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send 三菱商事の人材育成力に脚光 多くの企業に経営トップ輩出、ラブコール続々

2015年1月19日 月曜日

bsd1501190500003-p2 三菱商事本店が入る三菱商事ビルディング=東京・丸の内   生え抜きではない外部の人材を登用する動きが産業界で加速する中、多くの企業に経営トップを送り込んでいる三菱商事の「人材育成力」が脚光を浴びている。同社出身でローソン前社長の新浪剛史氏を資本関係のないサントリーホールディングス(HD)が社長に招聘(しょうへい)。日本最大の食品スーパーチェーン、ライフコーポレーションの清水信次会長は仕事で知り合った三菱商事の社員にほれ込み、トップに迎え入れたいと申し出たほどだ。「40歳前後で経営を任せられる」ことを目標に、人材育成に取り組んできた成果といえ、同社には人材を求めるラブコールが相次いでいる。   ライフなどへ輩出   bsd1501190500003-p1   2006年にライフコーポレーションの社長に就いた岩崎高治氏は、同社を一代で築いた清水氏が三菱商事首脳に直談判して招き入れた経緯がある。   清水氏と岩崎氏の出会いは1994年にさかのぼる。当時20代後半だった岩崎氏は、三菱商事から子会社の英食品メーカー、プリンセスに出向し、冷静な決断や粘り強い交渉力が求められる企業買収のプロジェクトに奔走していた。英国視察でリバプールを訪れた清水氏は、若いながらも英国の流通業界に精通する岩崎氏にほれこむ。岩崎氏は99年に取締役として同社に迎え入れられた。   岩崎氏の経営哲学の一つが「経営リスクをどこまで減らせるか」。原点は三菱商事で最初の配属先だった果汁チームでの失敗にある。大手飲料メーカーから依頼された炭酸飲料の桃果汁の原料調達を任され、その夏に大ヒットとなった商品の舞台裏を支えた。その勢いに乗じて翌年分の原料をいち早く調達したが、翌年は売れ行きが止まり膨大な在庫をかかえた。   それでも上司は、岩崎氏を次の修業先のプリンセスへと送り出した。「そのときの反省と若い自分に仕事を任せてくれた上司への感謝の念が、英国での企業買収の仕事でリスクをいかに減らすかといった工夫につながった」と岩崎氏は振り返る。修羅場の経験が現在のリーダーシップを育んだに違いない。   小売りや食品業界などで外部人材の登用が目立つのは、思い切った海外戦略や新たなビジネスモデルに踏み込まないと、急速に合従連衡が進む業界内で生き残れないとの危機感が背景にあり、後継者難も重なる。若い頃から財務や企業統治のイロハをたたき込まれる商社マンを経営トップに迎えることで、組織の強化や経営の変革を図る狙いもあるようだ。   三菱商事の連結子会社で福祉用具のレンタル卸を展開する日本ケアサプライの社長、金子博臣氏は全国行脚を信条とし、全国89カ所の営業所で1泊して営業担当社員らと意見を交わす。   派遣社員も入れると社員数は700人近くにのぼるが、営業所は5~10人規模の小所帯で8割は地元出身。それだけに「社員のモチベーションをいかにして上げるかが、経営者の最大の仕事」と考え、膝詰めで悩み事の相談に応じることもある。   信条の出発点は、20代後半にアフリカに赴任した三菱商事のザンビア事務所長時代の経験だ。日本人1人以外は現地スタッフという環境の中、それまではあまり意識しなかった本社とのやりとりの重要性に気付いた。「大変だけど頑張って」という励ましもあれば、「そんなこともできないのか」と上から目線の言葉もある。逆の立場に立った今、このときの思いが「やる気になるメッセージの出し方や部下への接し方につながっている」という。   8年目までに海外 三菱商事が経営を担う人材の育成に力を入れる背景には、同社の収益構造がこの10年で貿易から事業投資へと大きく変化したことがある。かつてはメーカーの輸出代行で手数料を稼ぐのが仕事の中心だったが、メーカーの海外進出で出番は減った。このため資源開発や海外事業への投資を積極的に進め、いまや約600社に及ぶ連結子会社の収益や配当収入が三菱商事の屋台骨を支えるようになった。   日本ケンタッキー・フライド・チキンを傘下に持つ日本KFCホールディングスや日本ケアサプライなど連結子会社のトップを送り出すのはもちろん、小売りや食品を担当する生活産業グループには資本関係のない企業からも、後継者となる人材を送ってほしいという要請が増えている。   「資金だけではなく人も送り込み、経営を支えるのが投資銀行との最大の違い」。同社の小林健社長は投資銀行と一線を画すのは「人財」だと断言する。   三菱商事グループの経営人材育成プログラムでは、最初の5年は取引実務やチーム力に加えて「人間力」をたたき込む。次の5年間は経営人材の概念を教え、10年目以降は社外への出向などで実践を積む。生活産業グループ最高経営責任者(CEO)オフィス室長の小川広通氏によると「30代後半から40代前半で、どこの会社でも経営を任せられる」ように育て上げるのが目標という。   全社を挙げての研修も重要だ。入社8年目までに全員を海外の拠点などに送り出すほか、日本人と外国人の幹部候補生を集めた合同研修もビジネススクールと提携して行っている。   人材育成のポイントについて、日本ケアサプライの金子氏は「経営学や財務諸表の知識よりも、利害が一致しない板挟みの状況で鍛えられていく実務の現場」と話す。利害が異なる相手との交渉を通じ、信頼関係を保ちながら落としどころを探る工夫が自然に身につくという。   経営力を持つ人材の育成は、グローバル競争での勝ち残りが問われる日本企業にとって、喫緊の課題の一つ。三菱商事の取り組みが中長期的に「日本の力」を高めることにつながるとの期待も大きい。(上原すみ子)

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