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人民元、企業に期待と不安 VWは決済持ちかけ…“日本侵食”は時間の問題
2015年12月2日 水曜日

元の“足音”はひたひたと企業にも迫っている。
「国内の自動車部品メーカーが独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)から元決済を持ちかけられている」 今春、日本のあるメガバンクに驚くべき情報が飛び込んできた。 VWは既に中国から遠く離れた欧州域内で、部品メーカーとの決済通貨をユーロから元に切り替え始めた。 VWは今年上期(1~6月)の販売台数で、トヨタ自動車を抜き世界首位に躍り出たが、その原動力は巨大市場の中国。10月には排ガス不正で日米欧の販売が急失速する中、他社に先駆けて進出した中国では政府からの支援もあって、前年同月比プラスを確保した。 VWは中国国内で手に入れた大量の元を欧州でユーロに両替すると手数料が掛かり、為替差損益に一喜一憂してしまう。このため、「元をそのまま部品メーカーへの支払いに回すことができれば都合がいい」(邦銀担当者)と判断したようだ。ある証券系エコノミストは「VWによる元の“日本侵食”も時間の問題」と予想する。
商品人気に陰り
一方、日系自動車大手と系列部品メーカーも中国とタイの現地法人同士では、既に元による貿易決済を始めている。元を共用通貨にすれば、互いに為替リスクを気にせずに済むからだ。 実需の広がりを背景に、日本の3メガバンクは「邦銀初」「外銀初」の元決済サービスを次々と打ち出し、顧客を囲い込もうとしている。 三菱東京UFJ銀行は6月、国内で初めて元建て債券を発行するなど元の調達手段を多様化。谷徹雄・東アジア企画部副部長は「いったん出遅れれば顧客を奪われてしまう。元決済ビジネスをやるリスクより、やらないリスクの方が大きい」と打ち明ける。これに対し、個人向けの元建て資産人気には陰りもみられる。
損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントは2011年7月に元建て債券ファンドを発売。「どんどん元高になる」との期待感から、ピーク時(12年初頭)の運用残高は20億円を超えたが、現在は約6億円にとどまる。 元は昨年、景気の失速懸念から対ドルで5年ぶりに下落に転じ、今夏には事実上の元切り下げが繰り返されたため「元建て商品のうまみがそれほど大きくなくなった」(担当者)という。 ある外資系証券エコノミストは「企業や個人が元取引にのめり込みすぎるのは危険」と警鐘を鳴らす。(藤原章裕)