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send 「勘と経験」農業脱却、アグリテックで熟練の技伝承

2017年5月1日 月曜日

ルートレック・ネットワークスの「ゼロアグリ」。最も経験が必要な灌水と施肥を自動化した=熊本県八代市のトマト農家

■IoTなど活用の異業種参入

農業の生産性向上や労働環境の改善といった課題解決に、ビッグデータやIoT(モノのインターネット)など最先端技術を活用するアグリテックで挑むベンチャーや異業種から参入する企業が増えている。熟練農家が持つ技術・ノウハウを「見える化」すれば、収穫物の増量と品質安定をもたらすだけでなく、きつい肉体労働からも解放される。新規参入を躊躇(ちゅうちょ)させる「もうからない」「休めない」農業から脱却でき、懸念されている担い手不足の解消につなげる。 ◇ ◆水やり量を自動設定 農家は降雨や気温など毎年異なる気象条件の中で、最高のタイミングで種をまき、肥料を与え、作物を収穫する必要があるが、熟練農家と一般農家では収穫、品質に大きな差が出るといわれる。勘と経験がものを言うからだ。この暗黙知を情報通信技術(ICT)の活用で形式知にすれば熟練農家の技能伝承と生産効率化、さらには重労働を減らすことも可能だ。 「『水やり10年』といわれるように、最も勘と経験が求められる灌水と施肥をパートに任せられるようにした」。ICTベンチャーのルートレック・ネットワークス(川崎市多摩区)の佐々木伸一社長はこう語る。 可能にしたのは養液土耕栽培システム「ゼロアグリ」だ。日射センサーと土壌センサーで取得した情報を基に、日々の天候と作物の成長に合わせて灌水と施肥の供給量を自動的に決める。作物にとって最適な土壌環境を保てるためストレスにならない。 ゼロアグリを導入した標準的なトマト施設栽培農家では収量が前年比28%増加したうえ、施肥などの手間が省けたことから1年間で初期投資を回収できたという。灌水と施肥の作業時間を90%削減し規模拡大につなげた農家もある。 熟練農家の栽培技術・ノウハウを新規就農者に伝えることもできる。佐々木社長は「ゼロアグリで農業に入りやすい環境を実現できる。若い就農者を増やせる」と指摘する。現在は50施設(農家)で稼働中だが、7月末には100施設まで増やし、2020年には5000施設への導入を目指すと強気だ。   ◆しんどい作業は回避 農業従事者の高齢化が進む一方で、新規就農者が増えない理由の一つが農作業の肉体的な厳しさだ。 低コストロボットを開発するフューチャアグリ(大阪府熊取町)の蒲谷直樹社長は「農業を始めるとき頭をよぎったのはしんどいこと。それならロボットをつくろうと13年に設立した」と起業のいきさつを話す。 ロボット開発に当たり熟練農家の勘と経験をデータで把握することから着手。それにより無駄な作業を知り、低コストながら必要十分な機能を持つ自律移動台車ロボットを製品化。労働生産性を3倍引き上げることも可能という。「収量も品質も違ってくる。楽をしたいならロボット」と強調する。 電動一輪車で重労働の軽減に挑むのがホープフィールド(東京都墨田区)。収穫物や肥料などを運ぶときに農家が一般的に使う一輪車に簡単に取り付けられるモーター内蔵のホイールとバッテリーをセットにした「E-cat kit」を開発。山間部の傾斜地や狭いところでも気軽に使えるという。 嘉数正人取締役最高執行責任者(COO)は「人力を電動化することで作業を楽にしたかった。『いつでも気軽にどこにでも』をコンセプトに開発した。タイヤに負担がかかる未舗装道路も簡単に運べる」と訴える。現在はテスト販売中で、農家の声を聞きながら改良していく。 ◆鮮度長持ち貨物輸送
ジェイアール貨物・南関東ロジスティクスなどが開発した「氷感SO庫」を搭載した貨物列車
  アグリテックは生産現場だけでなく輸送でも活躍する。

JR貨物の100%子会社ジェイアール貨物・南関東ロジスティクスなどは、野菜や魚など生鮮品を凍らさずに、長期にわたり鮮度を維持できるコンテナ「氷感SO庫」を開発した。

貨物コンテナに冷却システムと氷感システムを追加、保管時は外部電源、輸送時は蓄電池を使って定温管理を可能にした。トランスポートメディア事業部の徳重政直部長は「長時間鮮度を維持できるので航空便で急いで運ぶ必要がない。食品ロスも削減できる。蓄電池で移動できるので輸送トラブルがあっても鮮度を保てる」と説明する。 イチゴは10~20日、リンゴは12カ月保存できるという。米や肉を熟成させる効果もあり、出荷された生産物をおいしい状態で届けることもできる。 農林水産省がまとめた16年の農業構造動態調査によると、日本の農業人口は前年比8.3%減の192万人と200万人を割り込み、減少傾向に歯止めがかからない。後継者難が続き高齢化が進む。一方で耕作放棄地は増加し、農業の持続性確保が懸念されている。 こうした課題を解決するのがアグリテックだ。熟練農家の知恵をデータ化すれば作業の効率化による生産性向上のほか、栽培管理の精緻化による品質の向上、自動化による省力化などが期待でき、収益の改善につながるからだ。 フューチャアグリの蒲谷氏は「耕作していない農地を使ってくれといわれる。安く借りて耕作面積を拡大できる。チャンスが多い時代。アグリテックでチャンスをゲットする」と笑う。アグリテックによる農業の未来は明るい。(松岡健夫)

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