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send 日本の宇宙産業が反転攻勢 三菱電機の強み、“現場力”で課題克服

2015年2月23日 月曜日

bsc1502230500007-p1   衰退の危機が叫ばれてきた日本の宇宙産業が反転攻勢に出ようとしている。政府が1月に今後10年の新宇宙基本計画をまとめ、関連産業の再強化を打ち出すなか、各メーカーは国内で積み上げた実績を海外での受注拡大にもつなげようと意気込む。1960年代から人工衛星や大型望遠鏡を開発・製造してきた三菱電機もそうした企業の一つ。持ち前の高い品質や信頼性で海外メーカーとの競争を勝ち抜き、宇宙産業を新たなお家芸にするための先兵となる覚悟だ。   神奈川県鎌倉市の三菱電機鎌倉製作所。2年前に30億円をかけて建設された人工衛星の新生産棟では、来年打ち上げ予定の気象衛星「ひまわり9号」などが組み立てられていた。   新棟は延べ床面積約7800平方メートルの6階建て。1~4階が吹き抜けになっていて、大型衛星の組み立てにも対応できる。既存の生産棟とは棟続きになっているため、製造段階ごとにスムーズに移動させ、空いたスペースを有効活用することも可能だ。これにより、既存棟と合わせた生産能力は年8機に倍増した。   「宇宙空間での運用を想定したあらゆる試験が行える」。塚原克己宇宙システム第一部長が胸を張る通り、宇宙空間を模擬的に再現できる「真空チャンバー」など、さまざまな試験設備も備えているのも強みだ。一方で、鎌倉製作所では電子基板への半導体チップの実装や部材の切削加工といった、「川上」の工程も手がけてきた。   bsc1502230500007-p2   一貫生産で信頼性   宇宙空間での修理ができない人工衛星は、製造品質が何より重視される。塚原部長は「部材からの一貫生産であらゆる分野の技術を磨き、品質や信頼性につなげてきた」と強調する。   そんな鎌倉製作所の技術力が遺憾なく発揮されたのが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって昨年5月に打ち上げられた陸域観測技術衛星「だいち2号」だ。   この衛星は、2011年に運用を終えた「だいち」の後継に当たり、三菱電機が本体製造を担当した。Lバンドと呼ぶ波長の長い電波を使うレーダーアンテナの「PALSAR(パルサー)2」を搭載。雲や植物を透かして地表のわずかな変化をとらえられ、夜間でも観測できる。このため、地震などの災害状況把握や森林伐採の監視、資源調査での利用が見込まれている。   三菱電機は、だいち2号の製造に当たって多くの新技術を採用したが、その一つに、小型軽量化技術がある。   パルサー2は、お椀(わん)型のパラボラアンテナではなく、3×10メートルの板状をしている。そこには1000個もの小型センサーが敷き詰めるようにびっしりと搭載され、それらをまとめて制御することで、一つのアンテナとして機能させている。アンテナを固定したまま、電波を飛ばす方向を自在に変えることで、いつでも観測する場所を選ぶことができる。   対象の識別能力を示す分解能は「だいち」の10メートルに対し、3メートルまで向上。衛星の進行方向だけなら1メートルまで分解できる。視野も広がり、観測範囲は3倍近くに拡大した。   もっとも、高性能化した分、開発や製造は難しくなった。   ロケットで打ち上げる衛星は大きさや重さに制約がある。性能のみを追求し、小型軽量化を怠れば、1トン近くになり、搭載できなくなってしまう。   パルサー2も、小型軽量化なしには搭載できない。   半導体を高密度実装   そこで、送受信モジュールなどの基板は半導体チップを高密度で実装し、ぎりぎりまで薄くしてからアンテナ裏側に搭載。表側に搭載する小型センサーも同じく薄型化した。こうした工夫でパルサー2の厚さは数センチに抑えられ、5分割して1枚に折り畳めるようになった。全体の重さも500キロに抑えられた。   開発製造を指揮した針生(はりう)健一ALOS-2プロジェクト部長は「携帯電話端末と同じでいかに薄く、軽くできるかが大事。設計も重要だが、製造技術が物を言う」と説明する。   一方、試験でも鎌倉製作所の設備やノウハウが生きた。   地上と異なり、宇宙空間は温度一つとってもプラス100度からマイナス数十度まで変化し、過酷な環境下での運用を強いられる。このため全ての部品が耐久性に優れた特注品だ。それぞれの耐久性能を確認してから搭載している。性能や動作を確認する試験は、組み立て終了後も無数に行われる。   政府の基本計画、技術伝承後押し   試験の一つに、アンテナが指示通りの方向に電波を飛ばしているか確かめるものがある。   電波は目に見えない。しかも厄介なことに、アンテナが大きいほど、特性の把握が難しい。通常は電波暗室と呼ぶ実験設備で試験しているが、パルサー2ほど大きいと、スペースが足りなくなってしまう。   そこで同社は、まずパルサー2から数メートルの近くに測定用アンテナを置き、パルサー2の放射する電波を測定。さらに得られたデータをコンピューター処理することで、実際に運用した場合の電波の向きや強さを推測できる手法を開発し、従来通り暗室内で試験できるようにした。   こうした試験は、組み立て終了後も約1年をかけて念入りに行われた。組み立て開始から納入までに要した期間は約2年。計200人が何らかの形で関わったことになる。   だいち2号は打ち上げられると、さっそく昨年9月に噴火した御嶽山の新たな火口などを撮影。昨年12月には民間へのデータ提供も始まった。JAXAはだいちのもう一つの後継機として、光学カメラを搭載した衛星の打ち上げも視野に入れる。   新宇宙基本計画では、宇宙関連産業育成のために今後10年で5兆円を費やすことが盛り込まれたほか、衛星やロケットの打ち上げ数や時期が工程表として具体的に示された。安倍晋三首相は工程表が「産業界の投資の予見可能性を向上させ、産業基盤の強化にも貢献する」と意義を強調する。   年間数機しか造らない衛星メーカーは、受注が途絶えるリスクを常に背負っている。長期にわたって受注が途絶え、工場が稼働を停止すれば、人材育成にも深刻な影響が出る。塚原部長は「工程表が示されたことで技術伝承がしやすくなる。長い歴史や、さまざまな製品を扱う総合電機メーカーの強みを生かしていきたい」と技術力のさらなる向上に意欲をみせる。(井田通人)   中韓製造業の台頭で陰りを見せた日本経済。復権の鍵を握るのは、他国にはまねのできない高い技術力だ。世界に冠たる「日本テクノロジー」をシリーズ(随時掲載)で紹介する。    

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