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send スポーツを誘客の起爆剤に 政府、マンガで成功事例紹介

2017年2月27日 月曜日

キャニオンズのキャニオニングツアーに参加した観光客。黄色のヘルメットはハリス氏

政府、マンガで成功事例紹介 外国人取り込みも

スポーツで観光客を呼び込み、地域経済の活性化を目指す自治体が増えている。一方で、スポーツ資源がなかったり、あっても活用の仕方が分からなかったりする地方も少なくない。担い手不足に悩むところもある。スポーツ庁は、スポーツで地域活性化に成功した12事例を誰にも分かりやすいマンガで紹介。各地域の取り組みをヒントに、そこでしか体験できない地域資源を生かしたスポーツイベントなどの創出と誘客を促す。訪日外国人需要も取り込む。制作したマンガは全国の中学・高校などに配布し、次代の担い手に地域活性化の重要性を訴え人材育成につなげる。 東京から関越自動車道で90分超、上越新幹線を使えば最速66分で到着する群馬県みなかみ町。谷川岳などの山々に囲まれ、利根川源流ならではの起伏に富んだ自然に抱かれた同町はスポーツ資源に恵まれ、アドベンチャーワールドが広がる。 冬のスキーから、春先は雪解け水がもたらす激流を大型ゴムボートで下るラフティングが楽しめ、水量が落ち着く夏は自分の体一つで渓谷を滑り降りる「キャニオニング」が堪能できる。このスリリングなアウトドアスポーツを持ち込んだのが、ニュージーランドからやってきたマイク・ハリス氏だ。 1995年春に同町を訪れたハリス氏は、豊かな自然環境にふれて「資源が魅力的。シーズンにあったスポーツが楽しめる」と一目ぼれ。しかし当時はバブル崩壊で温泉客・スキー客が減少し廃業する旅館が続出、町は元気を失っていた。 温泉とスキーに代わる資源をもちながら生かせない地元の人たちをみて、ハリス氏は持ち前のチャレンジ精神を発揮。「この豊かな自然にどうして気づかないのか」と立ち上がり、アウトドアスポーツを手がけるキャニオンズを設立した。 最初は地元観光業者と距離があったが、ビジネスとして成功を知った同業が相次ぎ進出。地元からも認められたハリス氏は同町観光協会の理事を務め、DMO(観光地域づくりを担う地元組織)で町を引っ張る。 今では30以上のアウトドアスポーツが楽しめる町として知られ、観光客が増加。外国人誘致にも成功し、2014年に1万人を突破、16年には2万3000人を超えた。外国人スタッフがそろうキャニオンズには、シンガポールやマレーシアなどアジア各国のインターナショナルスクールが訪れる。 同町観光商工課の小林勲係長は「休日はアウトドアを楽しむ若者でいっぱい。コンビニは列をなし、夏もにぎわう。町に人が増え、経済効果は大きい」と喜ぶ。その上で「アウトドア天国・みなかみを認知させる」と意気込む。  

次世代を意識、自治体にヒント

中高生配布「種まき」 ハリス氏の成功物語は地元・群馬県の桐生大短期大学部の学生によってマンガ化される。昨年9月に1泊2日でハリス氏を訪ね、初めてのキャニオニングを体験。泳げないという斎藤来美さんは「滝を滑り落ちた」と笑う。他の2人もワクワクドキドキしながら天然のウオータースライダー、滝つぼへのダイブなどに挑んだ。 こうした体験を踏まえ「消極的な女性が、何事にも前向きなハリス氏の話を聞き、キャニオニングに勇気を出して挑戦する」というストーリーでマンガを描く。同大学部の佐野広章講師は「学生たちはハリス氏のポジティブ思考に影響され、新しいことに挑む姿勢が向上した」と目を細める。 スポーツ庁が成功事例をマンガで紹介するのは、分かりやすく伝えられる力に期待したからだ。同庁の仙台光仁参事官は「読みやすいマンガで町おこし事例を中高生に紹介すれば『自分も将来携わりたい』となるかもしれない。その種まき」と説明する。制作を地元の大学生・専門学校生に任せ、中学・高校などに配布するのも地域の次代を担う若者を意識したからだ。 観光資源なくとも また、何をすればいいか分からない自治体に取り組みのヒントを与える狙いがある。仙台氏は「名所旧跡がなくてもスポーツで誘客できる。資源になると思えなかった崖や谷、岩がスポーツの場になる」と指摘する。冬の寒さが厳しい北海道網走市は「夏でも涼しい」と訴求。日本一と称賛される芝のグラウンドも整備して、ラグビー合宿の聖地に変えた。

一方で、資源に恵まれていないと嘆く地域にとって参考事例も選出。岩手県紫波(しわ)町は日本初のバレーボール専用体育館を整備し集客に成功。人口3万人の町に年90万人が訪れる。ターゲットの絞り込みが奏功した。

地域を引っ張るキーマンも欠かせない。マンガの主人公に仕立ててドキュメンタリー形式にしたのもそのためだ。大分県の国際車いすマラソン大会は、一人の医師の熱い思いで立ち上がった。 全12巻のマンガは、スポーツ振興や地域活性化の支援に積極的な日本生命保険とスズキが協賛し2万校に寄贈する。出版まで受け持つ大日本印刷は「学校だけの配布では地域の目に触れない。スポーツコンテンツを町のみんなで担いで町おこしにつなげる」(出版メディア事業部の若林尚樹本部長)ため、市販も視野に入れる。地元企業を巻き込んだプロモーション展開や外国人誘致を狙い英語版も出版したいという。 2020年東京五輪に向けスポーツへの関心は高まるばかりだ。多くの自治体が地域活性化の起爆剤になるスポーツに注目、マンガをきっかけに新たなスポーツツーリズムが生まれる可能性は高い。そのためには「自分の町の資源を知り、他と比べて差別化できるスポーツをブランドに高める必要がある」とハリス氏は指摘する。(松岡健夫)

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