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send 特許収入闘争で産学連携に影 「オプジーボ」で溝、小野薬品を本庶氏提訴へ

2020年6月8日 月曜日

記者会見する本庶佑京都大特別教授=5日、京都市(代表撮影)

がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許収入をめぐる本庶佑京都大特別教授と小野薬品工業の対立が法廷闘争に発展する。若手研究者を支援する基金の原資として配分の割り増しを求める本庶氏に対し、小野薬品は大学への寄付で解決する案を譲らず、両者の溝は最後まで埋まらなかった。結果次第では企業と大学で進む産学連携の流れに影響を与える可能性がある。  
好業績も株価響かず 「企業がアカデミアの人間の無知を悪用し、一方的な契約を結ばせる事例が頻発している」。本庶氏は5日、京大で開いた記者会見で小野薬品への不満を隠さなかった。
両者が契約を結んだのは2006年。法人化して間もない当時の京大は知的財産の管理に疎く、本庶氏は不利な条件で契約を結んだと訴える。 本庶氏らの研究を基に小野薬品はオプジーボを開発した。14年に国内で発売したところ、異例のヒットとなり「産学連携の成功例」(京大)と称された。小野薬品の売上高に当たる売上収益は、19年度までの5年間で2倍以上に増えた。 この間、小野薬品は契約内容を見直す代わりに京大への最大300億円の寄付を提案したが本庶氏とは折り合えず、交渉は18年に途絶えた。本庶氏はその年にノーベル賞を受賞。「小野薬品は研究に関しては全く貢献していない」と公然と批判した。好業績に比べて小野薬品の株価は上がらず一部の株主は「対立で社会的信用を落としている」と批判した。 「辛抱してやってきたが、私の命がいつまで持つか」。交渉は昨年夏ごろに再開したが隔たりは大きく、本庶氏は提訴に踏み切ることを決めた。   企業イメージ低下も 小野薬品は日本やアジアでオプジーボを自社販売するほか、欧米などでは海外の製薬会社に販売権を与えて特許使用料を受け取っている。 本庶氏は、過去に小野薬品から使用料の40%を支払うと口頭で約束されたと主張するが、小野薬品は実際に1%しか支払う姿勢を見せていない。今回の訴訟では差額分の約226億円を小野薬品に求める。 本庶氏が勝訴するには乗り越えるべきハードルがある。知的財産権に詳しい伊原友己弁護士は「過去に小野薬品から提示された配分率で本庶氏が合意したことを証明する明確な証拠が残っているかどうかが焦点だ」と指摘。ただ、小野薬品としては対立が長引けば企業イメージの低下につながるため「お互いが譲歩できる案を模索するのが現実的だろう」とみる。
一方、同じ製薬業界では小野薬品に同情的な声が聞かれる。新薬開発の成功確率は約2万6000分の1とも言われる。ある製薬会社の社員は「研究の成否が分からない中での投資は企業側にとって負担が大きい」と話す。 訴訟の動向は両者にとどまらず幅広く波及する見通しだ。東京大の玉井克哉教授(知的財産法)は「同様の主張をする研究者との連携を控える企業が出てきてもおかしくない」と解説する。 過去には青色発光ダイオード(LED)をめぐり開発者が企業を提訴した例もあり、多くの企業が対策を講じてきた。大手メーカーの担当者は「もめ事が起きないように契約を結ぶようになっていた。なぜここまでこじれたのか」と首をかしげた。   【用語解説】オプジーボ 免疫の力を利用したがん治療薬。免疫細胞は通常、がんを異物として排除するが、免疫細胞にあるPD1というタンパク質ががん細胞側に結合すると、攻撃にブレーキがかかってしまう。オプジーボは両者の結合を阻み、攻撃を続けられるようにする。皮膚や肺などのがん治療に使われ、世界の市場規模は2024年に4兆5000億円に達するとの試算がある。本庶佑京都大特別教授らは1992年にPD1を発見。小野薬品工業と共同で関連特許を取得した。  

フジサンケイビジネスアイ

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