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send 「キムリア」保険適用、医療費の膨張懸念 超高額薬の「波」、揺れる財政

2019年5月17日 金曜日

厳重な管理下で「キムリア」を製造する米ニュージャージー州の専門施設(ノバルティスファーマ提供)

1剤3349万円。血液のがんに著しい治療効果をもたらすが、超高額の新薬「キムリア」の保険適用が決まった。患者から採取した免疫細胞の遺伝子を改変してがんへの攻撃力を高める「CAR-T細胞療法」と呼ばれる国内初の治療法。既存の治療で回復が見込めなかった患者にとっては間違いなく光明だが、がん治療薬「オプジーボ」の高価格が批判されたのは、つい3年前。今後も超高額薬は次々登場すると予想され、公的医療保険の財政を揺るがす「第2の波」に、薬価をめぐる議論が再燃しそうだ。   再発から職場復帰 「この薬がなければきっと死んでいたと思う。まさか、こうして働き続けられるとは」 札幌市の会社員、中畠由美子さん(49)は、2013年に血液のがんである悪性リンパ腫と判明。抗がん剤治療や、血液をつくり出す幹細胞を自身から採取して再び戻す「自家移植」を試みたが、15年秋に2度目の再発が分かり、「もう私は死ぬんだ」と覚悟した。 その後、主治医から「CAR-T細胞療法の治験が北海道大病院で始まる」と知らされ、参加を決意。治験なので薬剤費の自己負担はない。16年5月、自身の細胞からつくったわずかな量の治験薬を点滴投与。30分足らず、1回だけで済んだ。 3日後から副作用の高熱が続き血圧も低下。血小板や血球がなかなか増えなかったが画像検査で腫瘍は見えなくなり、8月下旬に職場復帰できた。3年近く過ぎた今も再発はなく、状態が安定した「寛解」が続く。 キムリアは高価格が注目されるが、中畠さんは「必要な命ですか」と問われている気がしてしまう。「保険適用によって、お金持ちに限らず必要な人が使えるようになるのは良いことだと思う」   ブラックボックス キムリアの保険適用を了承した15日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)では、価格の決め方に異論が相次いだ。 「まるでブラックボックスだ。製造原価の情報が開示されていない」 健康保険組合連合会の幸野庄司委員は、メーカー側の姿勢を強く批判。サリドマイド薬害被害者の間宮清委員も「患者の立場でも、なぜこんなにお金がかかるのかと思う」と疑問を呈した。 中医協の委員が厳しい見方を示すのは、オプジーボなど超高額薬に対する厚労省の対応が後手に回りがちで、医療費の膨張が懸念されるからだ。 超高額薬の予備軍はキムリア以後も控える。CAR-T細胞療法で悪性リンパ腫治療に使う「イエスカルタ」は、米国や欧州で製造販売の承認済み。米国価格は約37万ドル(約4200万円)だ。米欧で承認された遺伝性網膜疾患の治療薬「ラクスターナ」は、両目に使用すれば約85万ドル(約9500万円)になる。 さらに巨額になりそうなのは、難病の脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」だ。早ければ年内にも日米で承認される見込みで、海外メディアの観測では価格は4億円以上になるという。 超高額薬に共通するのは、免疫機能の活用や遺伝子操作を伴い、製造に手間とコストがかかる点だ。対象は希少疾患のケースが多く、患者一人一人に対応した「注文製造」の形で供給される。 「低分子化合物を加工する旧来型の薬であれば、価格を抑えても量産することで元が取れるが、バイオ製剤は量産が難しい」と厚労省幹部。iPS細胞を利用した再生医療など先進的な分野で実用化が進めば、超高額薬をめぐる第2、第3の波は避けられそうにない。

フジサンケイビジネスアイ

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