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send ヤマト“捨て身”の問題提起 メール便廃止…終わらない「30年戦争」

2015年2月16日 月曜日

bsd1502160500002-p1   ヤマト運輸が、宅配便の配送網を活用してダイレクトメールやカタログなどを運ぶ「クロネコメール便」を3月末に廃止する。手紙などの「信書」をメール便で送った顧客が郵便法違反に問われるケースが相次いでいるためだ。取扱数が年間20億冊を超える人気のサービスにもかかわらず、同社が撤退の判断に踏み切った背景には、監督官庁とヤマトとの間で30年間にわたって繰り広げられてきた確執の歴史がある。   bsd1502160500002-p2   「信書」の定義曖昧 1月22日の夕方、国土交通省5階の記者会見場にヤマト運輸の山内雅喜社長が姿を見せた。発表内容は新商品としか予告されておらず、配布資料のタイトルに「クロネコメール便の廃止について」とあるのを見て、報道各社の記者に驚きが走った。トップの出席も想定外だ。   山内氏は言葉を選びながら語った。「信書の定義や範囲が曖昧で、お客さまが容疑者になるリスクを放置できない」   ヤマトのメール便は1997年に法人向けサービスをスタートし、2004年には個人向けにも拡大した。A4サイズの荷物を郵便受けに投函(とうかん)するサービスで、厚さ1センチまでなら82円、2センチまでなら164円と、荷物などを扱う同社の宅急便よりも割安。主に法人がダイレクトメールなどを発送する際に使われ、最近はインターネットオークションや通信販売の商品発送でも利用されている。   13年度のヤマトの取扱数量は20億8220万冊、売上高は1200億円に上り、日本郵政グループの「ゆうメール」と市場を二分している。   だが、メール便は大きな問題を抱えていた。手紙やはがきなどのいわゆる「信書」を同封すると郵便法違反となり、3年以下の懲役か300万円以下の罰金に問われる可能性があるのだ。ヤマトに限っても09年7月以降にメール便で信書を送り、郵便法違反の疑いで書類送検されたり、事情聴取されたりしたケースが8件に上っている。   「信書を同封しなければ問題にならない」とはいえ、山内氏も指摘するように信書の定義が曖昧なため、郵便法違反の懸念は解消できないのが現状だ。   信書は郵便法と信書便法で「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と定められているものの、これでは具体的ではない。このため総務省はガイドラインで、手紙や領収書、見積書、願書、結婚式の招待状、表彰状、戸籍謄本などの証明書類を「信書」として例示。「非信書」としては新聞や雑誌、カタログ、パンフレット、小切手類、クレジットカード類、航空券などを例示している。   さらに分かりにくいのが、荷物につける「添え状」。例えば、地方に住む母親が都会に住む子供にコメやミカンを送る場合、同封する文書は「元気にやっていますか。たまには帰っておいで」などのあいさつ程度なら信書に該当しない。しかし「近所のAさん方の息子さんが結婚する」などと荷物に関係のない文章が記されていると「手紙」とみなされ、信書の扱いになるという。   総務省は「信書か否か」に答える相談窓口を設けているが、ヤマトは「『相談窓口』を設置すること自体が、判断が困難なことを示している」と批判する。ヤマトの調査では、何が信書に当たるかを理解していた利用者は23.0%、メール便で信書を送ると罰則を受ける可能性があると知っていた顧客は3.8%にとどまったという。   もっとも、信書は民間の業者でも扱うことはできる。このうちバイク便をはじめとした「特定信書」の分野には430社を超える業者が参入した。だが、手紙などの「一般信書」は10万カ所のポスト設置や低廉な料金の維持など全国一律のサービスの提供が義務付けられ、大きなコストがかかる。そのため参入企業が現れず、日本郵便の事実上の市場独占が続いている。   「信書リスク」に対し、ヤマトも一定の対応策はとってきた。顧客に信書を同封していないかを確認し、署名してもらうなど荷受け方法を厳格化。さらに、信書という概念そのものをなくすように訴え続けた。   誰もが見た目で信書かどうかを判断できるようにするため、13年12月には総務省の情報通信審議会に対し、中身ではなく大きさで判断する「外形基準」を導入する規制改革を提言した。しかし、昨秋取りまとめられた規制緩和案にはヤマトの主張が反映されることはなかった。   「このような状況が続くべきではない。年内にも日本郵政が上場し、自由競争が行われる中で、信書のあり方を今一度きちんと議論する必要がある」   山内氏は1月22日の会見でこう語った。いらだちだけでなく、あえてサービスを中止することで、変わらない規制の分厚い壁をめぐり、問題提起をする狙いも見え隠れする。   外形基準導入は困難   一方、総務省は「外形基準」の導入について「憲法が保障する『通信の秘密』を守る対象をサイズだけで区別するのは困難だ」と反論。さらに「大きさで線引きすれば、小さな荷物が全て信書に変わり、規制緩和に逆行する」(同省幹部)と指摘する。過疎地や離島を含めた全国一律のサービスを維持する点からも、ヤマトの提案には「問題点が多い」との立場だ。   規制に守られてきた日本郵政の考えはどうか。西室泰三社長は1月28日の会見で、ヤマトのメール便廃止について「小口の個人向けサービスは手間がかかって採算が悪い。高収益分野に注力する『作戦の転換』だろう」と話し、あくまでビジネス上の判断だとの見方を示した。   ■受け継がれる規制改革のDNA   ヤマトは代替サービスとして、メール便の9割を占める法人向けに、内容物を事前に確認する新サービス「クロネコDM便」を4月に始める。サービス内容や価格はほぼ据え置く見通しだ。個人向けは、現在の宅急便に最小サイズを追加して対応する。こちらは現行サービスよりも料金は上がる見通しで、西室氏の指摘とも合致する。   もっとも「ヤマトは、このまま引き下がらないだろう」と観測する向きは少なくない。規制改革をめぐり、監督官庁と幾度も論争を続けてきた「DNA」があるからだ。元社長で「中興の祖」とされる小倉昌男氏は、自ら立ち上げた宅配便事業の路線免許取得をめぐって1986年に行政訴訟を起こし、免許獲得にこぎつけるなど「規制緩和の旗手」と呼ばれた。   規制をめぐるせめぎ合いは、消費者の利便性向上につながった面もある。山内氏は昨年12月、ヤマトホールディングス社長に自らが今年4月に昇格する人事を発表した会見でこう語っている。「小倉が作ってきたように、世の中が必要としているけれど、まだ世にないサービスを実現できる企業を目指したい」。「30年戦争」はまだ終わらない。(田端素央)  

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