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send 経産省若手官僚の「本音」、ネットで賛否 『昭和モデル』前提では「変革進まぬ」

2017年7月3日 月曜日

経産省若手の報告書「不安な個人、立ちすくむ国家」

経済産業省の若手官僚が5月に発表した報告書にインターネット上で注目が集まっている。「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」と題し、高齢者に手厚い政策の見直しなどを提言している。「何をやったら『合格』『100点』かわからない」「『昭和の人生すごろく』のコンプリート率は、既に大幅に下がっている」などと、霞が関のお役人らしからぬ言葉に「率直な官僚の本音だ」と、賛同の声が上がる一方、「わかりきっていた問題を今さらいわれても」という批判も巻き起こり、120万超のダウンロードを記録した。

民間の力を活用 若手官僚の報告書では、今後の国家のあり方を考える上で把握すべき大きな潮流の変化として、特に日本が抱える社会問題について集中的に取り上げている。定年退職者の実態や母子家庭の困窮状況を分析することで、高齢者の福祉が重視され、若者への支援策が手薄な現状を報告している。個人の価値観や暮らし方が多様化する中で、官の力だけでは有効な政策は具体化しづらくなっており、民間の力を活用することが必要だと結論づけた。 報告書の取りまとめは、一昨年から始まった経産省の「次官・若手プロジェクト」の一環。省内で公募した若手30人が、事務次官と直接やりとりをしながら、制限を設けず、社会問題に向き合うというのがプロジェクトの趣旨だ。 昨年5月にも、人工知能(AI)やロボット技術の進化による第4次産業革命がもたらす影響などを分析した「21世紀からの日本への問いかけ(ディスカッションペーパー)」という文書を発表しているが、そちらは話題にはならなかった。メンバーを変えた第2弾の今回の報告書が大きく違うのは、その文章表現だ。

メンバー最年長の通商政策局通商戦略室の宮下誠一室長補佐(37)は「(菅原郁郎事務)次官から『本質を投げかけるような表現にするように』と、何度も修正が入った」と振り返る。報告書には、個人が抱えている不安や不満を「そろそろシンガポールに脱出かな」「受験、就活、婚活、保活…自分で決めろといわれても、そんなにうまくいかない」などと表現している。

また、「今の社会システムは、高度経済成長まっただ中の1960年代の日本社会を前提につくられたもの」とし、それが定着した世代の人生と、現役世代の人生とを比較。「結婚して、出産して、添い遂げる」という生き方をする人が50年代生まれは81%、80年代生まれは58%、「正社員になり定年まで勤めあげる」という生き方をする人は50年代生まれが34%、80年代生まれが27%といった試算を紹介している。 その上で「『サラリーマンと専業主婦で定年後は年金暮らし』という『昭和の人生すごろく』のコンプリート率は、既に大幅に下がっている」と指摘。「今後は、人生100年、二毛作三毛作が当たり前。にもかかわらず、『昭和の標準モデル』を前提に作られた制度と、それを当然と思いがちな価値観が絡み合い、変革が進まない。これが、多様な生き方をしようとする個人の選択を歪(ゆが)めているのではないか」と問題提起した。

異なる文書構成

役所では通常、特定の課題に対し、担当部局の権限でどのような政策を打ち出すかという順序で仕事が進んでいく。報告書は「社会にスコープを当て、議論を喚起するのが目的だった。構成も役所の文書と全く異なって力が入った」(宮下室長補佐)。 有識者からのヒアリングやメンバー同士や、菅原次官との議論など、費やした熱量がにじみ出る報告書は発表直後から、フェイスブックやツイッターなどのSNSなどを通じて瞬く間に広がった。「霞が関にも人間がいた」「こんな官僚がいたなんて」と、従来の官僚とは違う好印象を持ったというものから、「今年は『官僚たちの夏』がやってくる」と国益のために通商政策の立案に奔走する姿を描いた城山三郎氏(1927~2007年)の小説に重ね合わせる声もあった。今では、民間企業やNPO、大学などから講演依頼が殺到しており、出版の予定もあるという。 一方で「そんな前提は、周知されてるのだから、新産業の創出とか、そういった可能性に満ちた明るい展望も出してくれよ」「ヤバイならなんとかしろよ。計算得意だろ経産省なんだから」などと、リポートの問題点を指摘する意見も続出し、炎上状態にも陥った。 少子高齢化や、高齢者重視の「シルバー民主主義」による社会の歪みや制度疲労は、これまで官僚たちが解決できなかった問題であったからだ。

外部から厳しい目

「少子高齢化を克服できるかの最後のチャンス」「2度目の見逃し三振はもう許されない」と強調する報告書は、NPOや元官僚など、行政に限界を感じ、別の手法を模索している人々から「時代遅れのエリートが考えたもの」と厳しい目を向けられる結果ともなった。 そもそも、官僚たちは、こうした国家の課題を解決することを目標に、最難関の国家試験を通過したはずだ。解決のために示した「『公』の課題を全て官が担うのではなく、意欲と能力のある個人が担い手に」なるという方向性は、10年以上前から指摘されてきたことだった。少なくとも、「なぜ、これまで霞が関では解決できなかったのか」と、自分たちが抱える閉塞(へいそく)感そのものも分析していれば、炎上反応は違ったものになっていたかもしれない。 今回の若手報告書をきっかけに、地方自治体でも、若手職員が同じような議論を始めているという。経産省若手の取り組みは一つのきっかけになったことは間違いない。ただ、若者による一過性の嘆きで終わるかもしれない。世論を変え、実効性のある取り組みを具現化させるまでの推進力を持つか、若者の力も試されている。(高木克聡)

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