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send 「下水道」から大地の恵み 国交省 汚泥を肥料化、農産物ブランドに本腰

2017年6月26日 月曜日

真っ赤に色づいたトマト。下水道由来の肥料により収量と食味がともに期待できる=長崎市(国土交通省提供)

国土交通省が今年度、農産物のブランド化に本腰を入れている。「国交省が農産物?」と首をひねりたくなるが、実は所管する下水道から生み出された肥料で野菜などを育てているのだ。とかく不衛生なイメージもつきまとう下水道に親しみを持ってもらうことで新たなビジネスとして普及させるほか、ひいては日本の食糧安全保障にも寄与する可能性があると期待されているという。

16道府県で栽培 「私の評価では、これしかないと思いました」。3月下旬、新たな農産物のブランド名を決定する審査会で、委員長を務めた料理評論家の服部幸應氏(71)は、833点の一般応募作品から選ばれた「じゅんかん育ち」を激賞。「新たなPR戦略を進めてほしい」と国交省に注文をつけた。 国交省が普及を目指すのは、下水処理の過程で採取される汚泥を発酵させるなどして作られた肥料や、処理水などを使って育てられた農産物で、「じゅんかん育ち」は同農産物の統一ブランドだ。国交省が把握するところでは、現在は16道府県などでダイコンやトマト、イチゴなどが栽培されており、レストランでも採用されつつある。 じゅんかん育ちに使用されるという下水道由来の肥料の特徴は、含有される自然由来のリンや窒素が生み出す栄養価の高さと、手頃な価格にある。

国交省と日本土壌協会が実験したところ、下水道由来の肥料で栽培されたイチゴは、一般の化学肥料を使って栽培されたイチゴよりも収穫量が大幅に増え、糖度も高いという結果が得られた。以前は廃棄されていた汚泥の再利用で価格も抑えられ、九州地域のアスパラガス農家は、肥料代が2013年度からの2年で約3割削減された。この“実力”が評判を呼んでか、北海道岩見沢市では肥料を利用する農家が14年までの2年間で1.5倍に増え、今では利用希望者が予約待ちの状況という。

一方、国交省が普及に向けた不安要素として挙げるのは、一般家庭のトイレなどとつながっている下水道に対し、不衛生なイメージがつきやすい点だ。人体などから排出されたリンや窒素を含む肥料は、有機物の比率が高いほか、肥料取締法に基づく商品規格も満たしているのだが、農産物は消費者の口に入るだけに、マイナスイメージが広がれば生産にダメージとなりかねない。 イメージ戦略強化 そこで国交省が力を入れるのはイメージ戦略の強化だ。13年度から国や自治体、下水道関連企業と連携して、一連の取り組みを「BISTRO(ビストロ)下水道」と銘打ち、下水道由来の肥料を使った農産物の食味の高さなどをアピールしている。

広報活動だけでなく、地方などのグルメイベントに収穫した農産物を出すほか、イタリアで開催されたミラノ万博にもブースを出展。一部の現代用語辞典は「ビストロ下水道」が掲載されるようになった。今回のじゅんかん育ちのブランド化もこうしたイメージ戦略の一環という。

じゅんかん育ちの定着で下水道由来の肥料が浸透すれば、日本の食糧安全保障におけるプラス効果も期待できる。化学肥料の原料に使われるリン鉱石は現在、ほぼ全量を輸入に頼っているが、世界的な食料需要の増加やリン産出国の輸出制限などで価格は乱高下している。一方で、下水道には輸入量の約1割にあたるリンが流入しているといわれており、国際情勢の不安定化が進む中、希少な資源となる可能性を秘めている。 政府は15年に下水道法を一部改正し、肥料の原料となる汚泥の再利用促進を明記。今後も普及を加速させる方針だ。 国交省水管理・国土保全局の担当者は「ただ安全というだけでなく、自然の恵みがめぐりめぐって命を育むイメージが伝われば、消費者にとって買いたくなる食材になるのでは。そうなれば日本が新たな資源を手にすることと同じになる」と期待する。(佐久間修志)

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