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send 世界でも珍しい「ボートシェア」が人気、カーシェア成長のヒントになるか

2018年5月28日 月曜日

規制緩和の遅れもあり、民泊やライドシェア(相乗り)などシェアリングサービスの“後進国”と揶揄(やゆ)される日本で、世界でも大規模なサービスは珍しいボートのシェアリングが会員数を順調に伸ばしている。一定時間、新型の船を借りられ、クルージングや釣りなどを楽しめるもので、ボートの購入にまで踏み切れない顧客に体験してもらう取り組み。自動車の「保有」から「利用」へという流れも出てくる中、ファンの裾野を着実に広げているボートシェアの現状は示唆に富んでいる。(高橋寛次)

  免許取得に環境整備 ヤマハ発動機は二輪車で培ったエンジンの技術を応用し、船外機やボートの製造・販売に力を入れている。その一環として始めたボートシェアの名称は「シースタイル」。全国140カ所、海外2カ所のマリーナ(港)でボートを借りられる。会員数は11年連続で増えており、2017年は約2万2000人。 会員を増やしている背景には、一般の消費者にとって手が届かないボートを使ったレジャーを、手軽に楽しめるように工夫していることがある。ボートを購入し、どこかのマリーナに係留しておくというのは、よほどのボート好きか、富裕層でなければ踏み切りにくい。しかし、シェアリングでの利用であればハードルは一気に下がる。

ボートの操縦には小型船舶2級などの免許が必要だが、費用は10万円弱、必要な期間は3日程度と、自動車の免許と比べて取得しやすいという。

また、ヤマハ発はインターネットで学科講習を受けられるシステムを開発。4人以上の受講者がいる場合は講師が出張してくれるなど、免許を取得しやすい環境の整備を進めている。 同社でシースタイルの構想が生まれた頃、社内では「シェアサービスを始めれば、ボートが売れなくなってしまう」という反対意見があったという。しかし、ボートや水上バイク、船外機の販売を含めたヤマハ発のマリン事業は好調に推移している。17年12月期の同事業の売上高は、前期比9%増の3238億円。本業の稼ぐ力を示す営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)は18.4%と高水準だ。

新たに導入した「SR320FB」(手前)。シェアリングサービス「シースタイル」では、約20種類のボートを貸し出している=東京都品川区

シースタイルの年間の利用者数は約7万7000人と会員数の3.5倍。会員が友人らを連れてボートを一緒に楽しむためで、常に新しいファンを掘り起こせる仕組みだ。当然、口コミや会員制交流サイト(SNS)を通しても潜在的な会員を増やすことができる。 シースタイルの成功例は、都市部で動き出したカーシェアビジネスの可能性も連想させる。ボートと自動車は普及の度合いを含め、さまざまな点で事情は異なるが、シースタイルの利点にみるシェアサービスの潜在性を検証してみた。

シースタイルのボートシェアであれば、最新のボートを操縦・乗船体験できるのが魅力だ。今夏、新たに導入されるクルーザー「SR320FB」(定員12人)は250馬力の船外機を2基積んでおり、価格は約3000万円と超高級車並みだ。ボートシェアでなければ、普通のサラリーマンは手を出せないだろう。

  SNS投稿後押し また、ボートを借りるのは、遊覧や釣りを楽しむ人が多いが、最近では、陸側からは見られない風景の写真を撮影するために利用する人も増えたという。SNSへの投稿などが目的とみられる。 さまざまな海域でボートを楽しめるのもメリットだ。ヤマハ発のPR動画では、「山中湖」(山梨県)、「東尋坊」(福井県)、「天橋立」(京都府)、「大阪湾」(大阪府、兵庫県、和歌山県)、「宮島」(広島県)などを紹介。ボートを保有していても、係留しているマリーナ以外の海域で楽しむには陸送など、費用や手間がかかってしまう。シースタイルならハワイとタイのマリーナも利用可能だ。     ■「乗って楽しい車」前面に顧客開拓を 運営手法もおもしろい。ヤマハ発は全体企画に徹し、運営そのものは各マリーナに委託しているという。ボートファンを増やしたいマリーナはこの仕組みを大いに利用する。そのことが、シースタイル全体の会員数や利用回数の増加をもたらしている。

入会金は2万1600円、会費は月3240円。ボートを借りると別途、利用料(SR320FBは平日3時間8万5000円から)がかかる。ただ、友人らを誘い、料金を分担すれば、1人当たりの負担を抑えられるという。今年に入り、法人会員の募集も始めた。社員の余暇や福利厚生の充実、取引先との交流活性化などが期待できるとアピールしている。

神戸市が電気自動車を使って実施した「乗り捨て型カーシェアリングサービス」の実証実験=2015年、神戸市中央区

一方、免許保有者に占めるカーシェア利用者数はまだ1%程度。レンタカーと比べて認知度も低い。現在は実用的な移動手段として借りる人が多いが、最新の車種や高級外車(輸入車)が借りられるなど乗ること自体を目的とする流れをつくれば、新たな利用者を開拓できる可能性もありそうだ。借りた場所以外で返却できれば利便性は高まる。 日産自動車は電気自動車(EV)などのカーシェアに力を入れており、トヨタ自動車も東京都内の販売会社4社を統合し、試乗車などを利用して参入する。 利用へのハードルをあの手この手で下げるなどヤマハ発の取り組みは、カーシェアを含むさまざまなシェアリングサービスの参考になるかもしれない。

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