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send ハート変え誰でも快適な社会 企業のユニバーサルデザイン、ソフト面にも力

2015年9月28日 月曜日

  bsg1509280500002-p1   年齢や国籍、障害の有無に関係なく安全・安心で快適に過ごせるよう配慮したユニバーサルデザイン(UD)の環境整備が進む中、「ハードだけでなくハートも変える」ことに意欲的な企業が増えている。高齢化が進む日本では、障害者や高齢者への配慮が欠けると選ばれなくなることに気づいたからだ。こうした取り組みの重要性を指摘するのがミライロ(大阪市淀川区)。車椅子を利用する垣内俊哉社長は「2020年の東京五輪・パラリンピックを機に、ソフト面でのUD化が当たり前になる」と指摘。対応が向上すれば、社会的弱者の消費力を手に入れられるという。   bsg1509280500002-p2     ◆声掛けでバリア除去   「右に90度曲がります」「階段を下ります」。周囲の状況が分からない視覚障害者に健常者が寄り添って声を掛けていた。   8月5日、東京都千代田区の皇居外苑楠公レストハウス。垣内氏が代表理事を務める日本ユニバーサルマナー協会主催の検定を、国民公園協会皇居外苑の管理者ら40人が受験した。弱者の視点に立って適切に行動するための手法「ユニバーサルマナー」を習得するためで、交代で車椅子に乗ったり、アイマスクを着けたりして弱者を体験。一方で、声掛けや移動時などのサポート方法を学んだ。   皇居外苑には高齢者や障害者も多く訪れる。しかし一緒に来る介助者任せで、積極的に接することはなかった。対応するときも障害者ではなく介助者に声を掛けていた。  

同協会の岡本栄治業務本部長は「外苑に来たいのは障害者。アプローチする相手を間違えていた。今後は自然体でさりげなく声を掛け、万人が満足するサービスを心掛けたい」と話す。皇居前というブランド力を強みに外国人観光客も増えており、言葉や生活習慣の違いで困っていれば声を掛けていくという。

  ミライロはUDのハード(施設、製品、デザイン)とソフト(接客、マナー)の両面からコンサルティング事業を手掛ける。垣内氏は「高齢化先進国・日本を世界トップクラスのUD先進国にする」と、高さ106センチの車椅子目線から誰もが住みやすいまちづくりを目指す。そのために「ユニバーサルマナーにこだわる。当たり前に身につけるマナーにする」と意気込む。   この呼び掛けに応えたのが、ホテル業界で他社に先駆けてUDに取り組んできた京王プラザホテル(東京都新宿区)。1988年のリハビリテーション世界会議を機に、車椅子利用者など障害者を受け入れるためユニバーサルルームを用意。玄関やレストランの入り口の段差をなくしたり、スロープを設置したりしてハード面を整備していった。   ソフト面の充実にも着手。2013年に始まったユニバーサル検定は同年から毎年受験している。「障害者や高齢者には心のバリアがあり、とっさに声を掛けにくく躊躇(ちゅうちょ)してしまう。こうした接客上のマイナスを取り除く」(櫨山博文・人事部副部長)のが狙いだ。  

「専門知識を身に着けるよりまず声を掛ける」というユニバーサルマナーを知ってからは「何か手伝うことはありませんか」と声掛けを実践する。櫨山氏は「ハードの整備はお金がかかり、構造上無理なところもある。それを補うのがソフト。困っていると気づけば手伝う姿勢が身についた」と話す。

  効果はてきめん。口コミなどで「京王プラザはUD先進ホテル」とのブランドイメージが浸透。京王プラザを指名する弱者や外国人は少なくないという。   06年の「バリアフリー新法」など法改正が進む中で、客室50以上のホテルにユニバーサルルームの設置が義務付けられ、駅へのエレベーター導入も進む。車椅子利用者も気軽にショッピングや食事などに出掛けられるようになった。   外出が多くなれば消費機会も増えるため、企業にはビジネスチャンスとなる。国内のあるレジャー施設では年間約9万人の障害者が来場するが、多くは家族や友人など3、4人で来るため障害者には約30万人の動員力があるといえる。快適な飲食店ならリピート率も上がる。   ◆消費力つかむ配慮   日本を100人の村に例えると高齢者は25人、障害者は6人、ベビーカー利用者は2人。実に3人に1人がユニバーサルマナーを求めている。加えて20年に向けて、言葉のバリアを持つ訪日外国人が増える。  

日本のUD市場は大きく、ユニバーサルマナーを身につければ弱者の支持を失わずに済む。新たな販路拡大、顧客増加をもたらすためユニバーサルマナーの習得に企業も注力。検定で資格を取得した企業や学校、自治体などは約200。ホテルやレジャーなどサービス業が多いが、製造業や建設業などモノづくり企業も増えている。

  その中でいち早く参加したのが大和ハウス工業。社会貢献活動の一環としてグループで受験し、気づいたことをすぐに行動に移した。   例えば「車椅子のタイヤは2週間で空気が抜けてしまい、非常に危険」と教えられると、グループが運営するホームセンターの貸し出し用車椅子の空気圧を定期的に点検。車椅子ユーザーが楽に通行できるように通路幅を確保する商品展示を心掛けるようになった。「ハートが変わらないとハードも変えられない」と社員は意識的に動いている。   ■教育現場にも広がる「マナー」の輪   ユニバーサルマナーは次世代にも浸透しつつある。品川女子学院(東京都品川区)は今年から、ユニバーサルマナーを授業に取り入れた。2月には垣内氏が中等部・高等部の生徒約1000人を前に講演。2、3月には講義も行い、約200人が資格を取得した。   「トイレの鈴子さん」。今月19、20日開催の文化祭「白ばら祭」で、2年B組はユニバーサルトイレをテーマに発表した。TOTOなどへのインタビューをまとめた模造紙が壁一面に張られていた。性同一性障害などの総称「LGBT」を説明するものもあった。班長は「車椅子利用者も、目に見えない障害を持つ人も入れるトイレが増えるといい。(建設中の)新校舎には車椅子が簡単に入れる大きな多目的トイレを作ってほしいと校長先生に提案したい」と張り切る。  

品川女子がユニバーサルマナーに注目したのは、2020年の東京五輪・パラリンピック開催による外国人観光客の増加などを見据え、弱者の気持ちを理解し対応の仕方を身につけ、社会に貢献できる生徒を育てるためだ。これから毎年、新入生は受験することになり、20年には生徒全員がユニバーサルマナーの視点を持つようになる。

  B組の生徒は文化祭での発表に備え、8月に垣内氏と面談。「狭いので曲がれない」「ドアにぶつかる」といった車椅子体験談を話しながら垣内氏に理想のトイレなどについて質問していた。垣内氏は面談後、「(講義を)感受性豊かに受け止めて動いてくれた。ユニバーサルマナーが当たり前に根付くと期待できる」と語った。20年までには弱者への対応がマナーとして普及すると手応えを感じていた。(松岡健夫)

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