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キリン、王者復活へ変革の第一歩 47都道府県ビール、業界内では冷ややかな声も
2016年5月16日 月曜日

それだけに「47都道府県の一番搾り」は「当初はできないとの声もあった」(布施社長)。一商品に対して47の違った味を用意することは、これまでの生産現場の常識ではあり得ない手法。さらに現場が反発したのは販売までの期間の短さだった。通常ビールは開発から生産までは約1年かかるとされるが、「47都道府県の一番搾り」はそれを7カ月という短期間で成し遂げた。これまでにない手法と短期間での生産によって新商品を市場に投入できたことで布施社長は「飛躍に向けた経験になるはず」と評価する。
冷ややかな声も もっとも、キリンのこうした試みに対して、業界内では冷ややかな声もある。量産効果で生産コストを抑え、収益を追求するのが大手ビールメーカーのビジネスモデル。多品種・少量生産では効率を追求できないからだ。 競合ビールの幹部は「大手ビールメーカーにとってそぐわない商品」と言い切る。「47都道府県の一番搾り」は10月にかけて順次発売予定。好評により受注量は、当初目標の120万ケース(1ケースは大瓶20本換算)の約2倍となる240万ケースに達する見込みだ。とはいえ、主力ビール「一番搾り」の16年の販売目標3640万ケースからみればその割合は約6.6%。ビール類全体の目標1億4060万ケースからみるとその割合は1.7%にすぎず、全体を押し上げるには力不足だ。
15年のキリンのビール類の国内シェアは33.4%と前年から0.2ポイント改善したものの、王者アサヒビールに6年連続で後塵(こうじん)を拝している。 新たな成長機会を求めて進出している海外でも苦戦を強いられている。15年3月期には11年に約3000億円を投じて買収したブラジル子会社の業績悪化による減損損失1100億円を計上。1949年の上場以来、初の最終赤字に転落した。ここ最近では、ブラジル子会社の1工場をベルギーのビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)に売却することで合意するなど目下リストラに追われている。 本格的な社内風土の変革につなげられるのか、それとも単なる実験的な試みに終わるのか。成否は未知数ながら、「47都道府県の一番搾り」で、キリンは変革へそろり一歩を踏み出した。(松元洋平)