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send “時短派遣”事務系人材難で急増 即戦力を非正規雇用「パートよりはずっといい」

2016年6月10日 金曜日

ecd1606100500001-p1   女性が中心の事務系職種で、“時短派遣”が急増している。1日の勤務時間を短くしたり、週5日未満にするなど、多様な勤務を採用する企業が増加。人手不足の解消とともに、人件費の抑制もできるためで、子育てや介護を理由に正社員を離職した女性層の受け皿になっている。企業側と退職女性のニーズが合った格好だが、一方で、女性が待遇の劣る非正規雇用に流れざるを得ない実情も浮き彫りにしている。   小学生と保育園児のいる今川佳奈子さん(43)=仮名=は、東京・青山の専門学校で、人事労務の担当者として働く。勤務時間は週5日午前10時から午後4時までという派遣社員だ。   子供に手がかかる中「この勤務形態は本当に助かる。仕事も経験の長い分野で働きやすい」と、今川さんはしみじみ言う。というのも、下の子が生後4カ月で復職した前職では、大変な思いをしたからだ。   子育てでやむなく   最初の出産で離職していた今川さんは、子供が2歳の時に再就職。証券会社で正社員として管理職を任されていた。2人目の出産の後は、同社では育児休業取得者第1号として復帰したが「時短勤務」は名ばかり。   午後5時退社のはずが、4時半から会議が始まる。復帰前と仕事量は変わらない。夫や離れて暮らす親に「間に合わないので保育園のお迎えをお願い」と机の下でメールを打つ日々だった。中耳炎を繰り返していた子供が症状を悪化させたことで「もう無理」。離職を決めた。   会社は辞めても仕事は続けたいと派遣会社に登録。午後5時までという条件付きでもすぐに声がかかった。時給は1600円程度。月収で40万円近くあった正社員時代に比べ大きく下がったが「パートよりはずっといいし、勤務時間を考えればむしろ満足」と感じている。   派遣大手スタッフサービスでは、今川さんのような勤務制限付きの派遣社員を「コアタイム人材」と呼んでいる。午前10時から午後3時の仕事の集中時間(コアタイム)は働けるという意味合いだ。同社では月労働時間が80時間以上100時間未満のコアタイム人材は、4月末時点で2年前の6倍という。   「派遣先企業は勤務制限のある人を受け入れないと、即戦力を採用できなくなっている」。急増の背景を、スタッフサービスの営業担当者はそう明かす。   10万人の派遣社員を抱えるテンプスタッフでも、短時間や週5日未満勤務を希望する新規の派遣登録者(首都圏)が11年度から5年間で2.8倍と急増。担当者は「子育て中でも経験を生かして働きたい女性が増えている。今後は介護を理由に男性でも増えるのでは」とみる。   派遣求人サイト運営のエン・ジャパンによると、週3日勤務の求人案件は15年1月で前年同月比約1.6倍、1日5時間以内だと約1.5倍に増えている。同社は時短求人を集めたサイト「女の求人マーケット」を昨年立ち上げた。「人材難の結果、派遣各社は時短案件に力を入れている」という。   2002年に設立した新興のビースタイルは、創業時から主婦人材に特化した「パートタイム型派遣サービス」を展開してきた。当初は「フルタイム人材に勝てるわけがない」と業界内ではささやかれた。しかし企業が「優秀なら短時間でも来てほしい」となった今、同社は「短時間勤務でもレベルの高い主婦人材のデータベースがある」(担当者)と競争力をつけている。   短時間勤務の派遣スタッフでは、派遣先が望む時間帯に対応しきれない「穴」があきがちだ。そこで同社は派遣先の会社の業務パターンを分析。シフト勤務にしたり繁忙期には複数人を派遣したりと、派遣先に対応策を提案しているという。   35歳限界説消える   時短派遣の増加は、派遣市場も変容させている。   女性が主の事務系派遣社員といえば「リーマン・ショック前までは(派遣先企業から)『若い子にしてよ』といった声はざらだった」(派遣大手の営業担当者)。しかし労働市場から20代は減り続け、一方で時短派遣拡大もあって子育て世代が増加。日本人材派遣協会の調査によると派遣社員の平均年齢は14年時点で38.1歳と、ここ数年で急速に高くなった。事務系派遣には“35歳限界説”があったが、すっかり様変わりした。   「派遣はかつての経験が生かせる事務職が多く、パートよりも時給は高い。そこに時短が認められる今、主婦人材はますます増えるだろう」と、ビースタイルしゅふJOB総研の川上敬太郎所長はみる。   企業、不景気に備え人件費抑制   時短派遣が増える背景には、単純な人手不足とは別の一面もある。求職者1人に対し何件の求人があるかを示す有効求人倍率は、4月時点で前月比0.04ポイント上昇の1.34倍。1991年11月以来、24年5カ月ぶりの高水準だった。しかし個人消費は落ち込んだままで、求人増とは裏腹に景気回復が実感されていないのが実情だ。   「派遣先の企業は不景気を見越して、人件費をできるだけ変動費化させたがっている」。エン・ジャパン派遣支援事業部の担当者は、時短派遣が増える背景をこう指摘する。派遣社員の年齢や制約条件の緩和が進んではいるが、派遣社員は雇用調整の対象になりやすい。再び景気が落ち込めば契約を切られてしまう可能性のある、不安定な雇用に変わりはない。   日本総研チーフエコノミストの山田久氏は人手不足により「派遣社員に働き方の選択肢が増えている面はあるが、正社員の働き方を見直す前に、安価な労働力として企業が派遣に頼っているのも事実」と指摘する。   しかし働き方の多様化が正社員にも及ぶのは時間の問題だ。少子高齢化により、年功序列や終身雇用といった雇用慣習は崩れ始めている。正社員とはいえ、従来の滅私奉公的な働き方を強いるには限界がある。   山田氏は、加速する働き方の多様化と雇用の流動化に対し、派遣社員に限らず「個人のスキルやキャリアが雇用の保障となる時代がくる。欧州の職業大学や職能資格のような、職場が変わってもキャリア形成を支援する社会の仕組みが求められる」と、政策的なセーフティーネットの必要性を訴えている。(滝川麻衣子)

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