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send 監査法人の「強制交代制」検討 金融庁、東芝不正会計問題を教訓に

2017年8月16日 水曜日

東芝本社ビル=東京都港区(本社チャーターヘリから、桐原正道撮影)   金融庁が、監査法人について特定企業を長く担当しないよう一定期間で交代させる強制ローテーション制度(交代制)の導入について検討を続けている。背景には監査法人内で担当の公認会計士の交代を義務付けた現行のパートナーローテーション制度が東芝の不正会計を防げなかった反省や、欧州連合(EU)などが導入に踏み切ったことがある。ただ、監査法人や企業には否定的な意見も根強く実現のハードルは高い。   10年でわずか5社 「東芝の事案でパートナーローテーションは『新たな視点での会計監査』という観点からは十分に効果を発揮しなかった」 金融庁は7月20日に公表した第1次調査報告でこう結論付けた。 パートナーローテーションは、パートナー(業務執行社員)と呼ばれる監査に責任を持つ会計士が特定の企業を担当できる期間に上限を設ける制度。1998年に日本公認会計士協会が自主規制として導入。2003年と07年の公認会計士法改正を経て、大手監査法人の筆頭パートナーは5年で担当企業を交代することなどが定められた。 金融庁は今回の報告書で東芝がパソコン事業やインフラ、半導体などの事業で長年にわたり必要な損失を先送りするなどして利益を不正計上した問題について分析した。新日本監査法人は東芝を約47年担当。パートナーローテーションを実施していたが、「監査チームのメンバーが同社を担当した者が中心」となり、その結果、「東芝のガバナンスへの過信が生じ、批判的な観点から検証手続きが十分に行われないことが多く(なった)」と指摘した。

報告書は企業と監査法人の監査契約の長期化が進んでいることにも言及した。東証株価指数(TOPIX)上位100社のうち、この10年で監査法人が交代したのは5社にすぎない。

監査法人の交代制は独立性強化に向けた手段の一つで、先行するEUは昨年6月から上場企業に義務付けた。原則として同一の監査法人による監査期間は最長10年で、再び担当するには4年以上のインターバルが必要としている。 実は、日本でも06年に金融審議会(首相の諮問機関)が交代制を検討した経緯がある。だが、交代で担当企業に対する知識や経験が途切れ、監査の質が低下することなどへの懸念があり、導入は見送られた。   実現は不透明 金融庁は今回の報告書でEUは交代制を導入したが「混乱は見られていない」とした。06年当時より交代制導入の環境は整いつつあるが、結論では「あらためて検討することが重要」とし導入の是非に踏み込まなかった。金融庁の担当者は「日本で導入するかどうかはまだ中立の状態」と打ち明ける。 煮え切らない姿勢の背景には、業界などに否定的な声が強いことがある。 日本公認会計士協会の関根愛子会長は7月19日の記者会見で「(新しい担当企業は)知らないので監査できないかもしれないと思った経験がある。パートナーローテーションがうまくいかないから(交代制に)いくのは一方的だ」と述べた。担当企業の知識がないことが不正の発見の遅れにつながりかねないとの認識だ。

業界には、交代制が導入されれば、新規契約を取るために監査法人が報酬の引き下げ競争に走ったり、中小監査法人が海外展開などで劣る大手に顧客を奪われたりするのではないかとの危機感も根強い。金融庁の今年のリポートでも、企業が監査法人を変更した理由で最も多かったのは「監査報酬」だった。

ただ、東芝の不正会計などで監査の信頼性には国内外から厳しい視線が注がれている。金融庁は第2次報告に向け秋にも交代制について企業や監査法人などへの聞き取りを始める予定だ。監査の独立性と実効性を確保する施策を早期に示すことが求められている。(田村龍彦)

フジサンケイビジネスアイ

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