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send 【2015春闘】60年目の論点(上)ベア容認 政権が巧みに誘導

2015年1月21日 水曜日

  ecd1501210500002-p1 経労委報告を手に記者会見する経団連の宮原耕治副会長=20日午後、東京・大手町   ■「2%」めぐる労使攻防 2015年春闘が事実上スタートした。経団連が20日、今春闘で経営側の指針となる経営労働政策委員会(経労委)報告を発表。給与水準を一律で引き上げるベースアップ(ベア)について「賃金を引き上げる場合の選択肢の一つ」と位置づけ、2年連続で容認する見解を示すなど、昨春闘よりも賃上げに前向きな姿勢を打ち出した。日本経済を長きにわたって苦しめるデフレからの脱却が視野に入る中、春闘は今年で60年を迎える。労働条件の改善を求めて経営側と交渉する日本独特の労働運動は、協調路線へと大きくかじを切ることで一つの岐路に立っており、今春闘の成否は今後の春闘の行方を左右しそうだ。   ◆経労委報告で明記 「経営者のみなさん。勇気を持って、やるなら今でしょ」。1月6日に開かれた経済3団体共催の新年祝賀パーティーに来賓として招かれた安倍晋三首相は、居並ぶ経営者に対し、賃上げの決断を促した。   60年の歴史を重ねた春闘は、昨年から大きく様変わりした。労使が角を突き合わせ、ストライキをちらつかせて激しい交渉を繰り広げてきた時代もあったが、今は労使の間に行司役ともいえる政治が入り、重要な役割を演じている。   昨年末に開かれた政労使会議では、経済の好循環を実現するには企業が賃上げを実施し、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費を底上げすべきだとの考えを共有した。昨年4月の消費税率の引き上げで個人消費が失速し、好循環に急ブレーキがかかった今、賃上げの重要性は昨春闘よりも増している。   連合の古賀伸明会長は「今春闘では、新たなサイクルでの経済の好循環をどうつくるかが問われている」と強調。経団連の榊原定征会長も「日本経済が正念場に差しかかった今は非常時であり、政経の連携は欠かせない」と、好循環への貢献に意欲を示す。   経営側が賃上げ容認に傾く背景には、安倍政権の巧みな労使操作の戦術がある。新年祝賀パーティーのあいさつで、安倍首相はこう述べている。   「(法人税実効税率の引き下げ幅を)上乗せできるかどうかは経営者のみなさんにかかっている。法人税減税で賃上げに応じ、雇用も改善すれば(国民は法人税減税を)『もっとやってよ』という」   経営者側には法人税減税というアメをぶら下げて賃上げの背中を押す一方で、労働者側には「ホワイトカラーエグゼンプション」と呼ばれる労働時間規制の緩和というムチをちらつかせ、労働条件の改善をめぐる要求の行き過ぎに歯止めをかけようとの思惑が透けてみえる。   経団連は20日に発表した経労委報告で、経営側の基本スタンスとして「収益が拡大した企業のより積極的な対応が必要」と明記した。具体的には「設備投資や研究開発投資、雇用の拡大と併せて賃金の引き上げを前向きに検討することが強く求められる」と、好業績の企業に賃上げの検討を求めた。   ただ「『賃金の引き上げがイコール、ベースアップ』という単純なものではない」とも指摘。「年収ベースの引き上げととらえることで労使の工夫と選択の余地が広がる」とし、定期昇給実施や賞与・一時金への反映、手当の改定を含めることで「賃上げが検討可能な企業の数が広がる」との見方を示した。   一方、各労組に2%以上のベア要求を掲げるよう求めた連合の方針については、消費税増税分を除く物価上昇率が前年比1%未満で推移していることや、円安に伴う原材料価格の上昇などで多くの中小企業の経営が厳しいことを踏まえ、「納得性が高いとはいえない」と否定的な見解を示した。   経営労働政策委員会委員長の宮原耕治副会長は記者会見で、今春闘について「経済の好循環を促すため、ベア実施企業が増えることを期待している」と述べる一方、「春闘は労使のパートナーシップ対話になった」と春闘の進化を強調し「官製春闘」との批判をかわした。   その上で「業績の上がっている企業が『昨年よりも(賃上げを)もっと頑張ろう』となるよう期待している」と、昨年を上回る賃上げが実現する可能性に言及した。   ◆「過大な要求」にクギ ecd1501210500002-p2   ただ宮原副会長は、一律2%のベースアップの要求を掲げる連合に対しては「違和感はないが、過大な要求」とクギを刺す。労組関係者は「交渉が始まらないと経営側の本音はわからない」と気を引き締める。   内閣府の国民経済計算によると、13年度の家計貯蓄率は60年前の1955年度以降で初めてマイナスに陥った。これに対し、企業は潤沢な貯蓄を有し、設備投資の抑制を続けているため、貯蓄投資バランスが高水準の黒字を続ける。   ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は「企業の余剰資金を家計に還流させることが重要だ」と指摘する。これに対し、宮原会長は「内部留保は海外でM&A(企業の合併・買収)をした子会社の株式などがほとんどで、成長のために必要なお金」と反論する。   「経営者も一歩踏み出すべきだ」と、榊原会長は経済界が賃上げの実現に役割を果たすことに期待をかける。その歩幅の大きさこそが、今春闘の最大の焦点となる。(春闘取材班)   ◇   ■春闘60年と日本経済の歩み 1955年 私鉄総連など8産業別組合が共闘し、春闘がスタート 56年 公務員の労組も参加し、合同闘争本部を設置 59年 春闘の労働者参加数が400万人に 61年 池田勇人内閣が所得倍増計画発表 63年 好景気を背景に「欧州並み賃金」を目標に掲げる 67年 金属労協が春闘に参加 72年 日経連が生産性基準原理を提示し、個別企業指導を実施 74年 石油ショックに伴う物価高で史上最高となる32.9%の賃上げを獲得 76年 1桁台の緩やかな賃上げに 91年 バブル崩壊に伴い、労働運動が冬の時代に 2002年 連合が雇用の維持を最優先し、ベースアップの統一要求を見送る 09年 前年のリーマン・ショックの影響で企業業績が悪化 10年 連合が、非正規社員を含む労働者の条件改善を目標に掲げる 14年 政労使会議で賃上げの必要性を共有

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