであることを考えると、かなり思い切った金額といえる。米エスティ・ローダーや英蘭ユニリーバが有力との下馬評を覆した事実を考え合わせても、資生堂の本気度がうかがえる。 資生堂は米国で、主力の「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」などを展開しているが、高級品が多く、販路は百貨店が中心。これに対し、ドランクは現地の有力化粧品専門店「セフォラ」と電子商取引(EC)に強く、00年以降に生まれた「ミレニアル世代」をはじめ、比較的若い層に人気だ。写真投稿SNS(交流サイト)「インスタグラム」などを使った販促にもたけている。 資生堂は、買収で自社にない製品や販売手法を取り込めると判断。魚谷雅彦社長は発表翌日のアナリスト向け電話会見で「(ドランクHDのことは)かなり前から興味を持って(買収を)検討していた」と述べた。 日本や他のアジアでは圧倒的なブランド力を誇る資生堂だが、連結売上高約1兆1000億円に対し、欧米が占める割合は2割程度にすぎない。近年の成長の大部分は、インバウンド(訪日外国人)の追い風や、堅調な国内市場からもたらされたものだ。 化粧品業界は、仏ロレアルとユニリーバ、エスティー・ローダーがトップ3を占める。資生堂は5位で、トップ3の一角に食い込むには欧米、特に米国の攻略が欠かせない。 もちろん、そのことは同社もよく理解している。それどころか、以前から攻略にかなりのエネルギーを割いてきた。10年には同社で過去最大の約1700億円を投じ、自然派化粧品メーカーの米ベアエッセンシャルを傘下に収めている。 もっとも、この買収はこれまでを見る限り失敗と言わざるを得ない。買収後のベアエッセンシャルの業績は低迷。資生堂は13年3月期と17年12月期に286億円、707億円の特別損失を計上している。ベアエッセンシャルは現在も店舗削減の真っ最中で、資生堂の米国事業は収益は改善に向かいつつあるものの、黒字定着には至っていない。逆に言えば、そうした状況下でも再び大型買収に踏み切る点に、米市場への強いこだわりが見てとれる。   米地域本社が主導 今回の買収は、米地域本社の主導で行われた。資生堂は現地の実情に合った経営を追求すべく、16年1月に地域本社制へ移行。各地域本社に権限を大幅委譲した。米地域本社にはM&A(企業の合併・買収)の専門部隊がおり、既に多くの実績を積み上げている。ベアエッセンシャル買収は現地の実情に疎い日本の本社が手掛け、買収後の市場の変化に合わせた変革が遅れたが、魚谷社長は「当時とは当社の組織がまったく異なる」と成功に自信を示す。 魚谷社長は、ベアエッセンシャル買収後の業績低迷を受けて日本コカ・コーラから招かれ、14年に就任。地域本社制導入を含む改革に大ナタを振るい、売上高1兆円、営業利益1000億円の中期目標を前倒しで達成した。そうした手腕が高く評価され、9月26日には24年までの続投が決まったばかりだが、さらに評価を不動のものにできるかは、欧米攻略をはじめとするグローバル化の成功にかかっている。(井田通人)

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