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send 日本の町工場が映画に込めた未来図 「未来シャッター」が好評

2015年9月2日 水曜日

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「下町ボブスレー」の東京・大田

  国内有数の町工場の集積地で、映画の街だった蒲田(東京都大田区)を主な舞台にした映画「未来シャッター」が好評を博している。同区の町工場がスクラムを組んで国産マシンを開発し、冬季五輪日本代表チームによる採用を目指す「下町ボブスレー」など、首都圏の中小企業が主導して進める新たなモノづくりの仕掛け人たちが出演。中小企業が進むべき方向性を指し示す内容になっている。   bsc1509020500002-p2   随所に和の精神   タイトルの「シャッター」は、現代人が抱えるさまざまな境界線上の壁を意味する。この壁を乗り越えられないでいる3人の主人公が、地域の人たちと関わりながら解決の糸口を探るのが映画のストーリーだ。   製作・プロデュースしたのはNPO法人「ワップフィルム」。拠点を置く蒲田の「キネマ通り商店街」は昼間でもシャッターを下ろしたままの店が少なくない。その一角を改造し「キネマフューチャーセンター」とし、活動している。蒲田には戦前に松竹の撮影所があり、映画の街として知られていた。   NPOだけあって映画の配給方法は独特だ。企業や団体が有料で作品を借り、上映会を開く。観賞後には、テーブルを囲んで観客同士が話し合うことを基本スタイルとしている。  

映画には下町ボブスレーに加え、全国の中小メーカーなどが自らが持つ製造技術を注ぎ込んだコマを戦わせる大会「全日本製造業コマ大戦」、下町の技術力を結集した深海探索艇「江戸っ子1号」の仕掛け人が登場する。この3つのプロジェクトは町工場同士の緊密な連携が原動力となっており、仕掛け人は映画の中で地域とのつながりの必要性を訴え、主人公と関わっていく。

  「周囲と連携しながら取り組んでいかないとシャッターは上がらないし、イノベーション(革新)も起きない。そんな意味を込めて製作した」と、この映画の監督を務めたワップフィルムの高橋和勧(かずゆき)理事長は語る。   ワップフィルムの名称には「日本の文化でもある『和』を映画でアップさせよう」との意味が込められている。その方針に基づき、映画の製作過程でも和の精神が大きく役に立った。その一つがロケ現場の設定だ。   日本の玄関口である羽田空港や、空港と都心を結ぶ東京モノレールのロケでは特別の配慮を受けた。羽田空港国際線旅客ターミナルの場合、テレビ報道などの映像撮影は一部のエリアに限られているが、未来シャッターのロケでは主要部の使用が認められた。また近未来の設定に合うように、撮影時には最新タイプのモノレールが通常の何倍もの頻度で運行された。  

高橋氏によると「交通機関の交渉は難しく、なかなか対応してくれない」ものの、人と人との縁で実現したという。

  出演者も「和」と呼べるネットワークを生かして決まった。その中心人物が、マシニング加工や材料販売を手掛けるマテリアル(同区)の細貝淳一社長。下町ボブスレープロジェクトで重要な役割を果たしており、映画では商店街の会長役を演じた。   世界で戦うために   細貝氏は二十数年前に現在の会社を立ち上げた。丁寧な仕事と高度な技術で業績を順調に伸ばし、年商は10億円に迫ろうとしている。「設立当初から地域の人が支え、助けてくれた。連携することの重要性が身につき、恩に応えていった」(細貝氏)ことが、好業績の背景にある。その経験を映画を通じて伝えたいといった思いから、幅広いネットワークを駆使した支援を惜しまなかった。   細貝氏が持つ人脈の一人が、浜野製作所(同墨田区)の浜野慶一社長。板金加工分野で高度な技術力を備え、江戸っ子1号のプロジェクトでは推進役を担った。映画では講義に立つシーンに登場し、連携することの重要性を伝えている。このプロジェクトに関わった東京東信用金庫の渋谷哲一理事長も出演している。  

全日本製造業コマ大戦協会の緑川賢司会長も、映画で重要な役柄を演じた。木型やモックアップの製造を手掛けるミナロ(横浜市金沢区)の社長を務める緑川氏は、かつて役者を目指し、現在も舞台に立つこともあり、ずぶの素人とはひと味違った演技力を見せた。

  自転車とキックスケーターの中間のような「nbike(エヌバイク)」を近隣の町工場とともに開発したナイトペイジャー(大田区)の横田信一郎社長も出演した。横田氏は下町ボブスレーの中枢メンバーだ。   映画製作の資金提供などには50以上の企業が携わっているが、こうした和の効果は計り知れず、金額には換算できない。   円安・ドル高効果で大企業の業績は急速に回復したものの、中小企業はすぐには円安効果を享受できず、経営環境は依然厳しい。細貝氏は「世界市場で戦うためにも、町工場が連携し合って大田区が一つとなり、『大田区株式会社』を作ることが重要だ」と強調する。   連携を基に競争力を高める手法は大田区に限らず、中小企業が集積する地域にとっては生き残りに向けて取り組むべきテーマの一つだ。未来シャッターに出演した経営者のせりふには、中小企業同士の連携を生かすヒントがちりばめられている。(伊藤俊祐)

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