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send 就業体験でASEAN学生確保 人材獲得競争、日本は「育てる」戦略

2018年12月17日 月曜日

高見沢サイバネティックス長野第三工場で就業体験するタイの大学生

東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の産業人材を育成する国のプログラムに注目が集まっている。進出した日系企業が協力し、現地大学に寄付講座を開設しインターンシップ(就業体験)などを通じ進出先への就職意欲を喚起したり、現地での新たな事業展開のきっかけにする企業が増えている。生産年齢人口の減少による構造的な人手不足に直面する日本企業は、改正出入国管理法の新在留資格が外国人受け入れの拡大につながると期待する一方、自ら海外に高度人材獲得の橋頭堡(きょうとうほ)づくりを始めている。   現地進出へ好感触 駅のホームドアや券売機などの機器を手掛ける高見沢サイバネティックスの長野第三工場(長野県佐久市)に今夏、日本のものづくりを学ぶタイの泰日工業大から学生2人がやって来た。 精密機械組み立てに挑んだ2人は、細かいはんだ付けに苦労し、ドライバーを使ったねじ締めでは強く締めすぎてねじを壊してしまった。日本は初めてというガンさん(22)は「ねじの締め方で『ちょうどいい』があるのを知った。『失敗はダメ』を覚えた。経験は役立つ」と話した。父親が日本人というリュウジさん(22)は「作業は難しかったけど楽しかった。日本でのインターンを後輩に薦める」と笑った。 2人ともおおらかな性格で、日常的に使われる日本語を理解できるため現場にすぐに慣れたという。外国人大学生を受け入れるのは初めてで「言葉と文化の壁が不安だった。伝わらないもどかしさもあったが、仕事は熱心で自主性もある」(ものづくり本部生産技術部の森泉龍一部長)ことが分かり、外国人と働くことへの認識が変わった。1カ月半にわたり2人を見てきた花岡伸一取締役ものづくり本部長は「きちんと教育すればできる。人材確保のチャンス」と来年以降を見据える。

報告を聞いた高見沢和夫社長は「市場として魅力的な東南アジアを攻めるには現地カルチャーを知る必要がある。今回のインターン実施の意味もそこにあり、ハッピー・ハッピーの関係をつくれる」と現地進出への感触をつかめたという。工場を建てるのか、現地企業と提携するのか戦略を前向きに考える。

アセアン域内大学への寄付講座開設は、安倍晋三首相が2015年11月にマレーシア・クアラルンプールで開催された「アセアンビジネス投資サミット」で行ったスピーチがきっかけ。3年間で4万人の人材育成を支援する産業人材育成構想を発表、政府は日アセアン経済産業協力委員会(AMEICC)に対し16年度からの3年間で25億円の予算拠出を決めた。 AMEICCはそのうち20億円を、途上国の産業人材の育成に豊富な経験とネットワークをもつ海外産業人材育成協会(AOTS)に委託。寄付講座などを通じ日本企業が求める人材育成を任せた。 AOTSの名越吉太郎AMEICC事務局支援業務部長は「現地日系企業への就職が第一義。インターンなどで日本のものづくりのやり方や考え方を教える」という。現地トップクラスの大学が参加しており、優秀な学生の確保につながる確率は高い。 インターン参加者は、16、17年度合計で現地341人、来日170人。18年度はそれぞれ650人、180人に達する見込み。受け入れた企業の中には既に採用という果実を得たところも少なくない。   大学とパイプ作り パナソニックのベトナム統括会社、パナソニックベトナムもその一社。同国の人材育成への貢献と有力大学・学生との接点強化を狙いに、ハノイ工科大に対し寄付講座とインターンを実施。現地で1年目(16年10月~17年7月)は13人、2年目は11人を受け入れ、それぞれ7人、5人を採用。冷蔵庫・洗濯機工場とIT・ソフトウエア開発会社で働いている。

人事部門担当の森田健氏は「ベトナムの学生は学ぶ意識が高く、日系を含む外資系企業への関心も高い。臆することなく素直に疑問をぶつけてくる」と評価。能力や成果を踏まえ適切な配置やキャリアを実現する考えだ。優秀な人材確保につながるため寄付講座の存続にかかわらず、継続する予定で、他大学への拡大も検討中という。

「採用が目的なので、インターンに力を入れている」。デジタルマーケティング事業を手掛けるトライバルメディアハウス(東京都中央区)のベトナム法人、テックラボの佐藤譲太郎社長はこう言い切る。 寄付講座は17年度からハノイ工科大で実施、この中でインターン募集を伝え、研修中も「働きたいと思ったらいつでも面接する」と声をかけている。この期間中に仕事に興味を持ち、会社の雰囲気も分かったうえで就職するため、採用した学生8人のうち離職者はゼロだ。 JFEスチールは日本でのインターンに、寄付講座を開設した大学の若手教員も呼んで設計施工技術を学ばせている。品質の良さを技術的に実感した教員に将来、同社の講義を現地語で行ってもらうためだ。受け入れたスチール研究所の村上琢哉土木・建築研究部長は「採用に加え、今後需要が増える鋼構造物を理解し、設計などを任せられる技術者を増やすため」と話す。同社製品を現地で普及させる狙いもある。 同社は学生1人を採用したが、来日したインターン生ではなく、大学教員からの推薦だ。寄付講座を通じ教員との結びつきが強くなった成果といえ、AOTSの田中宏幸担当部長は「採用のパイプづくりなどに生かせるので、この機会に大学とのネットワークを太くしてほしい」と強調する。 政府が支援する、寄付講座を通じた産業人材育成のプログラムは18年度で終了予定だったが、学生の質が高く大学とのネットワークづくりにも有効と好評で2年延長が決まった。 世界的な人材獲得競争を勝ち抜くには、外国人への門戸を広げるだけでなく、「育て」「ともに歩む」戦略も求められている。(松岡健夫)  

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