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send キリン、売上高でアサヒに抜かれ3位転落 海外M&Aの“巧拙”で明暗

2017年11月22日 水曜日

アサヒグループホールディングスが買収したチェコの工場。高いシェアで高収益を見込める  

2017年12月期の連結売上高で、キリンホールディングス(HD)が、07年に持ち株会社化して以来初めてアサヒグループホールディングスに抜かれ、業界3位に転落する見通しとなった。「スーパードライ」の躍進によりアサヒにビールシェアで首位の座を奪われ、19年連続で2位に甘んじてきたキリン。長年、「一番搾り」や「ラガー」を愛飲してきたキリンファンや社員にはショッキングだが、海外M&A(企業の合併・買収)戦略の違いが売上高での明暗を分けた。

「(売上高の)順位は気にしていない…」 キリンが17年12月期の売上高予想を下方修正し、大手ビールの売り上げ規模でサントリー、アサヒに次ぐ3位になることが確実となった8月初旬。財務戦略などを担当する伊藤彰浩最高財務責任者(CFO)は6月中間決算の記者会見で冷静さを装いながらも、その口調には悔しさがにじんでいた。 高い授業料 キリンの17年12月期の売上高は5.1%減の1兆9700億円、最終利益は1.6%増の1200億円と減収増益を計画する。売上高でアサヒを下回る一方、実は最終利益は過去最高益となる。 キリンが「減収」となるのは、赤字が続いていたブラジル子会社に見切りを付け、5月末に売却したからだ。この売却により、17年12月期の売上高で800億円のマイナス要因となる。ただ、採算は大幅に改善するため、利益面が押し上げられるのだ。

一方、アサヒは世界最大のビールメーカー、ベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブから昨年10月に西欧4社、今年3月に東欧5社を計1兆2000億円で相次ぎ買収。これらが連結決算に反映され、初めて売上高が2兆円を超える。

つまり、キリンとアサヒの海外M&Aの“巧拙”が、両社の売上高における逆転劇につながった。 「高い授業料になった…」。キリンのある幹部はこうため息をもらす。 採算を重視するため赤字が続いていたブラジル子会社を手放すとはいえ、売却額は、買収額の計3000億円に対し、約4分の1の770億円にすぎない。この間、ブラジル事業の企業価値が目減りしたため、15年12月期には1100億円もの減損損失を計上するなど授業料としてはあまりにも高く付いた。 キリンのブラジル企業買収は11年夏にさかのぼる。ブラジルのビール市場は中国、米国に次ぐ3位の規模と有望なマーケットだった。 そこに、ブラジルでビールシェア2位の現地企業スキンカリオールの創業者が「株式の売却先を探している」との情報が入る。有望市場参入のチャンスと判断したキリンは、11年8月、約2000億円を投じスキンカリオールの株式50%超を取得した。 しかし、残りの株式を持つ別の創業者一族が売却に猛反発。裁判所にキリンの買収無効を提訴するに至った。結局、同年11月、キリンは残りの株式も約1000億円で買うはめとなった。創業者一族の“内輪もめ”に巻き込まれた形だが、それを読めなかった。

その後もブラジル経済の失速や新興メーカーとの競争激化といった逆風が吹き荒れ、シェアも落として業績は低迷。一部工場を売却するなど自主再建を進めたが、ついに力尽きる。今年2月、「収益改善には限界がある」(磯崎功典社長)として、買収から6年足らずでブラジルからの撤退を発表した。

一方、アサヒが買収した事業は業界内では「めったにない“出物”」(大手ビール幹部)といわれている。例えば、買収したチェコ、ポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニアの東欧5社は、それぞれの国でシェア3割超で、スロバキアの2位を除く4社はシェア首位。高水準で安定的な稼ぎを見込めるのだ。 出物が売りに出された秘密はビール世界首位のアンハイザー・ブッシュ・インベブによる、同2位の英国の旧SABミラーの買収にある。両社は15年11月に旧SABミラーの買収で合意。独占禁止法に抵触しないよう、旧SABミラーの西欧や東欧事業を売りに出したのだ。アサヒはそこに目を付けた。 ただ、株式市場ではキリンのブラジル子会社売却もそれなりに評価されている。採算改善を受けキリンの株価は11月10日の終値で2690円と年初来の上昇率は39%。アサヒの43%と遜色なく、同業のサッポロHD(15%)に比べ上昇率は高い。 成長の源泉 両社が海外M&Aに積極的なのは、若者を中心としたビール離れで国内市場が縮小し、成長の源泉を海外に求めているからだ。サントリーも14年に「ジムビーム」などのブランドを持つ米蒸留酒最大手の旧ビーム社(現ビームサントリー)を買収。この買収効果で14年12月期の連結売上高で初めてキリンを抜き、業界首位になった。 国内ビール市場は16年まで12年連続でマイナスで、減少傾向に歯止めはかかっていない。このため、今後も酒類だけでなく、食品や飲料も含めて海外M&Aが増えるのは確実とみられている。ビール会社の売上高順位も、そのたびに変わるといった事態も起こりそうだ。(大柳聡庸)        

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