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send シェール革命追い風「天然ガス車」復権図る 運送業者も評価「EVより役立つ」

2015年4月17日 金曜日

  bsd1504170500004-p1   ガス業界が、国内での普及が伸び悩んでいる天然ガス自動車(NGV)の復権に本腰を入れる。NGVはガソリン車やディーゼル車に比べ、二酸化炭素(CO2)や環境汚染物質の排出を削減できるとして脚光を浴びたものの、その後失速し、日本ガス協会が目標とする2030年の天然ガス自動車50万台達成は困難になっている。政府や自動車業界が「究極のエコカー」といわれる燃料電池車(FCV)の普及を優先させているためだ。こうした中、電気自動車(EV)やFCVに比べ輸送能力が高いことに注目し、安価な米国産シェールガスの輸入や、都市間長距離輸送に適した大型NGV投入などにより普及を加速する考えだ。   「FCVより優先」   「NGVの普及をまず進めなければならないのに…。水素ステーションに力を入れる余裕なんて、正直ない」   都市ガス大手幹部はこうため息をつく。   「水素社会の実現」は安倍晋三政権の政策の大きな柱。トヨタ自動車が世界初の市販FCV「MIRAI(ミライ)」を昨年12月に発売したのに合わせ、石油元売りのJX日鉱日石エネルギーと、ガス専門商社の岩谷産業はFCVに燃料の水素を供給する水素ステーションの整備を積極的に進めている。JXは2015年度末までに全国で40カ所、岩谷も20カ所まで増やす方針だ。   これに対し、都市ガス大手による水素ステーション開設は、東京ガスが東京都練馬区に天然ガススタンド併設型1カ所を開設した例があるだけで、どの社も設置目標を示していない。   その背景には「FCVがどれだけ普及するかわからないのに、水素ステーションに巨額の投資はできない」(都市ガス首脳)という慎重論に加え、当然のことながら、主力商品である天然ガスの普及を優先させたいとの本音がある。   日本ガス協会は1990年代から、NGVや天然ガススタンドの普及に取り組んできた。   大きな転機は、東京都が99年から展開した「ディーゼル車NO作戦」。有害物質の排出が少ないなどの特徴を持つNGVの製造に大手自動車メーカーが相次いで参入し、普及台数は99年度の約5000台から2003年度には4倍の約2万台に一気に膨らんだ。   しかし、自動車メーカーがディーゼル車のクリーン化を進めたことなどから、NGVの普及台数の伸びは鈍化し、手を引くメーカーも現れた。2011年の東日本大震災発生直後にガソリンや軽油が不足した際、天然ガススタンドのほとんどが営業を継続でき、NGVの存在は見直されたものの、過去4年の普及台数は4万台前半で推移し、スタンド数も300カ所程度にとどまっている。  

これに対し、世界全体を見渡せば、NGVは約2000万台も普及しており、エコカーの中では主役の地位を確立している。

  EVは一度の充電で走れる航続距離が短いうえ、バッテリーが重く、大量の荷物が積めないという弱点がある。FCVは航続距離こそ長いものの、荷物を多く積むための大型化が実現するまでにはなお時間がかかるとみられている。   スタンド新設で支援   これに対し、NGVの構造は、基本的にガソリン車、ディーゼル車などの従来車と同じで、異なるのは燃料系統だけ。出力やトルク性能は、ベース車のガソリン車やディーゼル車とほぼ同等の性能を持っており、低公害の乗用車、トラック、バスが実用化され、輸送能力が高い点が売り物だ。通常、燃料の都市ガスは高圧(約200気圧)に圧縮、充填(じゅうてん)され、NGVは圧縮天然ガス(CNG)車と呼ばれている。   国別の普及ランキングをみると、イラン、中国、パキスタン、アルゼンチンといった産ガス国が上位に名を連ねる。ガスが安く手に入るため、NGVの普及も盛んというわけだ。   13位の米国も産ガス国。シェールガス革命を追い風に、オバマ政権が2025年までに石油輸入量を11年の3分の1削減する目標を提示したことなどから、NGVの普及が加速している。   液化天然ガス(LNG)の輸入大国・日本は25位にとどまっているが、17年からは原油価格に連動しない米国産シェールガス由来のLNGの輸入が始まる。これに伴い、「輸入価格は現在の6~7割程度に削減できる」(日本ガス協会)と期待され、国土交通省幹部は「燃料費の削減は、運送業者にとって、大きなメリットになる」と歓迎する。   こうした中、3月5日には、名古屋陸送(名古屋市)が、いすゞ自動車の大型トラック「ギガ」を改造したNGV大型トラックを中部空港と富山・小松空港間のルートに導入した。東邦ガスが名古屋市内に新たな天然ガススタンドを建設するなどの支援を行った。名古屋陸送は政府の「物流の低炭素化促進事業」の補助金をトラック購入費などに活用する。   ■運送業者、輸送能力の高さ信頼   天然ガス自動車(NGV)の普及拡大には、メーカーの新製品の開発も欠かせない。国内唯一の圧縮天然ガス(CNG)トラックメーカーとなったいすゞは、2015年に大型のCNGトラックを市販化する方針だ。大型トラックが普及していけば、都市内だけではなく、都市間の輸送も拡大し、二酸化炭素(CO2)のさらなる削減が可能だ。   いすゞは将来的には、液化天然ガス(LNG)トラックも投入したい考え。CNGトラックと比べ、燃料のエネルギー密度が約3倍で航続距離を延ばすことができ、ガスの圧縮コストをかけないで燃料費を低減できるなどのメリットがあるという。   東日本大震災でも思い知らされた通り、資源の乏しい日本にとってエネルギーの安定供給は重要課題だ。運輸部門の燃料の9割強を石油に頼っており、中東などの地政学リスクに影響されやすい。地上で輸送する石油製品と比べ、地下に埋めた導管で運ぶガスは供給の安定性が高いといわれる。   約4000台の天然ガストラックを保有する物流大手、佐川急便は3月から、車両のクリーン化や多様化を一層進めるため、東京の大手町、丸の内、有楽町地区で電気自動車(EV)トラックも導入したが、運送業界関係者はこう指摘する。「平坦(へいたん)なエリアはいいが、EVは坂道には弱く、輸送能力も低い。天然ガストラックのほうがよっぽど役に立つ」   “トラック野郎”たちがNGVに軍配を上げる現状を追い風に変えられるか。復権に向け、天然ガス関連業界の次の一手が待たれている。(宇野貴文)  

【用語解説】天然ガス自動車

  メタンを主成分とした天然ガスを燃料にした自動車。地球温暖化の原因物質の一つ、二酸化炭素(CO2)の排出量は、ガソリン車よりも1~2割少ない。また、光化学スモッグや酸性雨の原因となる窒素酸化物(NOx)の排出量も少ない。シェールガスの開発により、可採年数の拡大や市場価格の安定化が見込まれ、日本ガス協会は2030年に天然ガス自動車50万台や、1000カ所のスタンドを建設する普及目標を掲げた。

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