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send 【AI新時代】奪われるヒトの仕事 執筆・接客代替、弁護士ですら置き換わる?

2016年6月6日 月曜日

  ecd1606060500001-p1   米グーグルが開発した人工知能(AI)「アルファ碁」が今年3月、「世界最高の棋士」の一人とされる韓国のプロ囲碁棋士を破り、世界を震撼(しんかん)させた。日進月歩で進化するAIによる技術革新は企業の経済活動、そして働き方にどのような変化をもたらすのか。AI新時代は果たして、われわれにとって脅威なのか希望なのかを探った。   人間顔負けの文章   週末を控えた米東海岸の事務機器メーカー。オフィスのパソコンに向かう営業担当者に、1通の電子メールが届いた。   「フランクへ。君は今週、2件で4万2550ドルの契約をとって、26社の潜在顧客と接触したね。素晴らしい成績だ。でも、まだ年間ノルマの達成ペースからは遅れているよ」   上司からの厳しい指摘にも見えるメールだが、“送り主”は人間ではない。米ノースカロライナ州のIT企業、オートメーテッド・インサイツが開発した人工知能(AI)「ワードスミス」が、自動で作成した社員の管理・評価書だ。   ワードスミスは高度な情報処理技術により、さまざまなデータベースに基づいて人間顔負けの自然な文章を作成する。「データを基に、特化した個別の文章を作成できるのが強みだ」(同社のジェームズ・コテッチ氏)という。さながら“AI管理職”のようなこのシステムは、米イリノイ州に本社を置く個人向け保険大手、オールステートで既に導入されている。  

同様にワードスミスを導入したAP通信は、企業決算のデータベースを基に、AIが売上高や利益、市場予想との対比など必要なデータを自動で抽出し、決算記事をわずか1~2秒で作成する。現在は、AIが執筆した4000本余りの決算記事を配信している。

  かつてロボットによる自動化が、工場での単純労働の多くを駆逐した。同様に人よりも早く、正確に大量の文書を作成するAIの普及は、知的労働の分野で人の雇用を奪う恐れがある。   大量のデータから自動で学習を繰り返し、AIが独自に進歩する技術「ディープラーニング(深層学習)」により、AIの活用の場は飛躍的に増えた。接客型ロボットとの組み合わせは、既に私たちの身近にある。   セールストーク展開   「今日は良い天気ですね。晴れの日って、テンションが上がりませんか?」   家電量販店のコーヒーマシン売り場。店頭の小柄なロボットが買い物客に、身ぶりを交えてこう話しかけた。立ち止まった客と二言三言、つかみの会話を終えるとロボットは「何かお探しですか」と、おもむろにセールストークを始めた。   ネスレ日本(神戸市)は2014年末からソフトバンクグループの人型ロボット「ペッパー」を家電量販店の売り場などで接客に使っている。ソフトバンクによると、導入店舗の売り上げは15%伸びたという。  

ペッパーの導入以前は店舗ごとに接客のアルバイトを雇っていたが、人件費がかさむため、対象店舗は立地の良い数十カ所に限られていた。既に約150台を導入したが、数年以内に1000台まで増やす計画だ。

  ソフトバンクによると法人向けリースの場合、ペッパー1台当たりの導入費用は月5万5000円。仮にアルバイトを1カ月(30日)にわたり1日8時間、時給1000円で雇った場合、月24万円の人件費が必要となる。アルバイトを1人雇う代わりに、ペッパーを使えば月18万5000円のコスト削減が可能となる。   顧客情報を蓄えたビッグデータを基に、ペッパーが個人の嗜好(しこう)に応じたきめ細やかな対応が可能になれば、接客業における人の優位性も失われかねない。   AI進化 産業再編など不可避   10~20年後、日本の約2人に1人は人工知能(AI)に仕事を奪われる-。野村総合研究所がまとめた試算は、雇用における“暗黒の未来”を示唆する。日本で働く人の49%の仕事が、人間からAIに労働力の入れ替えが進む恐れがあるという内容だ。対象は事務員や受け付けなど一般的な業務だけでなく、会計監査の係員などデータの分析や特別な知識が要求されるホワイトカラーにも及ぶ。   ecd1606060500001-p2  

憧れの職業から転落

 『コンピュータが仕事を奪う』の著書を持つ国立情報学研究所の新井紀子教授によると、難関の司法試験を課せられた弁護士ですら、AIに置き換わるという。膨大な判例を分析し、訴訟の方針を立てる仕事をAIが肩代わりすれば、業務の負担は大幅に減る。安価に仕事を受ける法律事務所が増え、「将来は数が5割減ってもおかしくない」と“憧れの職業”からの転落を予想する。   AIの導入に背を向ければ、私たちの雇用は守れるのか。答えは「ノー」だ。   経済産業省が4月に公表した試算によると、AIやビッグデータなどの技術革新に対応せず、現在の産業構造を維持した場合、2015年度に6334万人だった国内従業者数は、30年度で735万人減と1割超の雇用が失われるという。   しかも、AIやロボットを生み出す先端分野の業種は海外に流出し、中核を成す付加価値の高い業種も縮小、AIで代替可能な業種での雇用が増え、低賃金化が進む、という見通しだ。 半面、AIなどの技術革新を積極的に取り込んだ場合の試算でも、30年度の国内雇用は161万人減少する。経産省幹部は「AIの進化で産業再編や雇用の流動化は避けられない」と認めつつ、「痛みを伴う転換をするか、安定したジリ貧をとるかの違いだ」と指摘し、技術革新への対応を急ぐべきだと強調する。  

「人間とAIの共存が進めば少子高齢化による労働力不足の解消につながる」

  野村総研の上田恵陶奈上級コンサルタントがこう指摘するように、人口減少社会を迎える日本が経済成長を維持する上で、AIの進歩は労働人口の減少を補う“妙手”だとする楽観論も少なくない。   しかし、AIやロボットでも代替可能な工場のライン工▽企業の調達管理▽スーパーのレジ▽銀行窓口▽経理・給与など間接部門-といった業種は、これまでのような雇用の受け皿たり得なくなるのは事実だ。   労働法制見直し必要   AIに仕事を追われた人はどうすればいいのか。新井教授は、大企業がカバーできない小規模な事業をこなす個人事業主が増えると予想する。「フリーランスでも安定的な生活ができる制度。家を持ち、子育ても可能な労働法制の見直しが必要だ」と訴える。   また、野村総研の上田氏は「AIが稼ぐ金で最低生活保障(ベーシックインカム)を賄い、望まない人には就労を求めないですむ時代がくる可能性もある」と指摘する。   ただ、AIやロボットを生み出す技術者、高付加価値な企画・サービスなど一部の就業者に富が集中し、仕事を奪われた人々との格差拡大は避けられない。AIによる技術革新に対応した、社会や経済、教育など、あらゆる制度改革が急務となる。

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