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バングラ進出の日本企業が「復活の兆し」 治安不安も経済堅調、事業拡大を6割強検討
2017年10月30日 月曜日

日本貿易振興機構(ジェトロ)の昨年12月の調査では、バングラで事業拡大を検討する企業が66.7%と、ミャンマーやカンボジアなどに次ぐ5位となり、治安面で不安が残るにもかかわらずバングラでの事業拡大に多くの企業が関心を持っていることが裏付けられた。
日本政府は従来からバングラを重視している。一方のバングラも、脆弱(ぜいじゃく)なインフラ整備で日本の支援に期待をかけている。 今年8月に住友商事と東芝、IHIの3社連合がバングラ南東部で「超々臨界圧」と呼ばれる高効率の大型石炭火力発電所と関連港湾建設を同国石炭火力発電公社から約5000億円で一括受注した。恒常的な電力不足や電源の多様化に貢献する一大プロジェクトになる。また、三菱商事と川崎重工業もバングラで建設中の同国初の都市高速鉄道計画で、車両144両と車両基地設備など約400億円を受注した。首都ダッカの深刻な交通渋滞緩和につながる。今後も日本企業の受注が続くとみられる。 開発計画めじろ押し インフラ不足が経済のボトルネックになっている同国では、開発計画がめじろ押しだ。世界銀行は20年までの5年間にバングラで約46兆円のインフラ整備資金が必要と試算している。大手商社は「鉄道や通信、液化天然ガス(LNG)輸入基地など商機は大きい」(首脳)と期待している。 1人当たり国内総生産(GDP)は1600ドルを超えた。ジェトロの河野敬前ダッカ事務所長は「6年前のベトナムとほぼ同じレベルで、もはや最貧国ではない。親日国だけに現地ニーズにあったブランド戦略を構築すれば開拓余地は大きい」と解説する。バングラ市場で日本製品への信頼は厚く、走行する中古車のうち9割近くがトヨタ車だ。二輪車生産のホンダも市場に浸透している。ロート製薬のリップクリームや洗顔用品がブランド力を確立。YKKグループも工場増産を検討し、イセ食品は安心な鶏卵技術を提供するために現地企業と交渉を進めている。
ただ、現地に進出している日本企業にとって治安問題は依然として悩ましい問題だ。外務省は不要不急の渡航をしないよう呼びかける4段階中で3番目の危険度の渡航制限を続けている。各社とも警備増強や防弾ガラスなど対応策を整備するほか、外食や人の集まるショッピングセンターは敬遠され、駐在員はストレスのかかる生活を余儀なくされているのが実情だ。 一方、モノのインターネット(IoT)の普及に伴い、ハイテク関連の人材不足が深刻化している日本企業にとって見逃せないのが、同国の優秀な人材だ。バングラデシュ工科大学(BUET)などの優秀なIT人材は、米航空宇宙局(NASA)や米グーグル、最近では韓国のサムスン電子も加わり人材争奪戦を繰り広げているほどだ。 医師の人材派遣などを手掛けるリンクスタッフ(東京都港区)は今年12月にバングラで日本のIT関連企業向けに合同就職説明会を開催する。BUETやチッタゴン工科大学、ダッカ大学などの卒業予定者や既卒者を、人材不足に悩む日本のIT業界に仲介する計画だ。今後、人材の面でも日本とバングラの関係は重要度を増すことになりそうだ。(上原すみ子)