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send 信組「育てる金融」で地域活性 人柄、事業性から判断、二人三脚で生き残り

2018年3月26日 月曜日

第一勧業信用組合のインターネットラジオ番組で事業や展望について語ったKIYOラーニングの綾部貴淑社長(左)。右はパーソナリティーを務めた新田信行第一勧信理事長=2017年12月、東京・四谷の第一勧信本店   小規模ながら地域に一番身近な金融機関、信用組合が創業予定者や創業間もないベンチャーにリスクマネーを提供する動きを活発化させている。人口減少と高齢化で疲弊する地域経済を立て直すには、次代を担うベンチャー育成が不可欠と判断、地域経済活性化を促すファンドを設立し長期資金を供給する。今年に入り、いわき信用組合(福島県いわき市)はファンドを通じて2社に投資、第一勧業信用組合(東京都新宿区)は2番目のファンドを立ち上げた。貸出先が減少する中、「育てる金融」で地域を元気づける。   ファンド立ち上げ 「出資先と伴走しながら事業を軌道に乗せる覚悟で取り組んでいる。成功すれば地元へのインパクトは大きい」 いわき信組の本多洋八常務理事は、2015年10月に立ち上げた「磐城国地域振興ファンド」の意義をこう強調した。 東日本大震災からの復興など地域課題の解決につながる事業支援を狙いに、担保や保証人ではなく創業者と事業性を見て投資先を決定。Uターンに加え、地方活性化に必要な「よそ者」であるI・Jターンも呼び込んで地方創生を後押しする。 今年1月に出資した街づくり会社、まちもりシオカゼ(いわき市)は地元・小名浜の中心市街地の再開発を目指し17年10月に設立された。空き家活用やイベント開催でにぎわいを取り戻して収益を得る計画だが、決め手となったのは地元で不動産業を営む名士にIターンのコンサルタントが加わったこと。本多氏は「人柄はよく分かっており問題はない。事業性はファンドを共同運営するフューチャーベンチャーキャピタル(FVC)が判断した」という。

いわき信組が創業者の品位など属性について地元での評判を聞きながら確認。事業計画の精査はFVCに任せるパターンを確立した。2号案件となった地域商社いわきユナイト(同)も企画を持ち込んだIターン者にバイヤー経験豊富な地元事業者をマッチング、その上でFVCが加わり実現可能性の高い計画を作成。地元の食を中心とした地域産品を「売れる商品」としてブランド化していった。この取り組みが評価され、2月に内閣府から大臣表彰を受けた。

「1号ファンドはわれわれにとってブルーオーシャン(未開拓市場)。不安だったが計画を上回るペースで案件を積みあげることができ、手応えを感じている」。1月、「かんしん未来2号ファンド」を設立した第一勧信の新田信行理事長は記者会見でこう述べた。 人口が流入する東京といえども中小零細企業は減少しており、貸し出しに頼る経営では先行きが危ぶまれる。一方で若者や女性の創業機運や世代交代による第2創業志向は高まっていることに着目、ファンドによる支援に乗り出した。

それが的中。1号ファンドは15年12月の立ち上げ当初、4年かけて投資を完了させる予定だったが、既に19社20件(決定先を含む)に2億800万円を投じることが決まった。「創業意欲は旺盛でニーズはもっとあるにもかかわらず、(費用を含めると)ほぼ使い切ってしまった」(未来開発部の篠崎研一部長)ことから2号の設立に踏み切った。

  創業支援に注力 第一勧信は、13年に理事長に就任した新田氏が先頭に立って創業支援に注力。1号ファンドの始動により、創業時の債務超過リスクは出資で、運転資金は融資で支える態勢を整えた。同時に倒産などのリスクに備えるため目利き力を高めていった。新田氏は「格付けと担保ではなく、人を見て、事業を見て与信判断を行う」と力説する。 融資と出資という第一勧信が用意した組み合わせを活用して事業を軌道に乗せたのが通信教育を展開するKIYOラーニング(東京都港区)。 10年1月の設立当初はベンチャーキャピタル(VC)などに投資を求めても「実績がない」と断られ、資金調達に苦しんだ。

救ったのが第一勧信の1号ファンドで、16年2月に最初の投資実行先となった。17年6月に追加出資を受けたほか、初めての借り入れにも応じてくれた。綾部清淑社長は「手厚く支援してもらった。特に追加出資が大きく、他のVCへの信頼につながった」と述懐する。創業初期に経営者が抱える“お金の壁”に第一勧信は応えた。順調に業容を拡大、19年12月期をめどに上場を目指す。

    ■投資資金回収の出口戦略も視野 出資で創業支援というスキームを創った全国信用協同組合連合会の内藤純一理事長は「人口減少や高齢化などで中小企業、小規模事業者は激減している。だからといって信組は地域を引っ越すわけにはいかない」と指摘。その上で「地域に根を張って、元気づけて生き残るしかない。貸し出す金融から育てる金融への転換の時期で、ファンド設定は大事だ」と説明する。 全国の信組が設立したファンドは計6本。2015年2月に、飛騨信用組合が「飛騨・高山さるぼぼ結ファンド」を立ち上げたのが最初で、秋田県信用組合、いわき信組、第一勧信と続いた。 ファンドとしては、投資資金の回収という出口戦略が問われる。FVCの松本直人社長は「IPO(新規株式公開)だけが出口ではない。企業成長での回収もある」と話す。第一勧信は投資期間終了後に経営者に買い取ってもらうなどの出口も想定。最終的に投資期間平均で年1%程度の収益を見込む。2号ファンドでは投資期間を1号の8年から10年に延長し成長機会を増やした。 地域経済の疲弊により収益先細りに危機感を抱く信組は少なくない。創業が増え、ベンチャーが成長すれば地域に雇用を生み、地域を活性化させる。それを見据えて信組は投資先と二人三脚で企業成長に取り組む。(松岡健夫)     ■磐城国地域振興ファンドの投資実行先(会社名/投資実行日/出資額/事業内容) HealtheeOne/2016年3月 17年9月/2000 1000/医科向けシステム・サービス開発 いわきユナイト/17年9月/2000/地域商社事業 エコエネルギーシステムズ/17年12月/1800/農業クラウド開発 まちもりシオカゼ/18年1月/2000/地域活性化事業 福島SiC応用技研/18年1月/2000/放射線治療機器開発 ※金額は万円(いわき信用組合調べ)

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