send 自動車部品共通化のリスク浮き彫り 対応後手に回るエアバッグ問題
2014年11月28日 金曜日

エアバッグ問題で日本メーカーが米国で行ったリコールの台数
タカタのエアバッグ大量リコール(回収・無償修理)問題で、米道路交通安全局(NHTSA)は26日、タカタに対し高温多湿地域に限定されている運転席エアバッグのリコールを全米に拡大するよう命じた。これにより世界で1312万台を超えた対象台数はさらに膨らむ可能性がある。米国では議会や消費者の批判が高まっているが、タカタや自動車メーカーの対応は後手に回っており、経営やブランドへのダメージは広がる一途だ。コスト削減を目的に進めてきた部品共通化のリスクも改めて浮き彫りになっている。
新たに数百万台
「内容を確認して対応を検討したい」。タカタは27日、こうコメントした。
NHTSAは今月18日、リコールを全米規模に広げるように命じていたが、タカタが難色を示していたのを受け対応を急ぐよう強制した形だ。
タカタが12月2日までにリコールに応じない場合、1台当たり7000ドル(約82万円)の罰金を科すための手続きに入るとしている。新たなリコール対象は数百万台規模とみられており、ホンダやマツダ、米フォード・モーターとクライスラー、独BMWの5社に影響するとみられる。
米国でのリコールはこれまで、原因が特定されたものを除くと、エアバッグが異常破裂する可能性がある高温多湿地域などに限定。タカタも自動車メーカーも全米規模でのリコールには消極的だった。
「破裂する原因が分からない」(タカタ)うえ、全米に拡大した場合、迅速な交換が必要な地域や車両に部品が行き渡らなくなる恐れがあるためだ。実際、タカタは工場のラインを増設。来年1月から交換部品の生産を月30万個から45万個に増やす方針だ。
だが今回、NHTSAは全米規模でのリコールを命じ、タカタや自動車メーカーが想定しなかった「異例の事態」(自動車大手)になっている。
そもそも、リコールは消費者と直接やりとりする自動車メーカーが不具合の原因特定などを行い、NHTSAなどの監督当局に届け出る。
にもかかわらず、NHTSAがタカタへの命令に踏み切ったのは、米議会や消費者の批判が無視できないものになっているからだ。
追加費用1000億円
自動車社会の米国では、この問題への関心が高く、20日の公聴会では議員から「全米でリコールしないのは間違い」と厳しい意見が噴出。出席したタカタやホンダの幹部は説明に回ったが、“火消し”できなかった。さらにNHTSAの要請を受けてホンダが行った調査で事故件数の報告漏れが明らかになり、不信に拍車がかかっている。
すでに、タカタのリコール対策費用は昨年以降で約800億円に上っている。全米に拡大すれば「追加費用は1000億円程度になる可能性がある」(野村証券の新村進太郎クレジットアナリスト)とみられ、経営への打撃は計り知れない。
今回の問題では、ホンダがタカタと連名で訴訟を起こされるなど自動車メーカーの責任も追及されている。
エアバッグのような安全装備は、製造できる部品メーカーが限られ、自動車メーカーとしてもコストを下げるため、複数の車種で共通の部品を採用するケースが多い。
だが、ひとたび欠陥が見つかれば膨大なリコールになる恐れがある。自動車メーカーも品質管理やリスク分散などの対応が必要になっている。(ワシントン 小雲規生、田村龍彦)