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send 事業 巨大電波望遠鏡「アルマ」 生命の起源探求

2015年2月25日 水曜日

bsc1502250500005-p1   【世界へ 日本テクノロジー】三菱電機の宇宙事業(3)   ■巨大電波望遠鏡「アルマ」   ■生命の起源探求 ゆがみ抑制   宇宙の謎に迫ることは、生命の起源を知ることにつながり、人類がどこからやってきたのかを把握する手がかりにもなる。大型望遠鏡は、そうした宇宙の謎に迫る上で不可欠な存在。その性能は日増しに向上している。三菱電機は、人工衛星以外にも、最新型の大型望遠鏡を手がけ、科学の発展をサポートしてきた。   予算の制約克服   標高5000メートルを超えるチリ北部のアタカマ砂漠。標高が高いだけに、空気が澄んでいて、空の青さがひときわ濃い。一方で空気は極めて薄く、息切れしやすいうえ、晴天率が高く、直射日光も強いので、つねにサングラスをかけていないと目にダメージを受けてしまう。   このアタカマ砂漠の一角に、巨大なお椀(わん)形のパラボラアンテナが66台も設置されている。配置の仕方によっては全体で直径18.5キロメートルと、東京の山手線内に匹敵する広さになる。世界最大の電波望遠鏡として知られる「ALMA(アルマ)」だ。   正式名称は「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」。英語の頭文字をとって、アルマと呼ばれるようになった。アルマという言葉には、スペイン語で魂という意味もあるという。   日米欧などが参加する国際プロジェクトとして2002年に建設がスタート。13年3月に本格運用が始まり、昨年6月には全66台がそろった。総事業費は約1000億円で、日本はその4分の1を負担している。   アルマは、天体の発するミリ波(波長1~10ミリ)やサブミリ波(0.1~1ミリ)の短い波長の電波をアンテナでとらえ、観測を行う。解像度は“人間の視力”にすると最大6000に達し、東京から大阪の一円玉が識別できるほどという。   このため、存在が推測されるが観測が非常に困難とされる暗黒物質などを観測し、星や惑星が誕生する過程を知る上で威力を発揮すると期待されている。有機分子の観測にも適していて、生まれたばかりの「赤ちゃん星」の周囲で生命につながる化合物「グリコールアルデヒド」を発見するなど、すでにいくつかの重要な成果を上げている。   アルマを構成する66台のアンテナのうち、日本は16台を担当している。内訳は主鏡の口径が12メートルのアンテナが4台、7メートルが12台。これらのすべてを三菱電機が製造した。同社は過去に、ハワイ島のマウナケア山頂にある反射式望遠鏡「すばる」や、野辺山宇宙電波観測所(長野県南牧村)の電波望遠鏡など、数々の重要プロジェクトを手がけた実績がある。   「でも今回は過去に直面したことがない難題が待ち受けていた」。プロジェクトを指揮したインフラ情報システム部の大島丈治望遠鏡プロジェクト部長はそう振り返る。   むしろ大変だったのは、小さいアンテナの方だった。なぜなら、骨組みの素材に鉄を採用しているからだ。   ふつう、サブミリ波をとらえる電波望遠鏡には鉄の骨組みを使わない。鉄は温度変化などに弱く、ゆがみやすいからだ。ゆがめばそれだけ観測精度は落ちる。このため、欧米のアンテナや口径12メートルのアンテナは、軽くて強度に優れ、かつゆがみにくい炭素繊維強化プラスチックを用いている。7メートルのアンテナだけ鉄を採用したのは、予算の制約があったからだ。   許容範囲は20マイクロメートル   高い観測精度を保つため、主鏡はお椀の放物面を一定に保つ必要がある。ゆがみの許容範囲は髪の毛のわずか4分の1本分、20マイクロメートルにすぎない。   鉄にすることを知った欧米の関係者からは「技術的に難しすぎる」と異口同音に指摘されたという。   インフラ情報システム部の川口昇主管技師長も「気温の変化が大きく、直射日光や強風にもさらされるアタカマ砂漠は、環境が厳しい分だけ、理想の鏡面を維持しにくい」と難しさを認める。   だが、三菱電機はあきらめなかった。   主鏡のお椀は、内側にアルミ製の鏡を200枚ほど並べてある。それらの鏡で電波を反射させ、一点に収束させることで観測する仕組みだ。   同社は鏡の一部分だけ日光が当たったりしても、全体の温度を均一に保てるようにすればいいと考えた。そこで、鏡を支える骨組みをパイプにして、中に秒速4~12メートル以上の強い風を流すことにした。こうした工夫で、主鏡の精度は髪の毛の4分の1本どころか、5分の1本以内に抑えることができた。   大島プロジェクト部長は「欧米の人々には神業だ!と驚かれた」と、してやったりの表情を浮かべる。   bsc1502250500005-p2   原動力は使命感 技術で妥協しない   日本のアンテナは、骨組みだけでなく、マウントと呼ぶ架台も鉄製だ。架台が温度変化などでゆがめば、やはりアンテナを特定の星に向ける際に不都合を生じかねない。   ここでも同社は、架台が自らどのくらい動いたかをセンサーで測り、位置を補正する手法を開発し、難題を克服している。   一方、設置方法でも同社は独自の道を探った。   欧米のアンテナは、標高2900メートルの山麓にあるサポート施設に工場を設けて製造された。これに対し、同社は日本の工場で大半を製造し、船で45日間かけてチリまで運んだ。   運んだアンテナは3分割した完成形に近い状態。大島プロジェクト部長は「おかげで現地での組み立てが楽だった。かつて離島で衛星通信アンテナを組んだ経験が生きた」と強調する。対照的に、欧米勢は過酷な環境下で多くの作業を強いられ苦労したという。   日本側のプロジェクトはなかなか国会承認を得られず、スタートが2年遅れたが、結局は一番乗りを果たした。   本格運用が始まった現在も含め「限られた予算の中で知恵を絞り、厳しい要求に直面するたびに『もう限界!』と悲鳴を上げながら乗り越えている」(大島プロジェクト部長)。   三菱電機には、早くも次のプロジェクトが待ち受けている。直径8.2メートルの反射式望遠鏡「すばる」のすぐそばに建設される口径30メートルの次世代超大型望遠鏡「TMT」だ。TMTの集光能力は「すばる」の13倍。昨年10月に起工式を終えており、予定通り建設が進めば2021年には完成するはずだ。   さらに、アルマの拡張も検討されている。   「続けられている原動力は使命感だと思う。国を背負っている以上、技術では妥協しない。日本代表のつもり」。川口主管技師長はそう力を込める。(井田通人)

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