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send 介護食、形あるものおいしく 酵素で軟らか、企業の参入相次ぐ

2015年2月27日 金曜日

bsd1502270500014-p1   食べ物をかむ力やのみ込む力が低下した高齢者向け介護食が進化している。多くは食べ物を小さく刻んだり、ミキサーにかけてペースト状にしたりして提供しているが、見た目が悪いため食欲がわかず、食べ残しも多かった。そこで登場したのが、酵素を食材に浸透させて舌でつぶせるほど軟らかくした介護食。見た目は普通の料理と変わらない。高齢社会を迎え、介護食市場は2桁成長が見込めるため、この技術を使って参入する企業が相次いでいる。   「とろけるみたいで食べやすい。おいしい、おいしい」   東京・八王子の介護老人保健施設「ウエストケアセンター」に入所する90代女性は楽しそうに昼食を食べていた。この日の主菜は「鶏むねの旨煮」。見た目は普通だが、鶏肉もニンジンやソラマメも難なくのみ込んでいく。   食べているのは、大塚製薬グループのイーエヌ大塚製薬(岩手県花巻市)が開発した摂食回復支援食「あいーと」。この施設では、通常の食事を取ることが難しい10人前後に1日3食、主菜として提供している。管理栄養士の小川淑美・栄養科副主任は「それまで提供していたミキサー食は食べ残すので栄養不足が心配だった。『あいーと』は完食してくれるので元気になるのが分かる」と違いを強調する。   bsd1502270500014-p3  

舌でつぶせるほど

  「あいーと」との出合いは3年前。看護部の蔵方良子部長は「衝撃的だった」と振り返る。「色や形といった見た目はもちろん、味付けもしっかりしていておいしい。しかも口に入れると舌でつぶせるほど軟らかい。これなら食べるようになる」と納得、採用を決めた。   胃に直接栄養を注入する「胃ろう」をしていた80代男性は「あいーと」に変えてから、うつろだった目がしっかりしてきた。自ら食べようとする意欲が出て、ついには胃ろうをやめることができた。「あいーと」は英語の「I EAT(アイ・イート)」から名付けられたが、まさに「自ら食べる」意識を呼び覚ました。   開発したイーエヌ大塚が介護食に参入したのは2010年。後発組だが、細胞を切り離す酵素を食材ごとに減圧と復圧を繰り返しながら食材の形を保てるぎりぎりまで注入する独自技術「酵素均浸法」を使って食材を軟らかくすることに成功した。   レンコンなど硬い野菜、肉、魚も見た目はそのままだが、軟らかさは常食に比べ100分の1~1000分の1。風味や栄養も変わらない。味付けにもこだわり、日本料理店の板前経験者が開発に加わった。   担当者の北村研マーケティング本部課長は「手間暇かけて開発した『あいーと』は、高齢者が普通の生活現場に戻るための支援食。それは口から形あるものを食べることから始まる」と商品化の意義を強調する。   あるアンケートによると、入院・入所者にとって最大の楽しみは食事。しかしミキサー食は見た目が悪いうえ、食材の味が混ざり「何を食べているか分からない」「食欲がわかない」との声を多く聞く。こうした不満を解消したのが「あいーと」で、売り上げは毎年1.3~1.5倍のペースで伸びている。   ライセンス契約拡大   酵素を活用した介護食を展開するのは同社だけではない。   食のバリアフリー化を図る。そのため全国の企業にライセンス契約による技術移転を進めている」。広島県立総合技術研究所・食品工業技術センターの杉岡光副主任研究員は1月28、29日に東京ビッグサイト(東京・有明)で開かれた高齢者食・介護食の専門展示会「メディケアフーズ展」でブースを訪れた来場者にこう呼びかけていた。   同センターが開発した「凍結含侵法」を広めるためだ。酵素の力を使って食材を軟らかくする同法の技術移転を始めたのが06年。翌年には三島食品(広島市)がレトルト食品を最初に商品化。今では51社が契約し、17社が生産・販売している。   同展に参加した北洋本多フーズ(広島県尾道市)もその一つ。商品化した冷凍食品は軟化した肉、魚、野菜を素材だけでなく主菜、副菜としても提供できる総合力がウリだ。本多隆士社長は「昨年はメニューが少なく、販売ルートも限定していたが、今年は量産化して幅広く対応する。早期に売り上げを5億~10億円に持っていきたい」と意欲的だ。   「完全離陸はこれから」とサンプル出荷に取り組んでいるのが宮崎商会(同福山市)。宮崎圭師社長は「当面は軟化素材を2次加工業者に出す予定。最終的には病院や介護施設、通販に乗り出したい。食肉加工の専門家として得意の肉で勝負する」と意気込む。   認知度向上と低価格化が課題   4人に1人が65歳以上という高齢社会を迎え介護食品への需要は間違いなく増え、食品業界にとって数少ない成長市場として関心が集まる。   介護食品の硬さや粘度などの統一規格を制定し適合商品を「ユニバーサルデザインフード」と認定している日本介護食品協議会によると、13年の適合商品の生産金額は134億8100万円で前年比24.5%増。14年5月末の製品登録数も1200品目に達し、増加傾向が加速している。加盟企業が増えていることもあるが、14年も生産金額は同20%程度伸びたとみている。農水省は、市販の介護食品の市場規模は約1000億円、潜在的なニーズは2.8兆円と試算する。   だが市場拡大も手放しで喜んでいられない。イーエヌ大塚の北村氏は「まだ認知されていない。展示会で紹介すると『知っていたら使っていたのに』といわれる」と嘆く。同協議会の藤崎亨事務局長は「介護食品は必要不可欠で市場は拡大しているが、在宅介護者など市販用の利用者を正確につかんでいない。情報発信してもターゲット層に届いていない」と指摘する。身の回りに要介護者がいないと情報発信しても必要な情報と受け止められないからだ。   認知度を高めるには試食が早道だ。「あいーと」をウエストケアセンターに紹介したアイセルネットワークス(東京都千代田区)の最知浩一課長は「導入施設を増やすには試食しかない。試食すると使いたくなる」と自信を見せる。   一方で「食事代は入所者からの給食費で賄っているので、高価な介護食品は使いたくても使えないといわれる」とため息をつく。常食の数倍という価格がネックとなっている。ウエストケアセンターの蔵方氏は「試食して使ってみようと思ったが、コストが問題だった」という。主菜のみ「あいーと」に切り替えたのもそのためだ。ただ「しっかり食べるようになり元気になった。お金はかかるが、施設が負担して提供する」と言い切る。その上で「普及して安くなれば全員に提供できる」と低価格化を期待する。(松岡健夫)

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