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ロボットに込めたホンダ精神 技術は人のために…事業化第1弾「歩行アシスト」
2015年8月28日 金曜日




少し歩くと担当者から「左より右の歩幅が少し広いですね」と、付属のタブレット端末を示された。モーター内蔵のセンサーが、歩幅や速度などを計測。障害のある足をかばうなど不自然な歩き方を矯正する機能も備えているという。
脳疾患や神経疾患、人工股関節を使う患者のリハビリへの使用を想定。3年契約のリースは1台月4万8600円で、今年度は国内の病院やリハビリ施設向けに450台の契約を計画する。ホンダの五十嵐雅行取締役は「一人でも多くの方に自らの力で歩く喜びを取り戻してもらいたい」と語る。 ホンダのロボット開発の歴史は長い。86年に子会社の本田技術研究所にある基礎技術研究センター(埼玉県和光市)が研究テーマに、小型ジェット機などと並び「ロボット」を選定。「新しいモビリティ(移動性)」を目指し、二足歩行の原理の研究がスタートした。 だが、最初のロボット「E0」は1歩に約15秒を要し、2本の足のみの姿は現在の人型にはほど遠いものだった。そのため、人間だけでなく動物も含めてあらゆる歩行を観察し、関節の配置や動きを調査。91年には自然な歩行につながる基本機能を搭載し、2年後までに階段の上り下りができるまでに進化した。93年に誕生した2本の腕が付いた人型ロボットの第1号機「P1」は、ものをつかんで運ぶ機能を追加。ただ、身長191センチ、重さ175キロと大型で、電源や制御コンピューターが外置きと実用にはほど遠かった。
21世紀に入ると、一般的な生活空間で使用することを前提としたアシモの開発がスタートした。これまでの開発でアシモは時速9キロで走り、片足ジャンプもできるまでに進化。さらに、水筒の蓋を開けて水をコップに注いだり、人にぶつからないように歩いたりと知的能力も進化している。 高所調査や移動手段 一方で、ロボット技術の研究が、歩行アシストなどの派生製品として広がっている。例えば、2013年に実証実験を始めた「高所調査用ロボット」は、東京電力福島第1原子力発電所で、建屋内の高所で狭い場所などの構造把握に活用されている。また、空港などでの使用を想定する1人乗りの新型電動車両「UNI-CUB(ユニカブ)」など新たな“移動”手段も提案している。その中で、事業化の第1弾となる歩行アシストは、比較的地味な印象が強い製品だ。だが、脳疾患や神経疾患、人工股関節のリハビリ需要は国内で約40万人。加えて「約3000万人の高齢者の介護予防まで使用が広がれば需要は大きい」(開発担当者)。6月に就任したホンダの八郷隆弘社長も「着実に実績をつくりたい」と将来を見据える。
ホンダが地道に開発を続ける中、国内ではソフトバンクが6月に人型の自律移動型ロボット「ペッパー」の一般販売を始めた。トヨタ自動車も開発に取り組むなど競合の攻勢は激しい。30年来の研究を生かし、ホンダが市場の主導権を握ることができるか。第1弾となる歩行アシストの“歩み”が成否を左右する。(会田聡)