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send シニア起業、新たな選択肢に 高齢社会に活力「定年・収入は自分次第」

2016年4月6日 水曜日

  bsl1604060500003-p1   定年前後に起業するシニア起業が増えている。生産年齢人口(15~64歳)がピーク時から1000万人以上も減り、65歳以上をどう活用するかが少子高齢社会の焦点だ。内閣府の調査でも、60歳以上の7割が企業の再雇用義務の上限である65歳以降も働くことを望んでおり、“定年”も収入も自分次第のシニア起業が新たな選択肢として注目されている。   社内ベテラン結束 「年をとった人から事業提案が出るのは珍しいな」   パソナグループでは昨年夏、役員全てが60歳前後という社内ベンチャーが立ち上がった。社内起業家の育成には積極的なパソナ。それでも60代からの提案は異例のことだったが、南部靖之代表には歓迎された。   「未開拓分野というのはもちろん、ベテランからのフレッシュな提案というのが良かったのでは」。こうして生まれた起業支援サービスの提案者の一人でパソナビズナイズ社長、総合商社出身の丹羽廣道氏(64)は、こう振り返る。   立ち上げメンバーは丹羽社長のほか、飲食業で経営経験の長い鈴木博之取締役(62)、IT担当の牧野純取締役(58)と、いずれもグループ内のベテラン社員だ。パソナグループに転身後は、退職後の再就職や独立を支援する事業を担当していた。  

パソナビズナイズは、この事業から派生。起業を目指す人に顧客開拓や資金調達といったノウハウを個別指導する。流れはすべてオンライン化し、全国どこにいても支援サービスを受けられるのも“売り”だ。

  起業を目指す人の中でもターゲットとするのは、40代以上と年齢は高めだ。全国展開をして、年間2000社の起業支援を目指す。   シニア起業について丹羽社長は「20~30年もリタイア人生が続くのは、社会にとってすさまじい損失」と指摘。「サラリーマンは働くことから強制退場させられるが、起業すればそれはない」と話す。   60歳以上が3割超   メガバンクを経て、メーカーの財務担当役員を務めていた志水直樹さん(62)は、2年前に財務コンサルティング会社を立ち上げた。60歳を迎え「残りの人生悔いなく生きたい」と考えたからだ。   とはいえ、軌道に乗せるのは簡単ではなかった。開業から1年近くの報酬はゼロ。貯金から300万円を出した資本金は30万円にまで目減りした。友人の仕事を手伝う形で手掛けたM&A(企業の合併・買収)案件は、成功報酬型で、成立しなければ無収入だ。  

焦る日々に「1件当たりの金額は小さくてもいい。経営者と膝をつき合わせて議論した銀行時代の原点に戻ろう」。地道に経営者セミナーを開催したり会合に顔を出したりして、集客を続けた。最初の顧客獲得までに1年かかったが、今では取引先も5件に。

  苦労はあるが「自分の選択で生きている今の方がずっといい」。定年も目標数字も決めるのは自分だ。   中小企業白書(2014年版)によると、起業家の年齢別でもっとも多い層は60歳以上で、起業家約22万3000人の3割超を占める。30年前と比較すると、その割合は約4倍に相当する。   支援体制も充実しつつある。日本政策金融公庫ではシニア起業家支援として、55歳以上を対象に特別優遇利率で最大7200万円という融資制度を用意。国や自治体もシニア起業を後押しする補助金制度を、相次いで打ち出している。   知識や経験生かし、自ら雇用創出   しかし、中小企業経営に詳しい弁理士の日比恒明氏は「40年以上もサラリーマンだった人の起業は相当、ハードルが高い」と指摘。「表に出てくる成功例は氷山の一角。その下に膨大な失敗例があるのも事実」と話す。  

大手企業を退職した技術者が、OA機器を開発。自治体の補助金が出たことで生産量を増やしたものの、想定を超えるIT化のスピードに乗り遅れ、大量の在庫を抱えてしまったケースもあるという。

利益よりやりがい   「シニア層には利益よりもやりがいを追求する“ゆる起業”がお勧めです」。定年前後の起業を支援する「銀座セカンドライフ」の片桐実央社長は、起業希望者にそう話す。「得意分野を生かし、社会と接点をもつために働く手段としての起業ができるのは、ある程度資金に余裕のあるシニアの特権」と考えるからだ。   そうなると、起業の形態は多様だ。広告会社やメーカーで市場分析を専門にしてきた富田真司さん(75)は3年前、シニア市場専門のシンクタンク「日本元気シニア総研」を立ち上げた。   利益追求よりも、シニアビジネスの知見をもつ「人の集団」の特性を前面に出し、一般社団法人の形をとった。医療やエンタメ、資産運用などシニア市場に関する専門家が所属。商社や携帯電話会社など相談に訪れる企業に、シニア市場に関して提案や助言を行う。  

総研では「元気シニアビジネスアドバイザー資格講座」も開講。受講者にシニア市場の専門家資格を与える。高齢者が暮らしやすい環境づくりにつなげる考えだ。運営費は企業からの協賛金でまかなっている。

  内閣府の調査では、高齢者の退職希望年齢は、「70歳以降」あるいは「働けるうちはいつまでも」と答えた人が7割にのぼる。しかし一方で65歳以上の就労率は3割未満にとどまっているのが現状だ。若い働き手が減る人口減少社会で、意欲ある層を生かさない手はない。   創業支援や起業再生が専門の板橋区立企業活性化センター長の中嶋修氏は「事業計画を立て生活資金を残した上でなら、経験と資金力あるシニア起業は会社がイヤで起業する若年層よりよっぽどいい」とみる。   経験を過信したり過大なリスクを抱えたりしなければ、起業は自ら雇用をつくり、知識や経験を経済活動に生かすことができる。シニア起業は、少子高齢社会に新たな活力を生み出す可能性をはらんでいる。(滝川麻衣子)

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