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send 日本、豪潜水艦受注で独仏と激突 「防衛装備移転三原則」の試金石

2015年4月24日 金曜日

  bsc1504240500009-p1   日本製の採用は間違いないとみられていた最大500億豪ドル(約4兆6400億円)規模のオーストラリアの次期潜水艦受注の行方が混沌(こんとん)としてきた。豪州国内での建造を求める声の高まりを背景に、豪州政府が日独仏3カ国の中から選定する方針を表明。これを受け、欧州勢が現地生産方式を前面に出し攻勢を強めているのに対し、日本は受注を争う姿勢を見せていないためだ。昨年、安全保障強化や防衛産業の基盤維持などを狙いに「武器輸出三原則」に代わり制定された「防衛装備移転三原則」の下で日本が防衛装備の海外移転にどう取り組むかを海外に示す初の大型案件となるだけに、関係者の間には日本が敗れた場合の影響を懸念する声が出ている。(佐藤健二)   そうりゅう級に実績   豪州は2009年の防衛白書で現役のコリンズ級(通常動力型、潜水時排水量3300トン)6隻の更新計画を発表して以来、5年以上にわたり検討を続けてきた。海洋進出を急ぐ中国の脅威に対抗し、年内にも次期潜水艦8~12隻の調達先を決め、10年後をめどに配備する計画だ。   当初はコリンズ級を設計したスウェーデンを含め欧州製を軸に調達先を模索してきたが、昨年7月に安倍晋三首相とアボット豪首相との間で行われた首脳会談で安全保障関係強化などで合意したことを機に、日本が一躍、最有力候補に躍り出た。   三菱重工業、川崎重工業が開発し、現在も年に1隻のペースで建造されている日本のそうりゅう級(潜水時排水量約4200トン)は、原子力潜水艦(原潜)を運用していない日本で独自の進化を遂げた高性能の通常動力型潜水艦で、同様に原潜の運用が困難な豪州にとっても最適の装備といえる。   以前は日本の「武器輸出三原則」が調達に向けての壁となっていたが、同盟国などへの装備品移転の規制を緩和する防衛装備移転三原則が首脳会談の3カ月前に制定されたことによって道が開けた。   両国は新三原則に基づく防衛装備移転の協定も締結。同10月の日豪防衛相会談では豪州の次期潜水艦について技術協力の可能性を探ることで正式合意し、そうりゅう級導入がほぼ既定路線化したとみられていた。   ところがその後、豪州の造船業界を中心に産業保護や雇用拡大に向け、潜水艦の国内生産を求める動きが活発化し始めた。とりわけ、外国製潜水艦の代名詞となったそうりゅう級に対しては「『性能が不足している』といった根拠のない報道がまかり通っている」(現地情勢に詳しい日本の関係者)など風当たりが急速に強まったという。   こうした中、アンドリュース豪国防相は2月下旬、日独仏の3カ国の条件を比較した上で調達先を決める方針を表明した。日本への“内定”が覆った形だ。アボット首相によるそうりゅう級の支持は「ボスの選択」と呼ばれるほど強いものだったが、選定作業を見守るとみられる。議会でも国内建造に向け超党派の合意形成を目指す動きが活発化しており、日本への支持を続ければ、政治的基盤を脅かされかねないためだ。   日独仏の潜水艦を性能面で比較した場合、そうりゅう級が圧倒的に有利とみられている。   豪州は日本や独仏に具体的な要求性能を伝えていない。しかし、国内の基地から南シナ海やインド洋まで往復できる航続力に加え、中国沿岸部の基地を攻撃できる巡航ミサイルを搭載するため潜水時排水量4000トン以上の大型艦を求めているといわれる。また、豪州は中国が潜水艦探知能力を高める中でコリンズ級の騒音の大きさに悩まされており、静粛性も重視している。   もともと、通常動力の大型潜水艦の建造実績は世界的にも日本以外にほとんどない。このため、それぞれドイツは輸出用小型艦「214型」(潜水時排水量2000トン)を基に大型艦「216型」(同4000トン)を新たに設計・建造、フランスは「バラクーダ型」原潜(同5300トン)の推進機関を通常型に換装するという苦肉の策で豪州の要求に応えようとしている。   新規開発や大がかりな設計変更には開発失敗のリスクがあるのに対し、そうりゅう級はすでに海上自衛隊で運用実績がある点が大きな強みだ。大型艦ながら相手に探知されにくい「ステルス潜水艦」を実現した静音技術は「クラウンジュエル(至宝の技術)」(防衛省幹部)と呼ばれるほど希少性が高い。   一般に通常動力型潜水艦は、潜水したまま活動できる時間の長さや搭載できるソナーなど装備の数で原子力潜水艦の戦闘能力には及ばないものの、そうりゅう級の場合は「原潜の8割程度」(元海上自衛隊幹部)に迫ったとされる。ステルス性では原潜を凌駕(りょうが)するなどそうりゅう級は世界最高水準といえる。   米システム共用可能   一方、豪州は日独仏のどの国が受注しても、次期潜水艦には共同作戦を行う可能性が高い同盟国の米国製戦闘指揮システムを搭載する方針だ。米国製システムは日本との共用が可能だが、「欧州製との互換性は低い」(防衛省幹部)とされ、システム面でもそうりゅう級は有利とみられている。   アジア・オセアニア諸国は中国の海洋進出に合わせ潜水艦の増強を急いでおり、太平洋は2030年時点で全世界の過半数が集中する“潜水艦の海”になるとされる。そうりゅう級のような高性能潜水艦の引き合いは強まるばかりだ。   用語解説】そうりゅう級   1番艦が2009年に竣工(しゅんこう)して以来、ほぼ毎年1隻のペースで三菱重工業と川崎重工業が交互に建造。防衛省は最終的に16~22隻の建造を予定している。1隻当たりの費用は当初600億円だったが、今年3月に竣工した「こくりゅう」では約520億円程度に低下した。ネームシップの艦名は旧日本帝国海軍の航空母艦「蒼龍」に続く3代目。

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