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send サントリー“大政奉還”現実味 創業家出身副社長に課せられたハードル

2018年2月2日 金曜日

サントリーのウイスキー用蒸留釜(ブルームバーグ)   サントリーホールディングス(HD)のトップ人事で“大政奉還”が現実味を帯びてきた。新浪剛史氏(59)が社長に就任してから今年10月で丸4年。創業家出身で次期社長に確実視されている鳥井信宏副社長(51)が50歳の大台を超え、実績を重ねているからだ。ただ、新浪氏は信宏氏の社長就任に高いハードルを設けており、トップ交代にはなお時間を要するとの見方もある。 「次の世代が十分に育っていない…」 今から3年半ほど前の2014年6月、当時サントリーHDの社長で現会長の佐治(さじ)信忠氏(72)は記者団に、新浪氏を初めて創業家以外から社長に迎え入れる理由の一つについて、こう説明した。 創業者の鳥井信治郎氏のひ孫にあたる信宏氏は当時まだ48歳だった。ちなみに佐治氏は創業者の孫にあたる。 佐治氏は「創業家で経営を続けられればベスト。(信宏氏が)うまく成長してほしい」とも漏らしていた。国内の巨大企業で40代のトップは珍しい。取引先とのバランスなども考えれば、この時点では信宏氏の社長就任を断念せざるを得なかったようだ。 新浪氏は「リリーフ」 そこで白羽の矢が立ったのが、三菱商事出身の新浪氏だった。すでに“プロ経営者”として頭角を現していた新浪氏は、社長や会長としてローソンの経営再建を担い、海外出店の加速や医薬品販売の強化といった施策で急成長させた。

佐治氏も、新浪氏について「国際的な人脈が豊富で、グローバル展開を目指すサントリーにぴったりだ」と評していた。それでも、新浪氏の社長就任は、信宏氏が就くまでの“リリーフ登板”という見方は、当時も今も変わっていない。

信宏氏は1966年3月生まれ。慶応大を卒業し、旧日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、97年に31歳でサントリーに入社。その後、43歳の時にサントリーHDの執行役員、44歳の時には中核子会社で飲料を手がけるサントリー食品インターナショナルの社長とサントリーHDの専務に就いた。 社内の実績積み上げ 2016年3月にはサントリーHDの副社長に就任し、とんとん拍子で出世の階段を駆け上がってきた。まさに創業家出身の“若きプリンス”らしい華麗な経歴だ。それでいて「社員食堂にふらっと現れる、気さくで公平な人」(中堅社員)というのが社内評だ。 「本日は第二の創業記念日。すべての利害関係者の期待に応えたい」。13年7月、社長としてサントリー食品インターナショナルを株式上場させた信宏氏は会見でこう誇らしげに語った。その表情からは、グローバル化の推進に向け資金調達力の向上にめどをつけたばかりでなく、株式上場という仕事を成し遂げ、社内での実績を積み上げたという自信もうかがえた。 さらに「信宏氏に実績を積ませるためでは」(大手ビール幹部)との臆測が飛び出す大幅な組織再編と人事が昨年あった。

サントリーHDは昨年4月、傘下のビール会社やワイン会社などを束ねる新会社「サントリーBWS」を設立。社長をHD副社長の信宏氏が兼務したのだ。

■「国内ビール類シェア20%」 事業戦略の立案などを担う新会社設立の最大の目的は、ずばり市場縮小が続くビール類の強化だ。ビール類シェアが向上すれば、「信宏氏の功績になる」(業界関係者)との狙いも透けてみえる。 実際、ビール類のシェアは確実に高まっている。昨年7月にアルコール度数7%の第3のビール「頂」を発売すると、「安く酔える」などとしてスマッシュヒット。第3のビールが出荷量を押し上げ、17年のビール類(発泡酒と第3のビールを含む)のシェアは前年比0.3ポイント増の16.0%と過去最高となった。 ライバルで業界首位のアサヒビールのシェアが0.1ポイント増(シェアは39.1%)にとどまり、2位のキリンビールにいたっては0.6ポイント減(同31.8%)となる中、サントリーは大善戦したといえそうだ。ちなみにサッポロビールは0.1ポイント増(同12.1%)だった。

「早すぎず遅すぎず」

これだけの実績を重ねれば、信宏氏の社長就任も近いのではないか-。 昨年12月末、サントリーHDの本社機能がある東京都港区のオフィスで、新浪氏を直撃してみた。 --そろそろ社長交代はあるのか? 「早すぎず遅すぎずで、いつか分からない」 --どのタイミングでバトンタッチするのか? 「これまで佐治会長と私の二人三脚でやってきた。二人三脚でなくても会社が回るような人材が育ってくれれば」 --信宏氏はBWSのトップとしてビール類のシェアを高めるなど、実績を重ねているが? 「もともと国内は強いのだから、もっと基盤を作らないと」 --具体的には? 「国内の大手ビールメーカーは4社なのだから、やはり目標は(全体の4分の1にあたる)シェア25%。まあ、少なくても20%くらいはほしい」 国内ビール類のシェア20%-。これが信宏氏に課せられた目標というのだ。  

目標は創業家と共有

サントリーはもともと、ビールで後発組。ビール離れが進む中、アサヒやキリン、サッポロとしのぎを削る厳しい市場環境の下で、昨年のシェア16%から4ポイント高めなければ20%には達しない。第3のビールでヒット商品が出た昨年でも、シェアは0.3ポイントの上昇にすぎなかった。このペースでシェアを高めても、単純計算では20%まで13年以上かかることになる。 いくら社是が「やってみなはれ」でも、ハードルが高すぎではないか。だが、新浪氏は「(シェア20%の目標を)やり抜かないといけない」と意に介さない。 佐治氏と新浪氏は「昔からのゴルフ仲間」(佐治氏)で、取締役会など社内だけでなく、社外でも頻繁にコミュニケーションを取っているもようだ。シェア20%という高い目標も、新浪氏だけで設定したわけではなく、佐治氏ら創業家とも共有しているとみられる。 もちろん、ビール類のシェア20%が実現できなければ、信宏氏の社長就任がないというわけではないだろう。新浪氏だけでなく、佐治氏ら創業家側も信宏氏を真のリーダーに育てるため、あえて高い目標を課していることは想像に難くない。 信宏氏がいずれ社長に就任することは、誰もが認める既定路線。信宏氏が実績を確実に積み重ねれば、佐治氏や新浪氏ら現経営陣が「やってみなはれ」と、社長を信宏氏に託す日が、そう遠くない将来やってきそうだ。(大柳聡庸)

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