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send 出光と昭和シェル、破談回避の裏側 統合報道先行で溝…“奥の手”で打開

2015年8月21日 金曜日

  国内石油元売り大手2位の出光興産と、5位の昭和シェル石油が経営統合へと踏み出した。両社の連結売上高は単純合算で約7兆6000億円に上り、約10兆9000億円で首位のJXホールディングス(HD)に迫る。だが、統合協議入りを発表するまでの道のりは、平坦(へいたん)でなかった。昨年末、統合交渉が報道によって表面化したことをきっかけに昭シェルの販売店が反発し、一時は破談の危機に立たされた。それでも両社が歩み寄ったのは、石油製品の国内市場が縮小する中、このままでは生き残れないという強い危機感があったからだ。昭シェルが出した奥の手も、交渉を軌道に戻す原動力となった。   「経営統合でシナジー(相乗効果)を最大化できる」(出光の月岡隆社長) 「海外展開に向け、出光と新たな枠組みを作りたい」(昭シェルの亀岡剛社長) 7月30日、東京都内で共同会見に臨んだ2人は会場を埋め尽くした報道陣を前に笑顔でこう強調し、固い握手を交わした。 統合ではまず、出光が昭シェルの親会社である英・オランダ系石油メジャー、ロイヤル・ダッチ・シェルから、昭シェル株の33.3%を約1700億円で買い取り、筆頭株主になる。  

公正取引委員会の審査に1年ほどかかるため、実際の株式取得は2016年上期。持ち株会社や合併など統合の形態は今後、両社で詰める。

統合が実現すれば、国内の石油元売り業界は「2強体制」に突入することになる。ただ、統合協議の発表までには曲折があった。「新聞で先に報道され、両社の間に溝ができた」。会見で月岡氏は率直にこう認めた。 両社の交渉が水面下で始まったのは昨年春ごろ。新聞などのメディアは昨年12月下旬、両社の交渉について報道した。出光がTOB(株式公開買い付け)によって昭シェルの株式を5000億円程度で15年春をめどに取得し、昭シェルのガソリンスタンドは出光にほぼ吸収されるといった内容だった。 販売店など猛反発 この報道を受け、昭シェルのスタンド経営者など関係者から猛反発が起きた。亀岡氏によると「『ひょっとして出光の子会社になるのか』『とんでもないことだ』。こんな声が(経営陣に)寄せられた」という。  

ガソリンスタンドにとって、違うブランドのスタンドは不倶戴天(ふぐたいてん)の敵。ぎりぎりまで利益を削って販売価格を下げ、客を奪い合う「仁義なき戦い」を繰り広げてきた。その軍門に下るのは納得できる話ではなかった。

着々と進んでいた統合交渉は、激しい突き上げを食らって先に進まなくなった。別の石油元売り会社の幹部は「統合交渉のような話は絶対、途中で表面化させてはならず、反発が起きるのは当然。誰がリークしたかは知らないが…」と、情報漏れの経緯をいぶかしがる。 とはいえ、交渉を停滞したままにする状況にはなかった。国内の石油市場は少子化に加えてエコカーの普及によるガソリン需要の減少もあって低迷。国内のガソリン販売量は05年の約6160万キロリットルをピークに、14年には約5360万キロリットルと1割以上も落ち込み、今後も回復は見込めない。 過剰な生産能力を抱えて元売り各社の収益は悪化しており、昨年7月には政府が各社に対し、16年度末までに生産能力を1割削減するように指示。出光にも昭シェルにも、このままではじり貧に陥りかねないという経営判断があった。  

事態を打開するため、昭シェルは今年3月、交渉の旗振り役を務めてきた香藤繁常会長兼グループ最高経営責任者(CEO)の退任に踏み切った。表向きの理由は「経営の若返り」。しかし、実際には「交渉を前に進めるため販売店関係者らに対し、けじめをつける意味があった」(業界関係者)とされる。

同時に、13年に廃止した社長職を復活させ、執行役員石油事業最高執行責任者(COO)を務めていた亀岡氏が社長兼CEOに昇格。香藤氏に代わって出光との交渉に臨む中心人物となり、社内や販売店との調整などに奔走することになった。 出光の月岡氏によると、亀岡氏は「誠実さと人柄に信頼感を持てる人物」。2人は「ときに酒を酌み交わしながら、ビジョンを語り合った」(亀岡氏)という。信頼関係が着々と築かれていった。 別の大手も名乗り その途上で、昭シェルの統合相手として別の石油元売り大手も名乗りを上げるなど、出光にとって思わぬ事態も起きた。しかし、月岡氏らは「統合はあくまで対等」と昭シェル側を説得。初めから統合に熱意を持っていた出光をロイヤル・ダッチ・シェルが推したことにも後押しされ、昨年末の報道から約7カ月越しで、ようやく統合交渉入りの発表にこぎつけた。  

共同会見でも月岡氏は昭シェル側への配慮を何度もにじませ、「対等な統合を目指している。(親会社と子会社という)親子関係になるわけではない」「互いのブランドは長年、お客さまから愛されてきた。当面維持する」と強調した。

真摯な粘り強い説得 成功導く 経営統合交渉が途中で破談するケースは、決してまれではない。破談した2010年当時、国内食品業界で首位だったサントリーホールディングス(HD)と2位のキリンHDの場合、統合後の力関係をどうするかについて溝が埋まらなかった。キリンは「キリン1、サントリー0.5」の統合比率を示したが、サントリーの佐治信忠社長(現会長)は「サントリーはそんなに軽い会社ではない」と激怒。キリン側にも、サントリーの創業家が統合後の実権を握ることへの警戒感があった。 13年に破談した川崎重工業と三井造船の場合は、川崎重工の社内で賛成派と反対派が対立。反対派は、統合を進めようとした長谷川聡社長(当時)を取締役会で電撃解任する「クーデター」で、話を潰してしまった。  

出光と昭シェルの場合、政府が業界再編に前向きなことや、ロイヤル・ダッチ・シェルが出光への株式売却に前向きだったことも追い風となった。それ以上に、統合後の両社の力関係をめぐる調整や販売店などの説得で、両社の関係者が真摯(しんし)に粘り強く努力を続けたことが、経営統合交渉を前進させた最大の要因といえる。

 7月30日の会見で出光の月岡氏は、統合交渉入りの発表は「(最初の)一つのステップにすぎない」と述べた。月岡氏の言葉通り、まだ最初のハールを乗り越えたにすぎず、さらに困難なハードルを飛び越える必要に迫られる事態も予想される。最終的に統合を成功させ、さらなる業界再編へ向けた「号砲」を鳴らすことができるのか。国内の石油元売り業界にとって両社の交渉の行方は、まさに生き残りの試金石となる。(山口暢彦)

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