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就活支援ジャーナル

高いFCV、水素社会に黄信号 インフラ整備進まず 海外のEV急シフトも逆風

2018年6月4日 月曜日


川崎市にある水素ステーション=3月(ブルームバーグ)

石油の代替エネルギーとして研究されてきた水素。空気中の酸素と化学反応させて発電する燃料電池は、車や家庭用エネファームの用途で普及が期待されてきた。発電時に水しか出ず、クリーンとされる。燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないため水素自体を燃焼させる水素発電の構想もある。だが、燃料電池車(FCV)の普及の大幅な遅れもあり、水素社会計画は難航している。

 

環境規制を厳格化

「もっと安くしないとFCVは永遠に普及しない。2025年に車両価格をハイブリッド車(HV)並みにしてください」。水素議連は自動車メーカーやエネルギー会社との会合で繰り返し訴えた。東日本大震災後初のエネルギー基本計画の改定を翌年に控えた2013年、自民党の衆院議員だった福田峰之氏の「水素活用の議員連盟をつくりたい」との呼び掛けを契機に、経済再生担当相だった甘利明氏や河野太郎氏ら有力議員が加わり発足した水素議連。福田氏らは経済産業省に働き掛ける一方、自動車やプラントメーカー、ガス会社などを巻き込んで水素社会の青写真を描いた。

かつて1台数億円したFCVは700万円台まで下がり、補助金を利用すれば500万円台で購入可能になった。とはいえ補助金込みで約300万円の電気自動車(EV)や200万円台のHVと比べると開きは大きい。企業からは議連の号令に悲鳴が上がった。

議連の提言を受け、政府は「水素・燃料電池戦略ロードマップ」で水素の本格活用を段階的に進める目標を掲げた。これに共鳴し先陣を切ったのがトヨタ自動車とホンダだ。トヨタは14年に「MIRAI(ミライ)」を発売。世界初の一般向けFCVと話題になった。16年にはホンダが「クラリティ フューエルセル」で追随した。

だが他社は続かなかった。日産自動車はドイツのダイムラーや米フォード・モーターと協力し17年に製品を市場投入する計画だったが途中からEVに集中。「現時点で具体的な市販計画はない」(関係者)という。

FCVや、水素を燃焼させる「水素ロータリーエンジン」を開発していたマツダも、現在はガソリンやディーゼルエンジンの性能向上に注力する。FCVの販売実績は今年3月末で約2500台にとどまり、20年までに約4万台という政府目標は事実上破綻した。

FCVを追い詰めたのは海外の環境規制だ。18年以降、米カリフォルニア州や中国がガソリン車やディーゼル車に対する規制を厳格化する。時間が切られ、現実的な選択肢として一気にEVシフトが進んだ。ホンダ幹部は「ここまで展開が早いとは」と漏らす。

 

政府は旗下ろさず

ドイツのフォルクスワーゲン幹部は「FCVは面白いが課題がある。多くの車を短期的に出すことはない」と冷ややかだ。

FCVが売れないのは高い車両価格に加え、燃料インフラの整備が進んでいないためだ。もっとも、政府は水素社会の実現に向けた旗は下ろさない。経済産業省は次期エネルギー基本計画で水素の記述を増やし、一層の推進を打ち出す方針。停滞突破へ自動車やエネルギー大手も合同で水素ステーションの建設に乗り出した。

3月、東京都内で開かれた「日本水素ステーションネットワーク」の設立発表会。立ち上げに参加したトヨタやJXTGエネルギーなど11社の幹部が顔をそろえ、会場は熱気に包まれた。世耕弘成経産相は「日本を代表する企業が結集した。水素社会の実現を全力で推進する」とビデオメッセージを寄せた。

水素ステーションの黒字化には、周囲に900台のFCVが必要とされる。しかし現状は平均20~30台。国内の水素ステーションはまだ約100カ所しかない。新会社は短期的な赤字は辛抱し、長期戦の構えだ。政府は30年に900カ所の目標を掲げる。

                   ◇

■追う中国 日本、先行利得生かせるか

燃料電池車(FCV)巻き返しの可能性はあるのか。

専門家によって見方は分かれるが、デロイトトーマツコンサルティングは2050年の世界新車販売台数として、電気自動車(EV)が60.1%、FCVはそれに次ぐ2位で25.8%までシェアを伸ばし、プラグインハイブリッド車(PHV)の14.1%を上回ると予想する。

FCVは、水素の安全な貯蔵などに高度な技術が必要となる。日本勢としては部品を含め、先行して取り組んできた蓄積の強みを生かし、海外勢との競争で優位に立ちたいところだ。

だが楽観はできない。中国は30年にFCV100万台を目指すと表明。EV産業を育てつつFCVでも覇権を狙う野心的な戦略だ。

日本の政府関係者は「このままだとFCVでも中国に負ける」と危機感を隠さない。日本の成否は先行利得を生かし、世界の市場形成を主導できるかにかかっている。

 

 

 


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