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基準地価、仙台や広島など三大都市圏上回る上昇率 訪日需要“追い風”に
2016年9月21日 水曜日

エリア別にみると、三大都市圏では、商業地がプラス2.9%と前年(プラス2.3%)を上回ったが、住宅地は同0.4%の横ばい。オフィス空室率の低下が目立つ半面、建設費の高止まりが響き、都心部でのマンション需要が鈍っている。
札幌、仙台、広島、福岡の4市の住宅地はプラス2.5%で、商業地と同じく4年連続で上昇した。商業地の上昇率は仙台7.6%、札幌と福岡が7.3%、広島3.9%。「まだ価格水準が低く、外国人投資家などの関心は高い」(不動産大手)という。 しかし、その他の地方圏は商業地がマイナス1.5%、住宅地はマイナス1.4%といずれも下落。金沢など一部の都市では上昇地点もあり、下げ幅は前年比0.2~0.4ポイント縮小したが「地方の二極化は一層進んでいる状況」(国交省)だ。 基準地価の動向からは、日銀のマイナス金利政策などを背景に、潤沢な投資マネーが三大都市圏(東京、大阪、名古屋)だけでなく地方中核都市の不動産需要も押し上げたことが浮き彫りになった。一方で、景気の不透明感は根強く、大量供給が見込まれる東京都心部の物件などは今後、厳しい選別の目にさらされることになる。緩和マネーが流入
東京駅から徒歩圏かつ地下鉄5路線が乗り入れる日本有数のビジネス街・大手町。三菱地所が4月に竣工(しゅんこう)した複合ビル「大手町フィナンシャルシティグランキューブ」は、小規模オフィスまで満室で開業を迎えた。ミシュランガイドに選ばれた名店も入り、入居企業も「グローバル展開に最適な環境」(協和発酵キリン)と利便性を評価する。 旺盛な不動産需要は地方中核都市にも波及する。住宅地上昇率で全国トップ10に2地点が入った仙台市若林区は昨年12月、地下鉄東西線が開通した。新駅周辺は通勤族向けのベッドタウンとして人気で地元の仲介業者は「築浅のファミリー用物件は賃料が1~2割弱くらい上昇した」(地元不動産業者)と話す。 Jリートが投資、景気次第で冷え込む恐れ 不動産市場の活況は、日銀が導入したマイナス金利の押し上げが大きい。従来の金融緩和政策も資産運用を低金利の国債から不動産にシフトさせる効果があったが、マイナス金利は流れを加速させた。SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリストは「地方の金融機関が不動産投資信託(Jリート)への投融資を加速させている」と明かす。資金を得たJリートは都市部の不動産だけでなく、比較的手ごろな価格で今後の価格上昇が見込める物件にも分散投資する。三菱UFJ信託銀行の大溝日出夫・不動産コンサルティング部課長は「マイナス金利であふれたマネーが、再開発などで利便性が高まった地方中核都市に流入している」と分析する。
ただ、潤沢なマネーに支えられた市場は景気次第で冷え込む危険性もはらむ。不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によると、昨年上半期の商業用不動産の直接投資額で世界3位だった東京は今年上期に5位まで転落。都心部も優勝劣敗の動きが始まっている。住友商事は2018年秋をめどに地下鉄1路線の中央区晴海を離れ、大手町に本社を移転する。同社は「社員の利便性を考慮した」と話す。 JLLの大東雄人アソシエイトダイレクターは「景気の足踏みで、投資に見合った利回りが得られなければ不動産市場は縮小しかねない。地価上昇を継続させるには金融政策だけでなく、実体経済の活性化が必要」と指摘している。(佐久間修志)