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send 新国立競技場、これでは開催ムードも沈む

2015年7月6日 月曜日

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産経新聞客員論説委員・五十嵐徹

  まさに「仏の顔も三度」である。読売は6月30日付社説で、短期間で「何度も大きく変動する迷走には、あきれるばかり」と述べているが、国民を愚弄する行為というほかない。   常識外の建設費増額   2020年に開催される東京五輪・パラリンピックで、メーン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設費のことだ。産経は28日付主張で、「建設をめぐる国や都の混乱は」日本の「開催能力に大きな疑問符をつける問題」と指摘している。その通りだろう。   このまま十分な説明なく、計画が強引に進められるようなら、ようやく盛り上がってきた国民挙げての歓迎ムードも、水をさされかねない。   発表当時、宇宙船を思わせる斬新なデザインで話題になった新競技場だが、最近になって、総工費は2520億円に膨らむことが明らかになった。昨年5月に基本設計が発表されてから、わずか1年で約900億円もの増額だ。当初見積もりに比べれば、ほぼ倍増である。  

五輪のメーンスタジアム建設費は、当時の為替レートで12年のロンドン大会が約830億円、08年の北京大会で約500億円とされ、新競技場は当初から桁が違った。その後も常識外の増額が続いたことで、国民の目は一段と厳しさを増している。

  日経は27日付社説で「資材や人件費の高騰を考慮しても理解しがたい。しかも、目玉だった開閉式屋根を五輪後に先送りし、常設の座席も1万5000減らしたうえでの数字だ」と見積もりの甘さを指摘している。現行計画に不信感が募るのは当然だ。   完成後の維持管理費捻出にも不安がある。新競技場の事業主体である文部科学省の外郭団体、日本スポーツ振興センターが昨年8月に発表した五輪終了後の収支計画によれば、年間の維持管理費は約35億円。一方、収入は約38億円で、黒字運営が続くと約束されていた。   主な収入には、スポーツ大会やコンサートなど各種イベントへの貸し出しや広告料に加え、年契約で700万円のVIPルーム販売も織り込まれている。  

しかも、これは屋根付きでスタートする当初計画がベースだ。前提が変わった以上、計画も見直されるべきだろう。完成から50年後には大規模改修が不可欠だが、これに必要な656億円は試算に含まれていない。見積もりは楽観的すぎる。

  楽観的な見積もり   下村博文文科相は、命名権の売却や経営の民間委託も選択肢に挙げているが、アイデアとして、あまりに安易だ。   国は周辺整備費として、東京都にも500億円超の負担を求めている。だが、舛添要一知事は回答を保留したままだ。国の施設の建設費を自治体が負担するには、それなりの説明がいるという。うなずける主張だ。   工費が膨らむ最大要因は、2本の巨大アーチで開閉式の屋根を支える特殊な構造にある。建築家の槇文彦氏らは、アーチなしでも構造上の問題はないとし、工費の大幅抑制と工期短縮は可能だとする提言をしている。ところが政府は「受け入れは困難」とはねつけた。  

新競技場は、五輪に先立つ19年秋、やはり日本で開かれるラグビー・ワールドカップでもメーン会場に使う予定で、設計を変更していては間に合わなくなるからだという。だが、現行計画の問題点が次々と明らかになる中、「時間切れを理由にした見切り発車は五輪のイメージを傷つける」(29日付朝日社説)。国の考え方が硬直的すぎないか。国民の理解が得られないままでは、国家的プロジェクトの成功などあり得ない。

  なぜ工費が短期間でここまで跳ね上がったのか、資金の調達と負担方法はどうするのか、国は具体的な数字を挙げ、詳細な説明を行う責任がある。   毎日は27日付社説で「このままでは新国立が『負の遺産』になってしまわないか」と述べている。もっともな指摘だ。   産経は「今回の混乱の経緯を検証し、責任の所在を明らかにすることも当然」と主張する。五輪の成功には国民の一体感が必要だ。そのためにも責任体制の確立は避けて通れない。

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