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send 所得税改革、損するのは誰? 高所得者か高齢者か…参院選控え行方混沌

2015年9月4日 金曜日

mca1509040500003-p1   政府税制調査会(中里実会長)が所得税の抜本改革に向けた議論を始めた。人口や世帯構成、働き方など経済社会構造が大きく変わる中で、生活実態とのずれが広がった税体系の再設計は待ったなしだ。これからの日本の成長を担う若い世代の負担増を抑え、安心して結婚や子育てができるようにするのが趣旨だが、負担が増える人には不満になるだけに一筋縄ではいかない。来年夏の参院選を控え、庶民の財布に直結する改革をまとめることができるのか。   時代に合わぬ控除   「税体系全般にわたる“オーバーホール”を進める。将来の成長の担い手である若い世代に光を当てることで、経済成長の基盤を再構築する」   政府が6月末に決めた経済財政運営の指針「骨太方針」の歳入改革に明記された一節。ここに政府が実行しようとしている所得税改革の方向性が凝縮されている。   所得税の控除制度などの基本構造は昭和30年代(1955~64年)までにつくられた。夫が会社員で妻が専業主婦の世帯が多数を占め、人口増加が経済成長を支えた時代だ。だが、人口減少や働き方の多様化などで、経済が右肩上がりの時代にできた税制が今の実態と合わなくなってしまった。

例えば、専業主婦世帯の税負担を軽くする「配偶者控除」が最たる例だ。妻の年収が103万円以下なら夫の課税所得から38万円の控除が受けられる制度だが、専業主婦世帯中心の税優遇は今の実態とはかけ離れている。

  専業主婦世帯は1980年の1114万世帯から2014年には720万世帯に減少した一方、夫婦ともに給与収入を得る共働き世帯は614万世帯から1077万世帯まで増加し、専業主婦世帯を逆転している。控除を受けるために年収を103万円以下に抑えて働く女性が相当数おり、労働参加の足かせになっている側面もある。   こうした点を問題視し、昨年の政府税調では配偶者控除の見直しを集中的に議論、5つの見直し案をまとめた。なかでも有望視されるのは、妻の収入にかかわらず夫婦の所得から一定額の控除を認める「夫婦控除」の創設だ。女性の働き方に中立で、女性活躍の推進にもつながるとあって、配偶者控除の見直しに反対していた自民党の「家族の絆を守る特命委員会」も一転して賛成に回るなど、与党内でも導入の機運が醸成されつつある。  

だが、そこまで議論が進んでいながら15年度税制改正での見直しは持ち越しになった。配偶者控除だけでは所得税が抱える構造問題の解消にはならず、「所得税の諸控除の在り方をゼロベースで見直すべきだ」との声が強かったからだ。

  実像把握で方向性   所得税納税者の主体となる生産年齢人口は、1995年の8717万人をピークに2015年は7682万人に減り、今後さらに減少する見通し。増加する高齢者を支える年金など社会保障の負担が働き手にさらに重くのしかかる。それにもかかわらず、会社員の給与収入にかかる税を軽くする「給与所得控除」より高齢者の年金の一部を課税対象から外して税負担を軽くする「公的年金等控除」の方が手厚い。こうした税のひずみはそれ以外にも多岐にわたっている。 このため、7月に再開した政府税調は、実態に合った形に控除制度の仕組みを全て見直すことを目標とする。  

だが、これは極めて難解な作業だ。改革はこれからの成長を支える若い世代の働く意欲を高め、安心して結婚や子育てができるよう税で後押しするのが基本。税制改正の前後で税収総額がほぼ変わらない税制中立が前提とすれば、若い世代の負担軽減分を誰が負担するかが焦点になる。安易に高齢者の税負担を増やすような単純な世代間の負担見直しでは、高齢者の反発は避けられない。また、「高齢者の貧困」など今の社会問題にも対応できない。

これに対し、政府税調では高齢者だから負担を求めるのではなく、年齢を問わず経済力のある人に若い世代や低所得世代を支えてもらうよう「再分配機能」を新たな形に転換する議論を進めようとしている。 しかし、それでもなお納税者に損得が発生するのは避けられない。政府税調はなるべく国民が納得できるように丁寧に議論する方針で、実際にどう税制を見直すかという各論に入る前に、経済社会変化の実像把握に十分時間をかけて、なぜ改革が必要かを訴えようとしている。  

9月までは客観的なデータ整理や有識者からのヒアリングに終始しており、「実像を把握することでおのずと(改革の)方向性が出てくると思う」と中里会長も手応えを口にする。

政府税調は今秋に所得税改革の中間論点整理をまとめ、来年秋には中期答申を出す予定だ。論点整理で16年度税制改正で実行する見直しを提示し、中期答申に大規模な改革案を盛り込むとみられている。16年度税制改正は「来年夏の参院選を前に、多くの高齢者にとって増税になるような改革を打ち出すことは難しい」(財界首脳)との見方もある。配偶者控除を含めてどこまで控除の見直しに踏み込むかが、その先の抜本改革の試金石にもなる。(万福博之)

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