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send 商社大手、競うはIoT企業 第4次産業革命を取り込み 好決算に緩みなし

2018年2月21日 水曜日

グーグルなど米IT企業が新たなサービスを打ち出し世界で仕事の仕方やライフスタイルを変え始めている=ラスベガス  

資源高を追い風に三菱商事や三井物産、伊藤忠商事など大手商社の業績が好調だ。新興国経済も好調で経営環境に大きな不安はない。だが、経営陣に楽観的な空気はない。「第4次産業革命」と呼ばれる人工知能(AI)やビッグデータなどによる技術革新が、さまざまな領域でビジネスモデルを一変させる可能性があるためだ。各社は、インターネット関連企業の成長が注目された1990年代末期~2000年代初期のITバブル時にはこぞってベンチャー企業に出資し商機を探ったが、バブル崩壊後に撤退した。今回の技術革新の波がどこまで及び、どこまで自社のビジネスモデルに変革を迫るのか。各社トップはまだ読み切れていないようだ。

  既存ビジネス一変 大手7商社は2月上旬、2017年4~12月期連結決算を発表。資源価格の上昇に伴い、最終利益は前年同期と比べて全社が大きく伸びた。18年3月期の通期予想も、5社の最終利益が過去最高を更新する見通しだ。最大手の三菱商事はリーマン・ショック直前の08年3月期以来、10年ぶりの最高益更新となる。 通期の最終利益が増えるのは、各社の非資源事業強化の取り組みが進んだ面もあるが、資源価格の持ち直しとトランプ米政権による大幅な法人税引き下げの効果が大きかった。 世界経済の回復や産油国による減産を背景にした国際原油相場の持ち直しに加えて、鉄鉱石や銅価格が上昇。まず、この資源高が商社の業績を押し上げた。また、米国の法人税率はこれまで35%と高かった。ただ、昨年末に決まった税制改革で今年から法人税率を21%に下げた。

経済産業省によると、日本企業の米現地法人の最終利益合計は15年度で1兆8000億円。大和総研は、米法人税率が14ポイント下がると、税金の支払額が9200億円から5400億円に4割減ると試算。特に、商社など卸売業には約1200億円の利益押し上げ効果があるという。

こうした追い風効果を除けば商社の業績は伸び悩んでいるのが実態だ。停滞感をどう打ち破るかが最大の経営課題で、三菱商事の垣内威彦社長も「価値観や発想を変え、新しいビジネスモデルで打破したい」と社員に訴える。 一方、AIや、あらゆる機器がインターネットにつながるIoT(モノのインターネット)などの次世代技術を操る米国のアマゾン・コムやグーグル、中国の騰訊(テンセント)、アリババなどがネット通販、会員制交流サイト(SNS)などで新たなサービスを次々と打ち出し、世界で仕事や生活のスタイルを大きく変え始めている。 ソフトバンクグループが約8500億円を出資した米配車大手ウーバー・テクノロジーズは、アプリを通じ、自家用車などを使って有料で客を運びたい人と客を結び付ける配車サービスを手掛ける。一般の人が客を運べるライドシェア(相乗り)と呼ばれるこのサービスは、タクシーなど既存のビジネスモデルを覆しつつある。 ビッグデータ活用 何度も「冬の時代」を乗り越えてきた商社だが、過去の延長線上では、第4次産業革命を生き残れないという危機感があり、丸紅の国分文也社長も「効率化ではなく、ビッグデータという資産をどう新しいビジネスモデルにつなげるか、逆転の発想で自分ゴトにしてほしい」と電子メールで、社員に訴えた。

さらに、自動車関連事業は「コネクテッドカー(つながる車)」「オートノマス(自動運転)」「シェアリング(共同所有)」「エレクトリシティー(電動化)」の頭文字を取ってCASEと呼ばれる「100年に一度の変革期」の真っただ中にある。新技術は鉄鋼など重厚長大企業をも変えつつある。

三井物産の安永竜夫社長は中国鉄鋼大手トップとの会談で話題は専ら電気自動車(EV)化の材料開発や電子商取引(EC)だったと打ち明ける。 中国では昨年、鉄鋼の過剰生産能力が問題視されたが、この中国鉄鋼大手は、鉄鋼製品の仲介▽物流▽検品▽決算▽与信-をネット上で処理できるプラットフォームを構築中という。安永氏は「まさに商社機能そのもので、黙って見ているわけにはいかない」と危機感を募らせる。 伊藤忠商事の岡藤正広社長も「金融とITが融合したフィンテックなどの新潮流に対応しないと、規制がんじがらめの日本は取り残される」と強調。資本提携する中国の巨大国有企業、中国中信集団(CITIC)との協業も生かし、新事業を中国で手掛けたい考え。   ■新たな競争 問われる目利き力 とはいえ、古くから日本の産業を下支えしてきた商社が、自らのビジネスモデルを急転換するのは容易ではない。まずは現実路線として、既存事業の連携に商機を見いだそうとしている。総合商社は“背番号制”と揶揄(やゆ)されるほど、鉄鋼や機械、資源など部門間の「縦割り意識」が強く、これまでは人事交流も少なかった。それだけに、今後は部門間の連携を活発化することで、新たなビジネスモデルを生みだそうとの発想だ。 三菱商事ではこれまで、天然ガスの調達と発電は別々の部門で担当していたが、ガス調達から発電までを一貫して手掛ける事業や、マンションなどの不動産開発と鉄道などのインフラ整備を合わせた総合都市開発事業などを検討。将来の組織改革も視野に入れる。

住友商事も、自動車部門と素材部門で別々に手掛けていた自動車部品を4月から両部門が共同で携わり、EV時代を見据える。その上で、ITそのものをどう取り込むべきかが課題だ。

三井物産は買収した米トラックリース事業にIoTを導入して故障予知につなげているが、この保守管理ノウハウを他国にも活用する。 丸紅は強みの電力で、英子会社が持つ中小発電所の電力をまとめて需要に応じて販売する「電力版ウーバー」を広く展開したい考え。 最先端のITに投資するため、米シリコンバレーやイスラエル、中国での拠点開設の動きも相次ぐ。だが、各社は1990年代末期にもシリコンバレーに拠点を持ち、新技術に投資したが、目立った成果を挙げられず、多くは撤退した。このため、第4次産業革命では、経営者の目利き力が問われることになる。 各社の経営トップに理系出身者が増えているのも偶然ではない。横浜国大工学部を卒業した豊田通商の加留部淳社長、東大工学部卒の三井物産の安永竜夫社長に続き、4月に住友商事の社長に就任する兵藤誠之氏は京大大学院工学研究科修了だ。伊藤忠商事の社長兼最高執行責任者(COO)に就任する鈴木善久氏も東大工学部の出身で、ともに新たなビジネスモデルづくりを託された。 第4次産業革命を見極め、どう社業に取り込むか。次代の成長を見据えた総合商社の新たな競争が幕を開ける。(上原すみ子)

■大手商社の新技術やIoTへの対応

 ・三菱商事 4月にコーポレート担当役員(AI/IoT担当) ・三井物産 チーフデジタルオフィサー(CDO)を設置 ・伊藤忠商事 中国でフィンテックなどを検討 ・住友商事 米シリコンバレーや欧州で投資決定の機動性高める ・丸紅 4月にデジタル・イノベーション部と統括役員を新設 ・豊田通商 ネクストモビリティ推進部や新技術へ社内投資ファンド ・双日 シリコンバレーなどに事務所を設置    

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