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send 化学大手各社、「機能商品」の育成強化 原油安に黄信号、再編活発化も

2016年5月30日 月曜日

bsc1605300500003-p1 三菱ケミカルHDと旭化成が4月から一体運営するエチレン設備=岡山県倉敷市  

 化学大手各社は、他社との差別化が容易で収益性も高い「機能商品」の育成を強化する。原油安の下で主力の石油化学事業の採算が改善。好業績を続けてきたが、先週、米国産標準油種(WTI)が一時1バレル=50ドルを突破したのに加え、国際的な業界再編も活発化し安穏としていられない。不安要素をはねのけようと、各社が先週までにまとめた中期経営計画には、得意とする機能商品推進が重点方針として盛り込まれた。

   「低空飛行だったのが変わってきた」    東ソーが24日に開いた31年ぶりとなる中期計画の発表会。山本寿宣社長は、収益改善が着実に進んでいると強調した。    同社は2008年のリーマン・ショックや、11年に山口県の南陽事業所で起きた爆発火災事故の影響で業績が低迷したものの、15年度は営業利益が694億円と、10年ぶりに過去最高を更新。新中期計画では、最終年度の18年度に850億円まで増やす目標を掲げた。    今期は三菱ケミカルホールディングス、住友化学、旭化成、三井化学、宇部興産、東ソーの大手6社のうち、3カ年計画の3年目に入った三井化学を除く全社が新中期計画を始動。うち宇部興産を除く4社が、最終年度に過去最高の営業利益を目指す方針だ。  

 各社は、原油安を背景に好業績を謳歌(おうか)している。基礎原料のナフサ(粗成ガソリン)価格が下落し、製品価格との差が開いたためだ。

 人口減などによる国内市場の縮小を見越し、コスト削減や生産集約に取り組んできたことも業績好調に寄与している。     隠れた供給過剰  ナフサから作る代表的な石化製品で、さまざまな製品の元となるエチレンは、国内需要が1997年の596万トンをピークに減少。直近では500万トンを割り込んでいる。このため、14年に三菱ケミカルHDが鹿島コンビナート(茨城県)の設備1基を停止。昨年は、住友化学が千葉コンビナートの設備をやめて国内生産から撤退した。今年4月にも、三菱ケミカルHDと旭化成が岡山県の水島コンビナートにおけるエチレン設備の運営を統合し、2基から1基に減らしたばかりだ。    そのかいあって、国内エチレン設備はフル稼働状態を維持。石油化学工業協会(石化協)が26日に発表した4月の稼働率は96.7%と、採算ラインとされる90%を29カ月連続で上回った。石化協の淡輪敏会長代行(三井化学社長)は「需給は17年途中まで緩まないのでは」と話し、高稼働が当面続くと予測する。  

 だが、それ以降となると楽観はできない。足元の高稼働は、円安による輸出の増加が支えてきた側面もある。集約が進んだとはいえ、国内設備の能力は合計で約681万トンに達し、輸出を除けば単純計算で200万トン近い能力が余る計算だ。円高が進むなどして輸出がしぼめば、余剰は一気に表面化する。

 業界は、数年前から外資との合弁を含めた中東メーカーの攻勢にさらされてきた。さらに18年には、米国のシェールガスを原料にした安価なエチレンが出回り始める見通しだ。前後して中国内陸部でも安い石炭ベースのエチレン生産が本格化するとみられ、日本メーカーの競争力は一段と低下しかねない。    原油相場の上昇も、不安要素の一つ。石化協の淡輪会長代行は「急激な価格変動が一番きつい」と不安要素を挙げる。  

生き残りへ集中投資

 こうした中で、重要性を増してきたのが機能商品事業だ。    「シェールガスと汎用品で戦っていては生き残れない。機能商品を育てないと」。東ソーの山本社長は、自らに言い聞かせるように話す。同社が機能商品として思い描くのは、排ガス触媒素材の「ハイシリカゼオライト」や、歯科材料などに使う「ジルコニア」だ。    新中期計画では、東ソー以外にも旭化成が電池材料のセパレーター、住友化学が飼料原料のメチオニンや有機エレクトロルミネッセンス(EL)向け部材といった具合に、それぞれが需要拡大の見込める得意商品に経営資源を重点投入する。環境・エネルギーや医薬品を含むヘルスケア、電子材料などの分野を中心に動きが活発化しそうだ。    投資積み増しの動きも目立つ。三菱ケミカルHDは20年度までの5カ年計画で総額1兆円の設備投資を盛り込んだほか、5000億円のM&A(企業の合併・買収)を含む戦略投資枠を設定。その前の5カ年計画に比べて2600億円多く、多くを炭素繊維や高機能フィルムといった収益性の高い商品に充てる方針だ。三井化学は現行中期計画について、24日に3年間合計の成長投資を230億円増やす方針を明らかにしたほか、需要が逼迫(ひっぱく)し、4月に名古屋工場の増強を決めた紙おむつ用不織布について、追加増強を視野に入れる。  

 農薬を含む化学業界では、世界的な大再編が始まっている。昨年末に米大手のデュポンとダウ・ケミカルが経営統合を決めたほか、今年2月には中国化工集団が農薬世界最大手のシンジェンタ(スイス)を買収すると発表。最近も拒否されたとはいえ、医薬・化学大手の独バイエルが種子・農薬大手の米モンサントに買収提案を行ったばかりだ。規模や汎用品の競争力で劣る以上、日本メーカーはこうした巨大企業と競合しない事業構造に転換するしかない。

 機能商品の育成を怠れば、好業績が「つかの間の春」に終わるだけでなく、生き残りすらおぼつかなくなるだけに、楽観ムードはない。(井田通人)   ■化学各社の連結営業利益 (2015年度実績/18年度目標) 三菱ケミカルHD 2800/3400 住友化学 1644/2000 旭化成 1652/1800 三井化学 709/900 東ソー 694/850 宇部興産 414/500 ※単位・億円、三菱ケミカルHDの目標は20年度

フジサンケイビジネスアイ

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