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send 業界に走る衝撃…伊藤忠が商社首位へ “岡藤流”の攻めで躍進、死角はあるか

2016年1月27日 水曜日

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資源価格の一段安で総合商社の三菱商事、三井物産が苦戦する中、伊藤忠商事が2015年度の最終利益で初の首位に立つ見通しになった。三菱商事が15年間維持してきた首位の座を奪うだけに、業界に衝撃が走っている。原料炭などの資源安の影響で、三菱商事などが強みとしている資源分野が振るわず、脱資源に注力した伊藤忠と明暗が分かれた。伊藤忠の岡藤正広社長は、「2期6年」の社長交代の下馬評を覆し、異例の社長続投を宣言。矢継ぎ早に攻勢を仕掛ける決意だ。

  東京・青山の伊藤忠本社ビル21階にある岡藤社長の応接室。最近、「非資源ナンバーワン商社を目指して」「2強時代」など墨文字で書かれたいくつかの標語の額縁が外された。念願が成就したものもある。   唯一、「か・け・ふ」という標語だけが残されている。「稼ぐ」「削る」「防ぐ」の頭文字で、商売の原理・原則だ。「今こそ暫定1位に浮かれずに原点に返る」という“岡藤流哲学”を垣間見ることができる。   岡藤氏が社長に就任した10年は、リーマン・ショックの後遺症がまだ尾を引いており、財務体質の改善を最優先する「守り」の経営だった。  

岡藤氏は就任後、「攻め」にかじを切った。会議や書類を減らして現場主義を進めるとともに、非資源事業の強化に動いた。まずは、分かりやすい目標として業界3位の住友商事を抜くことを社内で標榜(ひょうぼう)した。11年度には、最終利益で初の3000億円台に乗せ、9年ぶりに住友商事を抜き3位を奪還した。

  岡藤社長が非資源ナンバーワン商社を掲げるのは訳がある。資源は掘れば枯渇し、拡張や追加の開発投資が不可欠だ。資源安となれば、巨額の損失を負うなどリスクが高い。   岡藤社長は、繊維ビジネス一筋という商社トップの中でも異色の経歴を持つ。徹底して顧客のニーズに応え、ブランドビジネスで繊維ビジネスモデルを改革しただけに、資源ビジネスは異質に映った。過去の東亜石油への投資失敗もあり、「日本の国のためにと思って手掛ければ大変な目に遭う」と考えた。   早かった店じまい   だが、社長就任後に空前の資源高ブームがやってきた。「今買わないと資源分野の将来もない」とのジレンマにかられ、米シェールオイルなど資源への大型投資に手を出し、結果的に減損を計上する憂き目に遭った。  

ただ、岡藤社長の“店じまい”の判断は早かった。非資源への原点回帰といましめの意味合いもあり、米シェールオイル権益はわずか1ドルで売却。昨年は新興国のリスクを回避するため、ブラジル鉄鉱石事業ナミザを持ち分法適用から外した。強みのある石炭と鉄鉱石のみとし、非資源への投資に集中する戦略を鮮明にしたのだ。岡藤社長は「当社は(三菱商事などの)財閥とは資源の目利き力が違う」と話す。

  非資源分野では、強みのある繊維、食料のほか、事業の幅を広げた。パルプ事業では12年、フィンランドのパルプメーカーに出資。各社が紙・パルプ事業を縮小する中、世界貿易で首位に浮上した。住生活・情報部門は1000億円規模を稼ぐ。   他社に見劣りしていたインフラなど機械部門には、事業別の投資基準を新たに導入して安定収益を積み増し、非資源の牽引(けんいん)役に育てた。   資産の入れ替えも積極的で、米国の住宅建材会社も好調なうちに売却を決断した。得意先の景気にわずかに陰りが見え始めている状況を踏まえ、先手を打って利益につなげた。  

昨年1月には、中国中信集団(CITIC)グループに、タイのチャロン・ポカパングループ(CP)とともに総額1兆2000億円を出資する“大ばくち”も打った。この提携をてこに強みの非資源に磨きをかける戦略だ。

  岡藤社長は、働き方の意識改革にも乗り出した。深夜残業割増金を朝の時間外勤務に切り替える制度を導入。残業代の削減にとどまらず、夜型が常識だった商社マンの働き方を一新し、顧客目線を徹底させた。   朝型勤務に続き「110運動」も推奨。営業目的の宴席でも酒は「1」種類、「1」次会、午後「10」時には宴席を切り上げて翌日に備えるという趣旨で、ビジネスの心構えを示した。   「おごり撲滅」が哲学   岡藤社長は、15年度の最終利益で実際に首位になった時点で社員に特別ボーナスを出すと公言する。一方、生活態度や酒席上のトラブル、社内のコンプライアンス違反があれば、本人、上司に責任を問うとしている。このため、酒席上のトラブルがなくなったという。さまざまな手法で社員の慢心を正している。企業の継続的成長のためには、「常におごりを撲滅する」のが岡藤流だ。  

岡藤社長に死角があるとすれば後継問題だ。今月12日、岡藤社長は社内のイントラネットを通じて全社員に向け、「今は剣が峰。眼前にある大きな経営課題だけは自分の代でめどをつけ、しばらくは社長を続けるしかない」と述べ、異例の続投宣言をした。

  伊藤忠の社長は、丹羽宇一郎氏と現会長の小林栄三氏の直近2代続けて6年務めている。岡藤社長は「晩節を汚さないよう、地位には恋々としない」という哲学もあるが、続投期間は未定だ。   続投に踏み切ったのは、国内外の重要懸案を処理しなければならないからだ。まずは、ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスとの9月に向けた経営統合。CPとCITICとの提携でも、最大の効果と期待する大型のインフラ案件などが中国経済が調整局面に入ったこともあり、動きが取れない。百戦錬磨のCITICの常振明董事長(会長に相当)やCPの謝国民会長らとのタフな交渉が待ち受けている。資源価格が上昇すれば、三菱商事や三井物産の収益力は急回復し、最終益の業界トップは“三日天下”に終わりかねない。常勝を目指す経営体力をつけるため、岡藤社長はさらなる試練に挑む。(上原すみ子)

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