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send 水を数秒で浄化する“未来の光” 省スペース、長寿命の「深紫外LED」

2015年8月12日 水曜日

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【世界へ 日本テクノロジー】新素材で市場開拓(3)旭化成の深紫外LED

  3人の日本人研究者が昨年のノーベル物理学賞を同時受賞して話題となった青色発光ダイオード(LED)。白熱電球の置き換えなどで急速に普及しているが、一部の研究者やメーカーは早くも「次」を見据え、未来を手元にたぐり寄せようとしている。それが深紫外線を発射するLEDだ。製造にはさらに高度な技術を要するものの、用途の広さでは勝るとも劣らないと期待されている。   発光効率と出力両立   「まさに未来の光だ」   旭化成の久世直洋UVCプロジェクト長は、深紫外LEDの魅力をそう表現する。同社は昨年11月、世界に先駆けて量産を始めた。   深紫外線は200~280ナノ(1ナノは10億分の1)メートルの短い波長を持つ紫外線の一種で、目に見えない。太陽光に含まれているが、通常はオゾン層に遮られ、地表には到達しない。  

強力な深紫外線を生物が浴びれば、DNAが破壊されてしまうほど危険な存在だ。研究者らは、逆にそうした性質を殺菌などに役立てられると考えた。

  たとえば、水の浄化。水道の蛇口に深紫外LEDを組み込んだ殺菌装置を取り付け、光を当てれば、雑菌やウイルスの増殖を防げる。   「たまった水に光を当てれば現状でも数分で浄化できる。将来的には浄水場で大量の水を数秒で処理できるようにもなるだろう」(久世プロジェクト長)   これまでこうした用途では水銀ランプが用いられてきた。しかし、安定した光を出すのに時間がかかる上、膨大な電力を食う。水銀は人体に有害で環境汚染の原因にもなる。対して、深紫外LEDは省スペース、長寿命で電力コストも抑えられる。

深紫外LEDの潜在市場は巨大で、水の浄化だけで5億ドル(約620億円)に達するといわれる。それ以外にも、空気清浄機や掃除機への搭載、皮膚病の治療、病院内の感染防止など、想定される利用シーンは多い。DNAを検出したり、工場で樹脂を硬化させるのにも役立つとみられている。

  深紫外LEDは発光効率と出力を両立させるのが難しい。だが旭化成は、スマートフォンに搭載し、歩行者ナビゲーションに使う磁気センサーの開発を通じ、LED開発につながる半導体の知見を蓄えていた。 それに加えて、4年前に半導体の基板製造を行う米ベンチャーのクリスタル・アイ・エスを2011年に買収したことが、製品化で一番乗りを果たす決め手になった。   LEDは基板材料に性能が大きく左右される。基板材料に関する豊富なノウハウを持つ米企業と、生産技術や品質管理に長じ、製品に仕上げるのが得意な日本の企業が、互いの技術をスムーズに融合できた結果だという。   現在の製品は水質検査装置用だが、秋にもより出力が高い殺菌用の新製品投入を予定する。  

「基板材料に窒化アルミニウムを使っている。基板上に形成する薄膜も同じ材料なので、最も発光効率が高く、殺菌に適した260ナノメートルの波長を実現する上で有利だ」。久世プロジェクト長は自社製品の強みを強調する。

  中韓の台頭許さず   ただ、この分野への参入を目指すメーカーは多い。ポンプや人工心臓を製造する日機装は、青色LED開発でノーベル物理学賞を受賞した赤崎勇名城大終身教授と天野浩名古屋大教授に指導を受けつつ、約10年にわたって深紫外LEDを研究。今年5月には、検査装置用に加えて、殺菌や樹脂の硬化にも使える製品の量産に乗り出した。化学メーカーのトクヤマも、東京農工大などと試作を行い、来年の製品化を視野に入れる。   いずれ劣らぬ強力なライバルだが、旭化成の久世プロジェクト長は「有望となると多くの研究者やライバルメーカーが一気に集まるのが日本の良さ」と、こうした動きを歓迎する。  

日本メーカーが開発に大きく貢献してきたLEDも、赤色では価格競争力のある中国や韓国のメーカーに市場を奪われてしまった。

  それでも久世プロジェクト長は、深紫外LEDにおける日本勢の優位は揺るがないと言い切る。赤色に比べはるかに量産しにくく、開発や製造が難しいのが理由だが、根本的な開発姿勢に違いがあるという。   「材料の組み合わせや製造方法をあらゆる視点からチェックしている。根気の要る作業の連続だが、他社も含めて日本メーカーにはそうした粘り、きめ細かさがある」。青色に続くノーベル賞受賞も夢ではない。(井田通人)

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