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send 商店街、丸ごとホテルで活性化 地元工務店が町家改装、訪日客誘致へ

2018年8月6日 月曜日

町家を改装したホテル「椛屋」。北欧の高級家具をしつらえており、快適空間を楽しめる=滋賀県大津市

京の都に行く東海道五十三次の最後の宿場町として栄えた滋賀県大津市で、伝統的な町家を観光資源に生かす取り組みが本格的に動き出す。木造注文住宅を設計・施工する「木の家専門店 谷口工務店」(滋賀県竜王町)が中心市街地の空き町家を改装したホテル7棟が10日、オープンする。近隣の飲食店や商店も巻き込んだ“商店街丸ごとホテル”として観光客を誘致、昔のにぎわいを取り戻す。空き家の解消と地元商店街の活性化につながると大津市も注目する。   地方創生の突破口に 「大工が改装した町家が呼び水となって企業や人が来るようになる。地方創生の突破口になる」。旅館業法の免許を取って「HOTEL 講 大津百町」7棟を立ち上げた谷口工務店の谷口弘和社長はこう語り、木造家屋の空き町家を大工が改装し、人通りがまばらなシャッター街をホテルでよみがえらすプロジェクトの意義を強調した。かつては憧れの存在だった大工の地位と技能の向上という狙いもある。 ホテル7棟はJR大津駅から徒歩10分ほどのアーケード商店街や旧東海道沿いに点在する。いずれも2階建てで、民家や総菜屋、お茶屋などだった町家を改装した。 このうち5棟は一棟丸ごと貸し切るタイプ。室内は高級北欧家具をしつらえ、誰にも邪魔されずゆっくりくつろげる。浴室やミニキッチンがあり、コンドミニアムのように食材を持ち込んで調理することもできる。残る2棟は客室タイプで、一人旅に最適という。初年度の宿泊客は5600人を見込む。3年目には6600人、このうち外国人は3割に達すると予想する。

今春にプレオープンしたが、利用客は「京都からわずかしか離れていないのに町家の風情を堪能できた」「商店街を散歩してみると、ユニークなお店が多く、新たな発見と出合えた」と評価。想定通り、ホテルとその周辺の商店街を行き来していることが分かった。

こうした回遊を大津市は期待する。館内に必要なコンテンツをそろえて宿泊客を囲い込む一般のホテルと違い、商店街を丸ごとホテルに見立てているからだ。利用客は、7棟のうちフロント機能をもつ「近江屋」でチェックインし、屋根のあるアーケード街をホテルの廊下のように歩きながら宿泊先に向かう。 このとき見つけた気になるお店で食べたり飲んだりし、銭湯で汗を流すこともできる。商店街から少し足を延ばせば琵琶湖や三井寺、比叡山延暦寺、石山寺の景観を楽しめる。   宿場町の復活目指す 宿泊客がホテルの外に出ることで商店街が活気づき、魅力が高まれば観光客を呼び込める-。こう判断した大津市は商店街丸ごとホテルの実現に向け、谷口工務店に経済産業省の国庫補助事業への申請を勧めた。総投資額約3億円のうち約9000万円を補助金で賄えたことで「日本一の町家ホテルを建てることができた」(谷口氏)。

同市は昔のにぎわいを復活させるため、「大津ならでは」の魅力を持つ地域資源の活用に積極的で、その一つが宿場町大津の復活を目指す「宿場町構想」。大津の歴史・文化である町家を生かした宿泊施設や飲食店などを増やし、観光客に滞在期間を延ばしてもらう。

京都の町家は幕末の戦乱期の大火でほとんどが焼失したが、大津は大きな災害や戦乱に見舞われなかったため町家の保存状態がいい。それだけ観光資源としての価値も高く、体験型観光には打ってつけだ。 越直美市長は「商店街にある町家に泊まることで観光客と街の人たちが触れ合う機会が増える。日本人の普段の暮らしぶりを知ることができ、古き良き日本を体験できる」と指摘。「日常が観光資源になり得る」と外国人誘致にも意欲を見せる。   ものづくりの技能磨く場に活用も 昨春オープンした改装町家第1号の宿泊施設「大津町家の宿 粋世(いなせ)」は外国人に好評で、宿泊したフランス人は着物を着たり、お茶をたてたりと日本の文化・伝統に触れることができて喜んだという。市民も町家の改装に興味津々で、つぶれそうな古町家が見違えるほどおしゃれに変身したことに驚く。空き家となった古町家は壊すしかなかったが、和食料理屋や居酒屋などによみがえり、にぎわいの創出に貢献している。 市民の盛り上がりを受け、市も5月に官民連携の「宿場町構想実行委員会」を立ち上げたほか、町家などの活用に取り組む人材育成を目的に「リノベーションスクール」も開催する。 谷口工務店も第2弾として、今秋に「クラフトマン(職人)カレッジ」プロジェクトを始める。職人を育てる文化が薄れつつある中、DIYからプロ志望までさまざまな職人が集まり、ものづくりの技能を磨く場として空き家を活用。シャッター街を「ものづくり商店街」として再生し活気を取り戻す。カレッジの関連施設として金物屋や材木屋などを誘致する予定だ。 谷口氏は「大津市を高度な技能をもつ職人が世界中から集まる聖地にしたい」と意気込む。イタリア・ミラノで毎年開催される世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」の大津版「オオツサローネ」開催を夢見る。かつての宿場町のように多くの人が訪れ、行き来する宿場町構想を進める大津市の新たな地域資源になりそうだ。(松岡健夫)

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