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send 五輪目前に企業のアスリート採用増加 JOCアスナビ利用で100人実績

2016年3月7日 月曜日

  ecd1603070500001-p1   8月に開催されるリオデジャネイロ五輪を目前に、そして2020年の東京五輪を見据え、スポーツ選手を“社員”として雇用することで支援に乗り出す企業が増えてきた。日本オリンピック委員会(JOC)の就職支援制度「アスナビ」を利用した入社決定の実績が72社・団体の計100人に到達。選手にとっては活動資金確保へ希望が膨らむとともに引退後の生活設計も描ける。企業にとっても実業団チームを持つほどコストをかけずに支援でき、さまざまな効果が期待できるだけに、さらに広がりを見せそうだ。   責任感強く意欲的   「世界のトップレベルで鍛えられてきただけに、芯がしっかりしている。責任感が強く成長意欲も高い」   来年春の新卒就職活動が本格化する中、東海東京証券などを傘下に持つ東海東京フィナンシャル・ホールディングスの人事企画部に所属し、説明会で学生と向き合う桜井美馬さん(26)。採用活動のキーパーソンとして活躍する桜井さんについて、東海東京証券の林雅則常務執行役員は目を細める。  

桜井さんは、元ショートトラックの選手。早稲田大学を卒業した後、アスナビを通じて13年4月に契約社員として採用された。同社の支援を受けて選手活動を続け、14年のソチ五輪に出場。15年の引退後、正社員となった。

  コスト削減で実業団チームが減る中、種目にもよるが、学校を卒業した選手が活動資金を確保するのは難しい。競技一筋の桜井さんも、大卒後の進路に不安を持っていたところ、アスナビを通じて就職が決まった。林常務は「既にバンクーバー五輪に出場し、国内トップクラスの選手」と実績を高く評価していたが、最も大きな決め手は「会った瞬間に明るい笑顔で、素直さが感じられた」という人柄だったという。   入社後は月1回出社して活動報告をするほか、競技に専念し、ときどき社内研修や顧客向けの講演をしてもらった。その間、大会での実績を積み重ね、2度目の五輪出場も果たした。   同社にとって大きなプラスの効果があった。桜井さんは同社の所属選手として新聞、テレビなど各媒体で社名を広め、「億単位の経済効果がある」と大手広告代理店から非公式に指摘されたこともある。  

社員のモチベーションアップにもつながった。大会の現地に応援団を派遣し、社内ではパブリックビューイングを設置。寄せ書きを作るなど、一人一人が仲間として声援を届け、社員の一体感醸成にも一役買った。

「現役時代に助けてもらった。今後会社に貢献したい」。桜井さんは、正社員となった現在もよくそう話すという。顧客に対して金融商品を勧誘できる外務員の資格も取得するなど意欲的だ。   他の社員の刺激に   同社では桜井さんの前に、近代五種の黒須成美選手を12年に採用し、今も現役を続けている。林常務は「今後もアスリート採用を続けていく。前向きにチャレンジする姿勢は社員にとっても刺激になるので、引退後も働き続けてもらいたい」と話している。 アスナビはトップ選手の支援、雇用を目的として10年にスタート。JOCが企業と選手の橋渡し役を担う。11、12年は5人ずつと少なかったが、五輪で活躍する選手などが出て採用が増加。15年は30人を超え、今年も既に20人超だ。今月3日、ビーチバレー女子の鈴木千代選手(22)がIT関連企業のクロス・ヘッドに4月1日付で入社することが決まり、累計で100人となった。  

パラリンピックを目指す選手への注目度も高まっている。14年にJOCと日本パラリンピック委員会(JPC)が協定を結び、障害者選手の雇用も促進。アスナビで採用された100人のうち15人がパラアスリートだ。

  イベントの設営・運営などを手掛ける乃村工藝社は14年にパワーリフティングの西崎哲男選手を契約社員として採用した。同社では東京五輪開催決定を機に、新たにスポーツ市場へ進出する方針を決めるとともにアスリート採用を計画。障害者の法定雇用率の引き上げもあり、パラアスリートに注目した。   成果は早速表れている。スポーツ関連団体の間で知名度が上がり、パラ・パワーリフティング協会から大会会場設営の依頼が来るようになった。また障害者雇用に関心の高い会社が、先進的な事例として視察に来ることもあるという。   アスナビを担当するJOCキャリアアカデミー事業ディレクターの八田茂さんは「アスナビがなければ3分の2の選手は競技が続けられず引退していただろう」と語る。  

一方で、56年ぶりの日本での開催となる東京五輪・パラリンピックに向け、企業側には何らかの形で関わりたいという機運が高まっている。スポンサーになるには億単位の資金が必要だがアスナビを活用した社員としての採用であれば、給与と競技活動費によって年間数百万円からの負担で済む。広告効果や企業の認知度向上のほか、応援する社員の一体感醸成という効果は、コストを大幅に上回る可能性もある。

  企業と選手のウィンウィンの関係がさらに広がれば、東京五輪の獲得メダルの増加にもつながるだろう。(佐竹一秀)

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