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send 「創業者精神」に回帰、高みへ新体制「ソニーグループ」あす発足

2021年3月31日 水曜日

創業者の価値観を取り入れ、経営改革を進める吉田憲一郎社長兼最高経営責任者

ソニーは4月1日付で社名を「ソニーグループ」に変更しグループ本社機能に特化した会社となり、その傘下に「ソニー」の商号を継承する祖業のエレクトロニクス部門など主要事業会社をぶら下げる新体制を発足させる。好調なゲーム事業などが牽引(けんいん)し、2021年3月期の連結最終利益で初の1兆円超えを見込む中、組織再編でさらなる成長軌道の絵を描けるのか、市場は注目している。

  群抜く時価総額

「時価総額、収益性は同業で群を抜いており、今後は国内トップのトヨタ自動車を目指してもらいたい」。みずほ証券の中根康夫シニアアナリストはソニーの現状をこう評価する。

ソニーの21年3月期の最終利益は家庭用ゲーム機「プレイステーション5」や「鬼滅の刃」の大ヒットもあり、前期比86%増の1兆850億円を見込む。コロナ禍の厳しい環境だが、ゲームや映画、音楽、半導体、金融、エレクトロニクスなど多様な事業ポートフォリオ(構成)が業績を支える。

2000年代前半のITバブル崩壊やデジタル対応の遅れで業績が悪化し、09年度から14年度までの6年間で5度も最終赤字を計上した長期低迷は完全に脱した。

15年3月末に約3兆7000億円(東京証券取引所1部27位)に低迷していた株式時価総額も業績改善とともに回復。27兆円を超えるトップのトヨタとの差はまだ大きいが、3月30日時点で約14兆円(同3位)にまで上昇している。

その背景には18年4月にトップに就任した吉田憲一郎社長兼最高経営責任者(CEO)が進めてきた構造改革がある。

平井一夫前CEO時代から、十時裕樹副社長兼CFO(最高財務責任者)とともに事業モデルの転換を加速。製品販売後も収益を得られるサービスを提供するリカーリング(継続課金)モデルの拡大で経営基盤を強化した。

一方で、創業者の盛田昭夫氏や井深大氏の価値観を取り入れ、「クリエイティビティーとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす Purpose(存在意義)&Values(価値観)」という企業理念を19年1月に掲げ、イノベーションを起こしてきた「ソニー・スピリット」の再構築も目指した。長期低迷の一因には、創業者世代の空気を払拭して新たな経営スタイルを目指した出井伸之元CEOの下で、「ソニー・スピリット」が失われていき、グループの方向性が見えなくなったとの指摘もあったからだ。

  多様な構成奏功

吉田氏は昨年の経営説明会で、今回の新体制について「各事業の進化を促進し、ポートフォリオの多様性を強みにするためのグループ経営施策」とし、「長期的な視点に立ってグループの価値を向上させる」と狙いを語った。「多様なポートフォリオ」と「長期的な視点」はともに盛田氏が唱えていた経営理念で、新たな「ソニーグループ」の発足は創業者精神への原点回帰ともいえるわけだ。

先行き楽観できず

コロナ禍の中でも大幅な増益を見込むなど、ソニーの業績は好調だ。だが、1994年発売の家庭用ゲーム機「プレイステーション」以降、会社の柱となる革新的な事業を生み出せておらず、稼ぎ頭の半導体やゲーム事業の先行きも楽観はできない。

カメラ画像処理用半導体「CMOSイメージセンサー」では、競合の韓国サムスン電子が中国のスマートフォンメーカーへの供給拡大などで攻勢に出ている。専用機がなくてもインターネットで楽しめる「クラウドゲーム」事業の拡大を目指す米巨大ITのグーグルやアマゾンも新たな脅威だ。

電気自動車(EV)の試作車「VISION(ビジョン)-S」を開発するなど、足元では新たな成長の芽を育てる「ソニー・スピリット」もうかがえるが、戦略投資の判断など司令塔機能に特化する新たなグループ本社には、サムスンや米巨大ITをも跳ねのける“強いソニー”復活の市場の期待に応える成果が求められる。

ソニー出身の早稲田大学大学院の長内厚教授は「これまでは不確定要素の高いビジネスができなかった。業績が安定し、投資できるチャンスがめぐってきた。長期的な視点で世界が驚くような商品を生み出し、エレクトロニクスを立て直してほしい」と期待する。(黄金崎元)

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